9. 私の隣にいるべき人
「まぁ、いいや。…フルー、ギルドに言って魔物の種類の確認をしてきて」
「分かった」
アドニアスが付いてくるのはもういいや。なんとなくリーマルドに帰られるよりマシな気がしてきた。
「俺らは港に行ってるから」
「分かった」
とフルーがうなずくと、ギルドまで走って行った。…ギルドの場所、知ってるのかな?
「そういえばアドニアスさん!馬車での話の続きを聞きたいです!」
とファウシーが言う。続き?
「続き?」
「傷の話です!」
「あぁ~その話ですね」
とファウシーの言う話が分かると、アドニアスは歩きながら話始めた。
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「私たちが何度も会っていたことは知っているでしょう?」
「はい。遠目で見てましたから」
「その何度か会ったときの、婚約候補として会った最後のときの話です」
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(アドニアス視点)
『本日もお招きいただきありがとうございます』
私にとってゴトは、ただの数ある婚約候補の1人だった。
『では、こちらに。ゴト様がお待ちです』
いつも通り、飲み物や菓子を食べながら少し話をして帰る。他に気になっている婚約候補がいたから、尚更ゴトのことなど、どうでもよかった。
茶色の髪に見た目は少し良いぐらい。魔法が得意であることからなのか、体は細い方で男として普通の筋肉がついているぐらいだった。
だから…
『狩りに行きませんか?』
剣を学んでいる私はその腕を見せつけるためにそう言った。私の方が優れていると、諦めろと示すために。
ギャン!
順調にだった。素早く鹿の近くに移動し、剣で切り込んだ。
狼は攻撃を交わしながら傷を与えて倒した。当時の私の中では、美しい剣のさばき方ができたと思っていた。
『 』
ついて来ているゴトは何かを言っていた気がするが覚えていない。興味がなかったからだろう。…今になっては惜しいことをした…
そしてそいつは急に現れた。
キュルル!
当時の私は名前を知らなかった魔物、ディスアピアがそこにいた。
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鹿の形をしていたので、さっきまでの鹿と同じように切り込んだ。…が
ガッ!
私の剣をディスアピアは角で楽々受け止めた。
『はぁぁ!』
と何度も切りつけようとするが全て角で受け止められる。しかも角に傷を1つとして付けられず、弾き飛ばされた。
『まだ、だぁ!』
と弾き飛ばされた場所から剣を顔の前に出しディスアピアに突っ込んだ。
ガン!ザク!
と壁に当たり私の剣が私の顔を切りつけた。
『っ!』
今まで受けた切り傷のどれでもない感覚が顔を襲った。
何に当たったのかを見た先には、防御魔法が浮いていた。
ふざけるな
そう思ったが…
ゴウゥ!ボン!
と防御魔法にどこからともなく火が当たり、弾けた。人に、私に当たっていたら死んでいた。
救われたんだ
そう思った時には
ドバッ!
とゴトから放たれた水属性魔法で透明になっていたディスアピアは貫かれていた。
そしてゴトは
『動かないでくれよ』
と着ていた上着を私の頭に被せ、抱きかかえられた。
その後、ゴトによって私はスラルランド家に運ばれ、治癒魔法をかけられたが、ディスアピアの角によって熱くなった剣で切ってしまったこともあって、顔に大きな傷が残ってしまった。
そのままブラウ家に帰ると父は怒り、そのまま私を送ったスラルランド家の従者に婚約候補から外すと怒鳴り散らした。私は「まだ他にいるから」と思い、特に反対しなかった。
『婚約の話は無かったことにする』
婚約候補である狙っていた貴族の息子からそう言われた。今になってみれば当然だった。顔に傷のある妻は貴族からしてみれば、見るに堪えないだろう。
落ち込んだ。だが、まだ、誰かはいると思っていた。…が、傷のことを知ったのか婚約候補はどんどん消えていき、私の婚約候補はいなくなった。
あぁ、だめなんだ
と思った。その時思い浮かぶのは、私が治癒魔法をかけられている時もできるだけ近くで心配そうにしてくれたゴトの顔だった。ただいただけかも知れない。親から命令されてしょうが無くいただけかもしれない。でもうれしかった。初めから私を否定した婚約候補の誰よりも優しかった。
もっと話したい。もっと一緒にいたい。そう思った時には自然と身体が動いた。
スラルランド家をどうにかして壊そうとしている父に、なんとかならないかと何度もお願いした。私とゴトが一緒になれるように
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「と、今にいたる訳です。婚約候補から1度外されたものとは婚約することは出来ないという規則はありますが。夫婦になってはいけないとは書いてありません。…ですので」
というと俺に身体を押しつけてきて
「夫婦の営みをしましょう。夫婦として先に認められれば婚約はいりませんから」
と言ってきた。なかなかぶっ飛んだことを言うな。
その時、湖から何か小さいも飛んできた。それに反応したのかアドニアスは素早く俺から離れ…
キン!
と剣を抜き、飛んできたもの、魚を両断した。おぉ~凄い
「邪魔が入るとは…」
と、アドニアスが言っていると
「それ」
と今さっき帰って来たフルーがそう言った。
「それ?」
「依頼の魔物」
とフルーは半分になった魚を指さして言った。
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