セロリの中華炒め
突然ながら、僕はセロリが嫌いだ。というよりも香草が苦手なのだ。
あの何ともいえない鼻に抜ける感じの風味が不愉快で不愉快で……。特に春菊なんかは、なぜ食卓に並んでいるのかと思うほど憎らしい。
しかし、ここまで読んだ人なら、きっと疑うだろう。何故タイトルにそれを持ってきたのか、美味しかったもののお裾分けをするのでは無かったのか?……と。
勿論そのつもりである。
そう……セロリ嫌いの僕が、唯一食べれるセロリ料理のお裾分けをするのだ。
まずはセロリの葉と茎を分ける。これで使うのは茎の方だが、葉っぱはスープとかにも使えるらしいので、セロリが好きな人は是非捨てずに活用して頂きたい。そんな事を考えながら、僕は躊躇なくゴミ箱に葉っぱを突っ込んだ。
大きい茎の根本、少し茶色く変色している部分と、その両端の筋が強そうな部分だけを切り落とし、大体5mmぐらいの斜め切りにする。普通はピーラーなどで筋を取るみたいたが、繊維に逆らって切っているので、そこは省略するのが僕流である。
葉に近い細い茎も大体大きさが揃うように切り、水でさっと洗う。
その後、生姜の千切りとネギを薄く斜め切りにして準備完了。比率はお好み、きっちり計って料理をするなんて僕の性に合わない。
フライパンを強火で熱し、胡麻油を入れる。ふわりの胡麻特有の香りが漂い、油が水の様に柔らかくなったのを見計らってネギと生姜を加える。
中華料理では、香味野菜を先に入れて炒め、香りを出すのが鉄則である。ジュウジュウ……と煙を上げながら炒め、しんなりしたらメインのセロリを入れる。
最初は白っぽくてハリのあるセロリも、1〜2分ほど炒めれば鮮やかな緑を呈し、他の野菜に寄り添う様にしなる。
そこに塩と少しの砂糖、オイスターソースを手早く加えながらフライパンを振り、仕上げに醤油を鍋肌に沿って香りを引き立たせれば、室内はたちまち醤油の焦げた香ばしい匂いに包まれた。
セロリのシャキシャキ感、生姜とネギの風味、それから調味料が絶妙に重なり、僕の香草嫌いの鼻腔を美味しく擽る。
僕は片付けもそこそこに席につく。向かい合う人がいなくても、そこに置いてあるご馳走があれば十分だ。
僕は手を合わせた。
「いただきます」
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