15. 悪魔の正体

今、俺はある村にいる。夜だがな。


「兄ちゃん、いいのか?」

とおっさんが門で話しかけてきた。

「何がだ?」


「いや、その森にはがいるって噂だぜ?」

「大丈夫だ」

たぶん大丈夫だろ。

「それに用があるんだ。いかなきゃいけない用事が」

「そうか。俺はめたぞ。死んでも知らないからな」

と言っておっさんは自分の家に戻っていった。


レンス村の近くの森に入る。

夜だからかとても暗く、音は葉っぱが鳴らす音、虫が鳴らす音しか聞こえてこない。


正直…

「どっちに進めばいいんだ?」

火属性魔法を使い辺りを明るく照らすが、どこに行けばいいのか分からない。

ただ…


「なんとなくこっちだろ」

今まで通り勘で、道がない草が生い茂っているところを進んでいくと


「あれだろ」


木で出来た家が見えた。所々から光が漏れていることから中にいるだろう。


====


家に近づき、扉を叩く。…が


シーン


「…返事がないな」

仕方ないので扉を開ける。鍵がかかっていなかったのか、扉はすんなり開く。


ギギギィィ

部屋に区切りはなく、扉から家の中の全体が見えた。もちろん


すやすや

気持ちよさそうに毛布にくるまり、寝ているこの家のあるじである女も。



寝ている女に近づき

「おい」

と言ってみると

「う、うん?」

と女の目が開き、その目が俺の方を見た。


「…誰かと思ったら君か。まぁ、君以外に寝ている私に近づける者はいないがね」


====


「襲いに来たのかね?私はいつでも良いが…」

と毛布の上に座り、服を少し正して俺に向き合いながら彼女は言う。

「そんなことしに来たわけじゃねぇ。依頼だよ、依頼」

「依頼…あぁ、自分から来たのか?」


「違う。受付からどうしたら良いか相談されたんだよ。どうしたらよいか…な」

自分が目的の依頼の相談なんて初めてだったよ。


「なるほど、受付と知り合いだったのか。それは幸運だった……いや、そうなることが運命だったのかな?」

「?」

「まぁ、いい。君が気になるのは、私が君を探していた訳だろう?」

そうだな。


「君に伝えたいことがあってね。…近頃この辺りが大変になるだろう」


「それはお前がやるからか?

と怪しむように、少し強く言ってみると

「…そんなに怒らないでくれ、あの時から人を滅ぼそうとしているの軍とは関わりが無いことは知っているだろう?」

カルエラは2本角の魔族、翼と尾を持つ夢魔の1種だ。


「じゃあ、誰が?」

「人だよ。ただ国をも滅ぼすことの出来る暴れん坊だけどね」


====


「魔族は関係ないのか?」

まずは情報だ。

「関係ない。薬や魔法で強化した人という訳ではない。むしろ殺して欲しいと思っている魔族も多いようだ」

「ならお前らで殺しておけよ。わざわざ俺に頼む訳はあるのか?」



「は?お前ら、よく人のこと馬鹿にするくせに人に負けるのかよ」

「確かに…魔族の脳には知能は入っているのかね」

「お前が言うのかよ」


「…まぁ、冗談は置いておいて。…人を馬鹿にするしか能が無い魔族とて力は本物だ。全力をかけ、仲間の死を恐れなければ人の国など滅ぼせる」

「へぇ」

まだ大分だいぶ馬鹿にしているな…。

「…どうでもよさそうだね」

だってそうだろう?

「俺が知りたいのは勝った方だからな。負けた方の話なんてどうでもいいだろ」

「…確かにそうだね。なら話そう」


「名前はオスクリタと言うらしい。背から黒い翼を生やし、暗黒の腕ですべてをなぎ倒す。最後には空から闇を落とし、国を押しつぶす」

なかなかにやばそうなやつだな。

「戦う訳は分かっているのか?」

訳さえ分かれば止められるかも知れない。


「さぁ?」

「さぁ?って…」

「だってそうだろう?」


「生き物が動くのに訳はいるのか?」

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