17. 戻れ!

ガラガラ


「…ん?」

と馬車が走っている音で目が覚める。

「…起きましたか?」

「今どこ?」

「もうすぐに着きます」

「そうか…」

…は?

「…なんで?」

とアドニアスに聞くと


「そんなもの、祭りに行くからに決まっているだろう!」


と野太い声が聞こえてきた。

慌てて体を起こし、座り直すと


「久しぶりだな、ゴトよ」


目の前にアドニアスの父、アバラン・ブラウがいた。

「なんで親がいるんだよ」

「それはアドニアスから「少しは王都の外に出てはどう?」と言われたからだ。後は君がいるからだ」

とアバランさんが言う。

「なんで?」


「娘が気に入っているからだ。またお前のことをよく見なければと思ったんだ」

まぁ、いいか。

「ところでアドニアス、フルーたちは?」

確かフルーは部屋で待っているはずだ。ファウシーはスラルランドにいるだろう。

「フルーさんもファウシーさんもスラルランド家の馬車に乗ってエレーデに行くって言っていました」

…たぶんファウシーがフルーを連れていったんだろう。


コンコン

と荷台が叩かれた。

「アバラン様、もうすぐエレーデです。使の馬車はすでに着いています」

「うん?奥様と使用人?」

アバランさんだけじゃないのか?

「俺だけで、この馬車だけでエレーデに向かっていると思っていたのか?」

「まぁ、普通はそう思いますよ」

「ははは!そうだろうな。だが、休みも良いと思ってな…」


「嫁、使用人を含めてブラウ家のほとんど全員連れてきた。もちろん行きたくないというやつは自由にさせた。今、屋敷には誰もいないだろう」

「はぁ?じゃあ、かねとかは…」

まさかとは思うが…

「もちろん、いるものはすべて持って来た。荷物の馬車はこの馬車の隣で走っておる」

とアバランさんが言い終わった同じくして、窓から外を見た。


ガラガラガラ


この馬車の隣には数台の馬車が走っていた。

「まじか…宿は…」

「まぁ、宿に関してはないこともあるだろう。だから大工も連れて来た」

解決する方法が力技すぎるだろ。

「後、スラルランド家は全員で来るらしいな。そこで話し合うとするか。これからのことを」

「…今初めて聞いたんだけど…」

と俺が呟くと

「どうやらファウシーさんが連れてきたみたいですよ」

とアドニアスが言う。



『そのことはちゃんと考えてあるから、一緒にいけるから!』



お前も力技かよ!


====


「でだ。娘とお前のことだが…」

なんかあったっけ?

「俺はお前たちが夫婦になることには反対せん」

「いや、それはアドニアスが勝手に言っていることで…」

と俺が言うと


バン!

アバランさんは手を膝に音が鳴る程の勢いで打ち付け、頭を下げた。

「アドニアスを受け入れてくれる相手はもう出来ないだろう。たぶん、これからアドニアスは1人で生きていくことになる」

「…」

「1度婚約候補から外した身ではあるが、今のお前をよく見て判断したい。だからその時は…」


「どうか、娘をよろしく頼む」


「…その時はですよ」

「嫌と言わなければいい。ゴトという候補がいるだけでも助かる」

とアバランさんが言った時


ボン!

と馬車が揺れた。

「!?止まれ!」

と言う御者ぎょしゃの声と共に馬車が止まった。

「何があった!」

とアバランさんが声を荒げるが…

「それが…分かりません!」

「何?」

「急に大地が揺れて…」

と言う外の声が聞こえくるとアバランさんはすぐに外に出る。

俺もほとんど同じくして窓の外を見るが、特にいつもと変わった様子はない。


ある言葉を思い出した。

『オスクリタは


すかさず俺は外に出てアバランさんのところに行く。

「アバランさん!」

「なんだ?」

「1つ馬車を借りてもいいですか?」

「…何かあるんだな。良いぞ。今まで乗っていた馬車を使うがいい。御者はいるか?」

「はい」

「そのまま連れてけ」

と許しをもらったので馬車に戻り…


「すみません。王都に戻ってください。アバランさんから許しはもらっています」

「聞いていたよ。今すぐにでも行けるよ」

と言われたので馬車に再び乗る。


「…私も行きます」

馬車の中に戻ると武器を用意したアドニアスが座っていた。

「いいのか?」

「何かあるんですよね。ならあなたを信じて着いていくまでです」

……まぁ、いいか。

「じゃあ、よろしくな」


俺らを乗せた馬車はすさまじい速さで王都に戻ることになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る