13. 祭りを先に楽しむか後に楽しむか

朝早くから起きて着替えていると


ガチャ!

「おはよ~ぉ」

とジュビナが扉から入ってきた。


「おぉ~流石に早いねぇ。眠れなかった?」

と聞いてくる。

「…知っているだろ?俺が早起きなの」

世話をしていたんだから知っているはずだ。

「そぉだねぇ~」

と言いながらジュビナは俺に近づいてくる。…と


「強くなっているみたいだね」

と耳元でいつもの緩い声では無い、しっかりとした声でジュビナは言った。

「俺はそこまで強く無いぞ」

弱いとは言わないがな。

「そう?私は強いかどうかは見ただけで分かるんだけどなぁ?」

それは嘘だろ。強いかどうか見ただけでは分からないだろ。



「それに私は強いが好きだから。強い君が」

と耳元で言うとジュビナは俺から離れていった。



「そういえばこれからどうするのぉ?」

といつも通りの緩い声でジュビナは聞いてくる。

「ここの祭りは何をやっているんだ?」

と聞くと

「いろんなことかなぁ~」

「いろんなこと?」

「踊りを踊ったり、音を奏でたり。普段外で出来ないことをやったりするんだよ」

後お店とかも出るよ、とジュビナは付け加えた。そんなものか。


「でも、貴族とかも来るから良い物にはなってるよ。王都からのだからね。エレーデは」

「…祭りをやるかねは貴族から出てんだろ?当然じゃないか?」

「まぁ、そうだね。お金もらったんじゃぁ…ちゃんとやらないといけないからねぇ」


「今日見る物はあるか?」

と聞いてみると

「う~ん、どぉだったけなぁ。私、見ないから覚えてないんだよなぁ」

「はぁ?」


====


「なるほど。ただ、元々王都に帰る途中で、寝るために寄っただけですので…このまま王都に帰るのがいいのではないのですか?」

と起きていたアドニアスが話に入ってきて、そう言った。


「そうだな。ただちょうど祭りをやっているエレーデに来たんだから…なぁ?」

「まぁ、少しだけなら祭りに加わるのも良いのではないですか?ジュビナさん、祭りは今日だけですか?」

とアドニアスがジュビナに聞く。

「いや?しばらくはやるよぉ」

「…なら、祭りを楽しみたいのであれば、1度帰ってからでも遅くはないはずです」


「この女の子「アドニアス・ブラウです」…アドニアスちゃんまたここに帰ってくるつもりなのかなぁ?」

「…はい。出来ればゴトと一緒にここに帰ってくるつもりです」

「なら……はい」

とジュビナはアドニアスに何かを渡した。


「ここの部屋の鍵、渡しておくから好きに使って~」

と言って部屋を出て行った。…と思ったら

「あ、祭りは終わりに近づけば近づく程、豪華になっていくから、後から来るのはいいと思うよぉ」

とジュビナは扉を少し開けて顔を出し、そう言って再び扉を閉めた。


「じゃあ、そうするか」

「いいのですか?」

「なにが?」

なんかあったか?


「もう一度来ることです。祭りを楽しんでから帰れば、もう一度帰ってくることも無いですから…楽でしょう?」

「そりゃあ、そっちの方が楽だな。でもジュビナが言っていた通り、祭りは豪華な方が良いだろ」


====


ジュビナとの話が終わった後、予定が決まったのでまだ寝ていたフルーをアドニアスが、ファウシーを俺が叩き起こしに行くことになった。


「なるほど!」

「まぁ、お前は来れるか分からないけどな」

「なんで!」

「簡単な書き置きだけで何も言わずに出てきたからな。次屋敷から出れるかは分からんだろ?」

「ぐっ!」

とファウシーは苦い顔をした。…と思ったらすぐに何か思いついた顔になって

「ちょっと外出てくる!兄様!先に馬車で待ってて!」

と言って俺がまだいるのにもかかわらず、簡単に、素早く着替え、すぐさま部屋から出ていった。


「馬車の場所、知ってるのか?」




そうして用意を整えた俺たちは、朝早くから馬車で王都に向かった。(ファウシーはちゃんと馬車に来た)

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