10. オブラインからエレーデへ

「で、兄様はなんでアドニアスさんを見守っていたのですか?」

あの後、湖の中にいる魚の形をした魔物、ショールを皆で狩りまくって、依頼を終わらせた。今は昼ご飯の食べに店に来ている。


「治癒魔法を受けていたときのことだよな?」

「はい!そうです!」

「あれね。命令半分、なんとなく半分かな」

あの時、父上から見張っていろと命令されていた。ただ適当で良いかなって思って雑にやっていた感じだったはず。

あとはここにいなきゃいけないと思ったからかな。


「へぇ。兄様らしいですね!」

「特に心配もしていなかったと…」

とフルーが冷ややかな目で見ながら言った。

「そりゃそうでしょ。治癒魔法を使える魔導師がいるんだから、心配はなかった。治癒するやつらのことを信じているからな」


====


「ところで、ゴトは今、私のことをどう思っていますか?」

と昼ご飯も食べ終わる頃にアドニアスが俺に聞いてきた。


「…どうって?」

「私は婚約の話がなかったことになってから初めてあなたに出会いました。一緒にいたのはまだ少しですが話していて、あなたといつまでも一緒にいたくなるような感じがしています。つまり、私たちの多くの子に見守られながら一緒に死にたいです」

どういう考えでそうなったのか分からんが…つまり…

「俺とたくさん愛し合い、子を作って、最後まで一緒にいたいってことだよな」

と俺が言うと

「そ、そんなにはっきりと言われると…恥ずかしいと言うか…その…」

と今まで淡々と俺に向けて俺への愛を話していたときとは変わって、顔を赤くして、恥ずかしそうに顔を下に向けながらそう言った。


「…かわいい。意外と貴族ってかわいい」

2回も言うなフルー


ゴホン!

「で、ゴトは私のことはどう思っていますの?」


「少なくとも嫌じゃないな。隣にいたきゃいればいい。ただ…」

「ただ?」

俺はアドニアスに顔を近づけて

「食べたいって思ったら食べちゃうかもな。お前が隣にいたらお前のこと」

と言った。


====


そうして俺らは店から出た。…アドニアスは顔を赤くしながらだけど


「…次はどこ行く?リーマルドの王都に帰るんでしょ?」

とフルーが聞いてくる。そうだな

「やることが無ければこのまま帰るでいいだろ。ファウシーも1度家に帰った方が良いだろ」

「書き置きを残してきましたよ!」

「その書き置きが不安だからな」


しばらく歩いて、復活したアドニアスがブラウ家が持つ馬車のところまで案内してくれた。

「王都に向かいなさい」

「かしこまりました」

と俺たち(スランを含めて)が乗り終わるとアドニアスは御者ぎょしゃに命令した。


「…兄様、スランのこと忘れてた…」

と落ち込みながらファウシーが俺に言う。

「まぁ、誰にも盗られていなかったし、逃げてもいなかったんだから良いんじゃない?」

スランならほったらかしにしていても大丈夫だとは思っていた。あいつ、その辺の冒険者より強いだろうし。ちなみにスランは話せることをファウシーには隠している…というか俺にはバレてしまったっていうのが正しいんだが


「本当にこのまま王都に戻ってよろしいのですか?途中寄るところがあれば寄りますけど…」

「あぁ~寄るか。というか寄らないと駄目だろ。夜になるぞ」

今は昼過ぎ、このままずっと走ったとしても王都に着くのは次の日の昼よりちょっと早いぐらいだぞ。

「…そうでした。…手頃な街で夜を明かしましょう。その予定で」

「かしこまりました。では、エレーデに向かいます」


「エレーデって?」

とフルーが聞いてきたので

「リーマルドの王都の次に大きい街だ。歴史では王都の次に出来た街とされている」

と言うと

「元々は王都が駄目になった時のための街として作られたそうですよ」

とアドニアスが情報を加えた。


「意外と兄様もアドニアスさんも物知りなんだなぁ~」

とファウシーが言うが

「いや。俺、貴族用じゃない馬車の乗り方知らなかったぞ」

「私も」

と俺とフルーが言う。

「わざわざ言うことじゃ無いですけど…」

あきれながらアドニアスは言う。

「兄様!私も兄様から教わるまで知りませんでした!」

「え!」


====


やがて夜になり

「無事エレーデに着きました」

「ご苦労です」

とアドニアスが御者に言い、降りる。続けて俺たちも降りる。と…


「賑やかな場所ですね!エレーデって!」

夜なのに街が騒がしかった。

「こんな場所なの?」

ファウシーは興奮しているが、フルーは冷静に俺に聞いてきた。


「祭りでもやっているのか?」

「そうだぁ!そこの人たち!」

と街の方から人が来た。

「旅人かぁ?」

「まぁそんなところだ。初めてきたんだ」

と俺は答える。貴族が混じっているがな。

「そうか!なら祭りを楽しんでいけ!今年は祭りが始まって200回目なんだ!」

ハハハァ!と声を上げながら男は街に戻っていった。案内はしてくれないのか…


「お祭りですか。では…」

とアドニアスが俺の腕を抱き込み

「行きましょう。そして楽しみましょう」

と言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る