16. すべて終わったら、また会おう
「何かを好きになるのも、何かを嫌いになるのも…これに限った話では無いが、大体なんとなくで動いているだろう?もちろん訳がある人もいるだろう。でも絶対に訳がいるっていうことはない」
「例えば…私が君の家のメイドとして来たのも私がなんとなく選んだだけだ。貴族の家ならどこでもよかったからね。そして君を襲ったのもなんとなくだ。君が襲い返したものなんとなくだろう?」
「まぁ、そうだな」
「それと同じだよ。オスクリタには壊したいということしかない。人がどうであろうと、国がどうであろうと関係ない。壊したいと思ったときに目の前にあったものを壊す。ただそれだけだよ」
カルエラは話が終わったのか、近くにあった水を飲む。
「オスクリタについてはこのぐらいだ。君には倒してもらいたいんだが…」
「いや、無理だろ」
相手は壊すことしか考えていない筋肉の塊だろう?俺、剣はほとんど使えんよ?魔法だって学園で学ぶことぐらいしか出来ないぞ?
「…君は私に抗ったじゃないか。普通はあのままやられるものだ」
「偶然だろ」
「その偶然を味方につける事が出来るのが君だ」
「そうか?」
「戦いではどれだけ力があるか、どれだけ戦い慣れているかで勝つか負けるかが大体決まる。…だが、偶然は一瞬で勝ちを負けに、負けを勝ちにひっくり返すだろう。例えば……騎士同士の戦いなら、偶然硬い小石を踏む、偶然目が
「…」
「どれだけ優れていようと、どれだけ強かろうといつもと違うことが突然起こったら勝てない。だが、その偶然を味方につける君ならよっぽどのことが無い限り負けは無い」
「君ならオスクリタを倒せる。だから君に頼んでいるんだ」
と言い終わるとカルエラは動き始め、荷物をまとめていた。
「…私はこの森を離れる。君が倒し終わったらまた会おうか」
「え?」
カルエラの中では俺がオスクリタを倒す事になっているらしい。
「ちょっと待て、俺がやらないとは思わないのか?」
「オスクリタはもう近くにいる。君がやらなければリーマルドは消える。…私とて死にたくないのでね、ここを離れるんだ」
と言って軽く荷物をまとめると外に繋がる扉に手をかける。
「…そうだな。気分を変えるために…少し名前も変えようか」
とカルエラは言って荷物を置き、俺の近くまで寄ってきた。
「…カルエラ・ランド」
「君の家の名前の半分を借りるよ。やがて君を受け入れられるように」
と言うと、荷物を再び持ち扉から出て行った。
「好き勝手言いやがって」
やばいな、カルエラは。なんであんなに俺を信頼しているんだ?俺に襲われて気でも狂ったか?
と思っていると
チリチリ パチパチ
と音が聞こえてきたと思うと、部屋の中が熱くなってきた。
「…!?あいつ!まじか!」
家を燃やすならそう言えよ!
急いでカルエラのいた家を出て、家が燃え尽きるのを待ち、やることが終わった俺はそのままの足で王都まで帰ることになった。
====
レンス村を出るのが遅くなったせいで王都に着いたのが朝になってしまった。
「…遅かったですね」
と王都の門の近くでアドニアスが立っていた。
「なんでそこにいるんだ?」
「何って、あなたを待っていたんですよ。フルーのところに行ったら「出かけたっきり帰ってこない」って言われたから…」
「…そうか」
…眠い…
とよく見るとアドニアスいる場所から少し離れた場所に見慣れた、アドニアスがいつも乗っている馬車があるのが見えた。
「馬車に乗せていってくれないか?」
と言い、馬車の方に歩き、勝手に馬車の扉に手をかけた。
「はい?」
とアドニアスが言うが、すぐに
「…しょうが無いですね。送っていってあげますから寝ていてください」
と言われたので馬車の硬い椅子の上に寝転び、目を閉じた。
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