8. ねぇ、妻ってなに?旦那様ってなに?

ガタガタ


この間乗った馬車よりも静かで揺れが少なく、人の乗る場所が広い馬車に今、俺たちは乗っている。

「それで何故、あんな場所で護衛も引き連れずにいたんですか?」

とこの馬車に乗せてくれた女が話しかけてくる。

「そりゃ、馬車に乗れなかったんだよ。冒険者で依頼終わりでな」

と答えると

「な!冒険者…」

と俺の言葉の女は驚きを見せた。

さん。兄様は父から縁を切られたのですよ」

とファウシーが言う。

「な!」

「…貴族?」

とアドニアスがファウシーの言葉に驚く中、フルーは空気も読まずにアドニアスを指指しながら俺に聞いてきた。

「そうだよ」



ごほん!

「初めて会う方がいるので……私はアドニアス・ブラウ!ブラウ家の長女にしてゴトのです!」

「…元婚約候補だろ」

とアドニアスの間違いを訂正する。勘違いされたらたまらん。

「…まぁ、そこに関してはは我慢してあげます。であなた方は?」

と俺の他2人に自己紹介をするようにアドニアスが言う。そっか、ファウシーは会ったこと無かったか…。

「ファウシー・スラルランドです!兄様の妹です!」

「フルー。ゴトの仲間」

と2人は答えた。

「そうでしたか。」


「…で、オブラインで降ろせばいいのですか?」

「フルー?」

依頼を受けたフルーに聞くと

「そう。オブラインの近くの湖の簡単な魔物退治」

へぇ

「湖ってどのぐらいの大きさですか?」

とファウシーが聞く。

「知らない」

とフルーが言うので

「…少なくとも船で寝る時間があるぐらいだな」

と俺が代わりに答える。

オブラインはリーマルドに行くには少し遠回りの場所にある港町だ。


「…そういえば、アドニアスはなんでこんなところにいるんだ?」

王都にいるはずだろう?

「この傷を癒やすため、の訳はそのようになっています」

「じゃあ、本当の訳は?」

とアドニアスに聞くと


「訳はありません」


「は?」

「傷を放置すると周りから何を言われるか分からないですから、「傷をどうにかしようとした」という訳を作る為に馬車を走らせているだけです。私自身、この傷は直らなくても良いと思っています」

「…婚約候補はいないだろう?なら傷を治す方がいいじゃないのか?」

貴族の未婚の女は美しく、良識であることが好まれ、婚約候補に選ばれやすくなる。当然、姿が醜く、常識が無ければ選ばれることは無い。…稀に男の方が変やつで選ばれることはあるがな。最低限、を持っていて勉強に励んだことがあればどこかの婚約候補になることは出来る。


「そうですね。今の私に婚約候補はいません」

アドニアスの傷はにある。まだ服で隠せる部分であればどうにかなったかもしれないが、顔は隠せない。…そうなれば婚約候補から外される、顔が重要な貴族の交流に出せないからな。


「ですが…」

とアドニアスはそういうと、俺に抱きついてきた。

「私の夫はあなた以外考えられません!この傷はあなたとの思い出の一つ!ならば傷を消すのは思い出を消すことと同じこと!そんなの…できません!」

とアドニアスは馬鹿なことを言ってきた。傷が思い出?第一、俺のせいで付いた傷だぞ?


「傷が思い出?」

とフルーが首をかしげながら言う。俺も同じ気持ちだ。フルー。

「この傷はゴトが私のことをであり、でありますから」

とアドニアスが言うと


「お嬢様、オブラインに着きました」

御者ぎょしゃの声が聞こえた。


====


馬車から降りると、そこには王都の様な綺麗な街並みでは無く、かといってゴウフトのように冒険者がたくさんいるような街でもない


貴族の休みどころとしても人気にんきがあり、店では魚そのままだったり魚料理が売られている涼しげな街、オブラインがあった。


「馬も降ろしますか?」

とファウシーに別の馬車に乗っていたアドニアスの執事が聞いてくる。

「はい!降ろしてください!」


「では、私は彼らに着いていきますので…護衛はいりません。お父様にご報告だけはしておいてください」

とアドニアスは後ろに付いてきた執事に言う。ちょっと待てや。

「かしこまりました。こちらが武器と防具になります」

と執事もその言葉を分かっていたのか、剣とドレスに合う防具をアドニアスに渡した。

「おい、待て。付いてくる気なのか」

とアドニアスに聞くと


「将来のについて行って何が悪いのでしょうか?」

と悪びれる様子も無くアドニアスは言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る