夢の街
眠りと夢の街。
『眠りと夢の街。』 作・石崎あずさ
2024年4月27日
————————ここからが本編です。—————————
夢を見ていた。そこは見たこともない街だった。
一回も見たこともない。一回も来たこともない。一回も知ったことはない。
ここは...どこだ?幼い頃からの記憶を辿っても...この街は、知らない。
人も誰一人いない。後ろには商店街らしきものもあるけど全部シャッターが閉まってる。
「ここは...どこだ?」
声が漏れてしまった。その声は遠く、遠く、まで響いていくように聞こえた。
空を見上げても太陽は顔を出さない。太陽光を遮るように、雲が隠している。
ここはどこだ...俺は何をしているんだ...
「おわっ!」
と布団から上体を起こす。
「なんだ。夢か...」
と情けない独り言を言う。そこは、見慣れた俺の部屋だった。
小汚い机、物が散乱した部屋、カーテンから光が漏れている。
「はぁ。ほんとに何だったんだ。」
と独り言をつぶやく。
洗面台に言って水を出す。そして手に水をいっぱい貯めて顔を潤す。
やっぱり冷たい。
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「いただきます。」
と手を合わせる。
「じゃ、俺仕事行ってくるからな。」
とお父さんが言う。俺の母は俺が幼い頃、病気で亡くなってしまったらしい。
だから俺は17年間父子家庭だ。
夏休みだからしばらく学校はない。
『今日の浜松の天気は、最高気温が37℃となり、猛暑日になるでしょう。』
とテレビのお姉さんが言う。
今日も暑いな。と思いつつ俺は肩掛けバックを背負い、帽子をかぶり、氷たっぷりの麦茶を入れた水筒をもって俺は外を出る。
家の鍵を閉めてチャリを出す。
やっぱり朝のサイクリングは気持ちいい。
俺はこの後、友達と遊ぶ予定があるから近くのショッピングセンターに向かった。
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チャリを駐輪場に止めてエントランスまで急ぐ。
「あ!やっと来た~!」
こいつは西川。いつも元気で活発なやつだ。ちなみに脳みそが筋肉でできてるいわゆる脳筋だ。
「すまん。すまん。少し寝坊した!」
と俺は軽くぺこぺこと謝る。
「まぁ今日は許してやるよ!じゃあ行くぞ!」
と店の先を進んでいく。
俺は目に入ったものがあった。
「あ、西川。九州フェスだってよ。」
と俺は西川に行ってみると、
「九州か...いったことねぇな。」
「ま、まず行く用事ねぇか!」
と俺が冷やかすと俺らは馬鹿みたいに笑った。
—————————————————
俺らが帰るころにはすっかりも日も暮れていた。
警察のお世話にならないようにとチャリをフルスピードになるまで回転させて帰った。
良かった...まだ父親は帰ってきてはいないみたいだ。
俺は家のドアを開けて、晩御飯は適当にカップ麺で済ませた。
浴室の更衣室のドアを開け、浴槽に入りながら考えた。
「まず、夢に入ったら周りを歩いて散策」、「夢から覚めたらスケッチに書いて残す」やいろんなことを考えた。
そして、浴室のドアから出ると、俺は睡眠時間までベットの上で過ごすとした。
いつでも寝れるように電気は消して...などいつでもあの街に行けるようにだ。
その時間が近づくと俺の体は勝手に眠りにつき始めた。
—————————————————
目が覚めるとそこは、やっぱり昨日の街だ。
風が冷たい。地名らしきものは見つからない。
計画通り動いてみようとした。
「あ...足が...上がらない...?」
なんていうんだろう。足がボンドで固定されている感じがした。
腕をぶんぶん回しても暴れようとしても動かない。
スマホももちろん持ってない。
俺はどうしようもできなくて、いつか目覚めるだろうと信じながらその場で三角座りをして待っていた。
その時、上から女の子の声がした。
「大丈夫ですか?」
そこには白のワンピースと帽子をかぶった。
俺と同じぐらい...いや俺よりちょっと幼い子がいた。
「あぁ。あ...ありがとう。」
と俺は苦笑いしつつも感謝の気持ちを伝えた。
「君、名前は?」
いきなりの質問で少しキョドってしまったが
「あ...僕の名前は幸田大輝です。君は?」
と俺が聞き返す。
「へぇ~だいき。いい名前じゃん。私は...」
「はっ!」
目が覚めるとそこはいつもの俺の部屋だった。
「クッソ!あの子の名前を聞けなかった。」
と俺は頭を抱えつつ、何か策を練りだせるかもとあの街の風景をスケッチに残した。
普段絵を書かないから線はグニョグニョだけど、特徴はつかめた。
俺がグーグルマップを見て合ってるところを探した。
いろんなところをストリートビューで見まくった。でもそれらしき場所は見つからない。
「クッソ!ほんとにどこなんだあそこは!」
と俺はまた頭を抱えた。でも一瞬脳の隅にかすんだ言葉があった。
日本中を旅する。
この文字が脳裏に浮かんだ。
「よし。」
と俺はある決断をし、俺は家を飛び出し、交番へと向かった。
—————————————————
交番の扉を開ける。
「すみませ~ん!」
と俺はお巡りさんを呼ぶ。
そして俺はスケッチを見せて指をさしながら、
「ここ、どこか分かりますかね?」
そう俺が聞くと警察官は驚いたような顔をして
「あ!ここ!僕の地元です!長崎県の松浦市です!」
と叫ぶ。
俺は内心でガッツポーズをして俺は旅の計画を練り始めた。
—————————————————
持ち物は数日分の着替えと段ボール、油性ペン、カッターを持って行くことにした。
地図を広げて浜松から松浦までの距離を練る。
「755km!?」
俺は驚いてしまった。755kmを移動せねばならないのだ。
段ボールをカットして鉛筆で下書きを書き、油性ペンで大きく文字を書いた。
「完成!これで完璧!」
そういって自分が作った段ボールを見てみる。
大きく『長崎県松浦市方面』と書いてある。
これで完璧!そう思って家を出た。
電車で新浜松まで向かい、駅前から少し離れた龍禅寺町の道でヒッチハイクをした。
数十分の間無視され続け、諦めながら親指を立てていたころ、一台のワゴン車が目の前に止まった。
窓が開いたと思ったら30代ぐらいのいかつい兄さんが
「君。ヒッチハイカー?いいよ!乗せてやるで!長崎行くんだら?」
と声を掛けてくださった。
「えぇ。長崎の松浦ってところまで行きたいんです。」
と俺が補足すると、
「あぁ。いいぞ。乗りな。途中まで連れてってやるよ。」
と言ってくださり、ワゴン車はスピードを上げていって、高速道路めがけて走っていった。
—————————————————
浜名湖を通る。
「おい、兄ちゃん。見ろよ。浜名湖だぞ!」
「わぁー!高速から見る浜名湖は綺麗ですね。」
と俺は浜名湖で釘付けになった。
やけにカーブが多い道に入る。スピードを落としながら慎重に車は走っていく、その時カーナビが声を出し、
『アイチケンニ、ハイリマシタ』
と合成音声が棒読みでしゃべりだす。
「浜松から愛知って意外にちけぇんだな...」
と兄さんは呟く。
「え?初めてなんですか?」
と俺は聞くと、
「あぁ。実はそうでな、俺いつも帰省するとき飛行機に乗って帰ってるから。」
と話し出す。
「あ。そういえば今日は大阪かどっかで泊まるから。」
と思い出したようにしゃべりだす。
「え?いいんですか?」
と俺が慌てるように聞くと兄ちゃんは大きく笑い出し、笑いの大波が収まった後、
「あぁ。もちろんだ!俺もそんな頃があったからな。」
「家出じゃありません!」
と俺は何かを察したつもりの兄ちゃんの誤解を解く。
—————————————————
『シガケンニ、ハイリマシタ。』
とまた合成音声が喋りだす。
「琵琶湖見えるかな~」
と兄ちゃんが喋りだす。俺は寝ながら聞いていた。
「ったく。寝落ちか。」
と呆れるように言う兄ちゃんがいた。
「しょうがねぇ。スピード上げるかぁ。」
そういってアクセル全開にし、ブォーンと轟音を立て車はスピードを上げていった。
いろんな車を追い抜かしていく。
—————————————————
「おい。少年。少年!朝だぞ~!」
と俺を起こす声がする。
「うわぁ!」
と布団から上体を起こす。
「ど...どうした?」
と兄ちゃんは驚いている。これは驚いている顔だ。俺でもわかる。
よく見たらもう朝だった。
「とりあえず、さっさとチェックアウトしてさっさと行くぞ。今日つく予定だからな。」
と俺の手を引っ張る。
—————————————————
『サガケンニ、ハイリマシタ。』
聞き飽きた合成音声を聞きながらもう佐賀県まで来たんだという高揚感を抑え、自分は冷静を装った。
自分がここに来た理由。ただそれだけあの女の子の正体、あの街の正体を知りたいだけだ。
ただの旅行じゃない。言い変えるなら聖地巡礼。
「よし、もうすぐ嬉野だ。ここで下ろすからな。」
「はい。ありがとうございました。」
と感謝の気持ちを伝えると兄さんは嬉しそうに親指を立てた。
そして高速を降り、近くのコンビニで下ろしてもらった。
「じゃ!元気でな!少年!気をつけろよ!」
「はい!ありがとうございました。」
俺は名前を聞いてなかったが正義に名前なんかいらない。俺は自分にそう言い聞かせた。
下ろしてもらった頃には17:00だった。今日はどこかで泊まらせてもらうしかないか。
俺は暗い道を歩いていた。
だけど西だから浜松に比べて日没が遅いから行動できる時間は長かった。
だけど体にも限界が来てしまった。
だから諦めて近くのバス停の小屋に寝泊まりすることにした。
—————————————————
はぁ。ここが一番落ち着く。
おやすみなさい。あの街に行ってくる。夢でも。現実でも。
はっ!やっぱりだ。
この街は松浦か。この前の女の子は...
後ろを振り向いたら、そこには前の女の子がたっていた。
「待ってたよ。」
と笑顔を見た。俺はその顔が愛おしかった。俺はその子に宣言した。
「いつか、君の所に行く。だから、待っててほしい。必ず行く。絶対。約束だから。」
と俺は強調をしまくった。
「絶対...だから。」
と半泣きになりながらいった。
はっ!
目覚めるとバス小屋だった。
「今日こそ...絶対に会いに行く。」
そう誓った俺はまたヒッチハイクを始めた。
数時間たったころだろうか。体に限界が来てしまったのは。俺はバス小屋で休んでいた。
目の前に赤色の軽自動車が止まった。
「え?さっきあの車...」
そう。この車、さっき通り過ぎたはずだった。戻ってきてくれた。どこかでUターンしたんだと俺は考えた。
車の窓が開く。そこには綺麗なお姉さんがいた。
「君、松浦に行きたかっちゃろ?」
と止めてくれた。
「は、はい!」
と俺は威勢よく返事をする。
「そうよな。ほら。車乗り。かっ飛ばしていくけんね!」
と威勢よく返してくれた。
車が加速しだす。周りの景色が一瞬で通り過ぎていく。
「嬉野から松浦か...あ、そういや君、おなかとか減っとらん?減っとったら買ってやるばい。」
と答えてくれた。
「いやいや。お気持ちは嬉しいですが、大丈夫です。」
と俺は丁重に断った。
長崎県に入るとお姉さんはテンションが上がったようだった。
「来たばい!ふるさと!」
と大きな声で叫んでいた。
「え?故郷なんですか?」
と俺は聞くと、1聞くと100返すように帰ってきた。
「そうばい。うち長崎出身でその中でも佐々ってところっちゃけどペチャクチャ」
とたくさん答えてくれた。どうやら、その佐々というところから電車に乗ると松浦に行けるらしい。
—————————————————
車で走っていると、たくさんの景色が見えてくる。
「ほら、見てみ。あれ、ハウステンボスばい。デカいやろ~」
と案内してくれた。
俺は言葉にならないほどその景色に見とれていた。
車はどんどん加速していった。
佐世保市に入るとお姉さんは
「よし、ちょうどお昼時だし、佐世保バーガーでも食べるか!ねぇ君。うち奢るけん、好きなもんば買ってよかばい。」
と言ってきたがなんか申し訳なくなったから
「いえいえ!大丈夫ですよ!そんな!」
「こらこら~意地を張らずに!年下は年上に甘えなさい~」
とからかうように言ってきたからムキになって
「わ、分かりましたよ!じゃあこれとこれください!」
と投げやりに奢ってもらった。やっぱり罪深くなった。
佐世保バーガーを車の中で食べながら佐々に向かう。
西九州道に乗り佐々ICに向かう。やっぱり長崎の大きな特徴としてはトンネルや山を切り開いて作った道が多いということだ。
やっぱり山や坂が多い長崎にとって多いことだろう。
そんなことを思ってるうちに
「おい。君。佐々駅ついたばい。松浦にいくっちゃろ?ほなら気をつけてな!」
と言ってれて
「これでなんかうまいもんでも食えや」
と3000円を手に握らせた。
「ちょ!え?おーい!」
もうその頃には車を発進させていた。
そのお金で切符を買った。
行くんだ。あの場所に。あそこと初めて出会った日、
あの子と初めて出会った日、これらはいまでも鮮明に思ってる。
自分があそこと出会えるまで俺は絶対にあきらめない。
そう思ってたらドアが閉まり、ディーゼルは走り出した。
トンネルを抜け、山を越え、街を通り、様々な特色のある沿線を走りぬくこの鉄道、それが「松浦鉄道」あの松浦の街に行くためそしてあの子がいる場所に行くため、あの子にがっかりなんかさせたくない。
しっかり自分が来たよと示すために。俺はこの夏休み、最大の冒険のピークを迎えようとしてる。
『まもなく、松浦。松浦です。』
と放送が聞こえる。
ドアが開く。降り立つ。
駅を出る。
そこには、夢で見た街並みが広がっていた。
ここは...すごい。自分が来た。降り立った...現実で。
俺は涙が出てきてしまった。
「あ!あの女の子!あの子はどこだ!」
俺は体力に限界が来ようとも!あの子に会うためなら!なんでもする男だ!
どこだ!どこだ!どこだ!
「あっ!」
声が出てしまった。風に揺れるスカート。見慣れた髪型。見慣れた体形。あれは...
と俺はゆっくりと歩いて行った。
自分の高鳴る鼓動を抑えながらその子のもとに踏み寄る。
その子は海をずっと眺めていた。
俺は後ろから声を出す。冷静な声に装って。
「ねえ。君。」
その子はこっちを振り向く。そしたら何かに気が付いたかのように
「大輝君!」
とこっちに走ってくる。
そして俺は抱きしめられる。
「言っただろ。絶対に...会いに行くって...」
俺は半泣きになりながら答える。
「約束通り...来てくれた...」
その子も半泣きになりながら答える。
「君の名前を教えてくれないかい?」
俺はずっと聞きたくてあっためておいたことをやっということができた。
「私は...白河優江。会いたかったよ。幸田大輝君。」
「俺も会いたかった。白河優江さん。」
—————————————————
あれから何年たっただろう。
「先生。ここどうしたらいいですか?」
「白河先生!ここ分かりません!」
「幸田君。君はいい方向に言ってるよ。」
「白河先生大好き!」
でも、いまだに覚えているよ?私はあのことは誰にも話してないだけで、もちろん覚えてるよ。
俺もしっかり覚えてる。元気にやってる?
もちろん。元気にやってるよ。君が長崎に来たと知って驚いているよ。
そうか。それなら俺も安心した。同じ職種なんてびっくりだよ。
もちろん。今度、またハウステンボスに行こうね。
「ハウステンボスも車の中で見たとき、鮮明に覚えてるな」
と俺は呟きつつ、俺は優江さんの事を待っていた。
「お待たせ。待った?」
「いーや。全然待ってない。」
俺は平然な顔をした。
俺たちはたくさんいろんなスポットを回った。いろんなものを食べた。
いろんなことをした。
ハウステンボスデート。なんちゃって。
ハウステンボスの白い観覧車。俺はその時、覚悟を決めたんだ。
俺はポケットから箱を取り出し開けてこういったんだ。
「優江さん。僕と...」
この時。とても緊張していた。
「結婚してください。」
眠りと夢の街
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