7. 予定が埋まっていく...
「すみません。突然洞窟の中に入ってしまい…」
「良いですよ。…お子さんですか?」
となんとなく聞いてみる。
「子どもといえば…そうですね」
『違うのかな?』
とスランが言う通り、言い切っていない。
「産んだ子ではありません。拾った子で…」
「あ~そういうことね」
「まだ言ってません!」
いや、別にその子がどこの誰かであるかは知らなくても良いかなって
『拾った子であるならフォーリナフではないのかな?』
と俺が聞かないのでスランが聞く。
「はい。ブランマンスの子どもなんです」
「ブランマンス?」
聞いたことない生き物だな。
『ブランマンスは白い虎だね』
「へぇ~。…なんで捨てられていたの?」
親がいるはずだろう?
「分かりません。ただ1匹でふらふらだったので私が育てているのです」
「食べ物はどうしているのかな?虎なら肉かな?」
と聞いてみる。
「何でも食べますよ。そもそも魔物が肉、草に限らず食べられる生き物なので…」
「…なんで親に返さないの?」
と俺が言うと
「…親が分からないっていうのもあります。けど、手放したくないって言う自分の気持ちもあります」
====
しばらく話していると…
「…これからも話の相手になってくれますか?」
う~~ん
「ここら辺に住んでいないんだよなぁ~」
と言うとスランが何か言いたいように顔をこちらに向けてくる。
『…』
「ん?何?」
『…そもそも今帰る家は無いだろう?』
あ…
「そうだったわ。…でもここに来たのも依頼の為だし…あんまりここに来ないよ」
「…そうですか」
と俺の言葉にがっかりしたのか小さい声でそう答えた。
『どうにか出来ないだろうか…』
と珍しくスランが俺に頼んでくる。
「そっち…えぇっと…名前は?」
「あ、リナって呼んでもらってます」
「じゃあ、リナさん。俺と話したいならリーマルドの近くの洞窟に住んでください」
「え」
こうするのが1番だろ。ここじゃ遠いし…
と思っていると
「すみません。あまり移動はしたくないんです」
「…子どもか」
「はい。それにあまり人の目に付くような場所に連れて行きたくはないんです」
ふ~ん。
「じゃあ、来れるのはたまにだけどいい?」
「はい。それでも人と話せるのであれば…」
ならいいか。後…
「スランを俺の倍ぐらいの回数、ここに来させるから」
『はい?』
====
次の日
コンコン
『
「起きてるよ」
あの後リナさんの元からスランと共に帰ってきて、こっそり自分の部屋に戻った。
『入ります!』
ガチャ
「何?」
部屋に入ってきたファウシーに向けて言うと
「依頼終わりましたけど、このまま帰るのですか?」
まぁ、やらなきゃいけないこともないし…
「帰るけど…なんかやりたいことある?」
とファウシーに聞いてみた。
「兄様が帰るなら私も帰りますよ。兄様の隣にいることが私の目的なので」
「じゃあ、フルーに聞いてみるか」
と隣の部屋に行き、フルーに聞いてみると
「なら、依頼を受けるのは?」
と短剣などの武器や小さな入れものを机の上に広げて持ち物の確認をしているフルーから返事が返ってきた。
依頼馬鹿なのかな?
「…いや依頼ならリーマルドに帰ってからでも出来るでしょ」
「なら、王都に帰るまでに受けられる依頼を受ける」
「…それならいいか。じゃあ、フルーが依頼を取ってきて」
そう俺が言うと、フルーは凄い早さで机を片付けて部屋を出て行った。
「はっや」
====
フルーを待つ間に、ゴウフトからリーマルドに帰る為に馬車を探すが…
「う~ん。3人は無理ね」
「じゃあ、2人は?」
パラパラ
「1人なら入れるわ。今日は人が多いの」
「そうですか。別のところもだめですかね?」
「…だめね。アクーリスの近くの村で大きい祭りがあるのよ。それに行こうとする人が多いから…」
アクーリス…リーマルド、ニリストス、アクーリスの順だからどの馬車も無理か。
「どうするか…」
「2日待てば乗れないことも無いと思うわよ」
「そうか…ありがとう」
「どういたしまして」
と俺は馬車乗り場を離れた。
「2日かぁ」
「2日ぐらい待てば良いと思います!」
とファウシーが言うが…
「2日待って乗れるか分からないのはなぁ」
「あっ」
そういうことだ。絶対に乗れるなら待つ価値はあるが、乗れるかも分からないのに待つ価値はない。
「スランに3人は無理だよね」
「はい!」
とファウシーが返事をする。元気に返事をされてもなぁ。
ファウシーとこれからどうしようかと話をしていたところ
「ん?」
見たことのある馬車、御者が幅の大きい馬車用に作られた道を通るのを見かけた。
その馬車の窓は開いていて、馬車の中にいる女と目があった。
「止りなさい!」
と大きな声が聞こえるとその馬車はすぐに止まり、窓枠を踏んで自分の服のことなど気にしないでこちらに飛んできた。
「ゴト。困っているのでしょう?」
と頬から口に伸びる傷のある女が目の前に来て、そう言った。
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