18. 残酷な話だな

俺らを乗せた馬車が凄い速さで進んでいく途中


「何があったのですか?」

とアドニアスが聞いてくる。

「…王都が何者かに攻撃されているかもしれない」

「…それはどこからの情報ですか?」

「知り合いだ。かなり情報を持っていたから嘘はないと思う」

「じゃあ、話してください。私が嘘か判断してあげます」

とアドニアスが言うので、カルエラから聞いた情報を話す。


「…1人で王都ですか…」

「信じられるか?」

「無理」

まぁ、そうだよな。

「…でも、確かめる価値はあります。さっきの揺れの原因が1人の人間が起こしたことだとすれば、王都は壊れていてもおかしくない。ただ建物や城が壊れているならまだ良い方だと思った方が良いです」

「悪い方だと?」

とアドニアスに聞くと


「王族や貴族、国民、とにかく人が大量に殺されることです」


「その中でも貴族と国民が殺されるのはまだ良い方です。王族が全員殺された場合、リーマルドは終わりです。1人でも生き残っていれば、エレーデを中心として国としてリーマルドを続ける事は出来ますが…」

「誰かが王をやればいいんじゃないか?」

…まぁ、そう簡単な話では無いけど一応聞いてみる。

「…駄目なのは分かっていますよね?王族は王になるための勉強を行っていて、それが外に漏れることはありません。なにせ王みずから王子や王女に教えるのですから。使用人や大臣ですらどういう教育を行っているのか分かりません。つまり…」

「王族が全員死んだ時点でリーマルドという国は動かせなくなるということだろ?」

「はい。他の国の王から助けを請う事は出来ますが、それはもう他の国の下につくことになります」

助けを貰わずに国を動かすということも出来るが、その場合どれだけの国民が賛成するのかは分からない。むしろ何をやるのか分からないやつのところに行くよりは、ちゃんとした他の国に行くだろう。こういうことが起きないように、国を失わないように王族は守らなければならないのだ。


「…俺の勘だが、王都はすべて壊されていると思って良いだろう。後は王族が逃げている事に賭けるしかない」

なんとなくそう思っているというのもあるが、さっきの揺れ方から王都が無事なはずはないと思っているからだ。

「…そうですね」

アドニアスも半分ぐらいはそう思っているみたいだ。…と

「うぉ!」

御者ぎょしゃが何かに驚いたような声を出した。


「なんだ?」

窓から顔を出し、外を見ると


ドドドドド


と言う音を出し走っているスランがいて、その上にはリナさんと見知らぬ白い獣がいた。


「スラン!」

と俺が外に向かって言うと

「ゴトさん。そこですか!」

とリナさんが言う。その言葉に気づいたのかスランは馬車に寄り、馬車と一緒に走り始めた。

「リナさん。なんでここに…」

「大きな音が聞こえたからです。それで何があったか知りたくて…」

多分スランが言った言葉を言っているんだろう

「じゃあ、このまま行こう。俺たちもそこに向かっているから。御者さん!お願いします!」

「分かった!」

と言い、御者はそのまま馬を走らせた。


====


そのままのいつもよりも早い速さで馬を走らせたおかげで、早く王都の近くまで来ることが出来た。


そして遠くから見ても、分かった。…いや、見えているはずのものがから分かってしまった。


「おいおいおい…嘘だろ…」

と思わず御者が言葉をこぼす。

「…あなたの勘は当たりましたね」

「…そうだな。王族は生きてるか?あれ」

アドニアスの言葉に俺はそう返した。


王都の壁は上半分が無くなり、あれだけ大きく、外から見えていた王城は無かった。

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