3. なんで?

次の日、俺は朝早くからギルドに来ていた。


「時間がかかる依頼ですか?」

「そう。ランクも上がりやすいんでしょ?」

「まぁ、そうですね。時間もかかり難しさがそれなりにある場合ですが…」

ユアさんが言う。


「そう。それ受けたいんだけど…」

「そうですか…。では、国を跨ぎますが良いでしょうか?」

「まぁ、1国ぐらいなら」

「それならこれですね」

とユアさんが言うと紙に書かれた依頼を見せてきた。


そこには


アトロクス ゴウフトにおける魔物討伐


と書かれていた。


「アトクロス…確かに他の国とはいえ近いところ」

と後ろから昨日も聞いたフルーの声が聞こえてきた。

「そうだね」

「これにしよう」

「じゃあ、これで」

と依頼書をユアさんに返しながら言った。


「分かりました。依頼が終わったらまたここに帰って来てくださいね」


====


…という訳で


「ここがゴウフト…」

隣の国であるアトクロスにあるゴウフトにたどり着いた。


「そうだね」

「案外寂しい町なのですね~。王都の方が賑やかです」

「そりゃそうだろ」

とフルーとフルーよりも少し大きなの言葉に返す。


「依頼が楽しみですよね!!」


これの話をするために少し話を戻す。


====


ギルドから出た後、アトクロスに行く馬車がある場所に向かっていた。


その場所に着くといろいろな御者ぎょしゃが呼び込みをしていた。

「いろいろいるね」

「…で、どれに乗ればいいの?」

「さあ?」

俺は貴族の馬車以外には乗ったことないから、知らん。

「そういうフルーは?」

「知らない。なんならアトクロスについて知らないから、ゴウフトどころか近くの町すらどこにあるか知らない」

「…」

じゃあ、どうするんだ?


「この馬車はアトクロスのゴウフトの近くまで行きますか?」

「いや、この馬車はアトクロスとは逆のイプクパロスに行くんだ。ごめんね」

とフルーが御者ぎょしゃ一人一人に行き先を聞き周っていった。


「…任せるか」

待ってる間に甘いものでも買おう。




「見つけた。ゴクフトの近くまで行く馬車」

もぐもぐ

「…」

「食べる?」

「食べる」

そうして馬車が出発するまでフルーとおやつを食べた。


====


ガタガタ

「意外と揺れるね」

乗り込んだ馬車には俺らの他に何人も乗って、乗り心地は流石に貴族の馬車に劣る。


「そうなの?私、馬車に初めて乗ったから普通だと思ってた」

と俺の呟きにフルーが反応した。

「俺がそう感じただけ。吐きそうなら早めに言えよ」

「吐きそう?」

あ、それもわからんのね。



暇なので窓から外の風景を見る。リーマルドの周りは所々に森がある平らな土地。たぶん攻められたら森に逃げるしかないぐらい何も無い。


今も馬車から動物や魔物の姿が見えている。ウサギが狼を追いかけていたり、大きな羊が仲間を連れて歩いていたり、人を乗せた白い馬がこっちに向かって来ていたり……。


「は?」

「?」


なんで?


御者は前にいて前を見ているため、後から来ている白い馬に気づいていない。俺の隣にいるフルーは窓の外を見ていないから俺の反応を不思議そうに見ているだけだ。


ドドドドド


白い馬はどんどん馬車に迫っている中、俺は気づいた。馬に



「あ~~~に~~~さ~~~ま~~~!」



「ん?なんですか?」

フルーが外を見ている俺にそう聞く。馬車に乗っている中、外から声が聞こえてきたら不思議がるよな。


「外」

とフルーに一緒に外を見るように言う。


そうして再び外を見ると、馬の上に乗っている人がはっきり見えるまでに白い馬が馬車に近づいていた。


兄様あにさま!」

白い馬の上には、灰色の長い髪に薄紫色のドレスを着て、何故か矢と弓を背負っている女がいるのが見えた。


「…馬鹿なのかな?それとなんで俺がここにいると分かった?」


俺の妹、ファウシー・スラルランドだ。

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