第41話『繧ュ繝。繝ゥ』
砕かれた魔石からは高密度の魔力が溢れ出した。
高密度の魔石は魔獣を型作り、そこに意識を埋め込む。
魔石の数は十を超える。
通常なら魔石の数だけ、その魔石の種類によって魔獣が呼び出されるだろう。しかし今回は違った。
「ほう? これは面白いな。これだからこの世界は面白くて仕方がない。ククッ、死ぬなよトラノブ君?」
出来上がった魔獣は、世界のどこを探しても見つからない新種と言っても過言ではない姿をしていた。
いや、どちらかと言えば既存と既存が掛け合わされて新種が出来上がっていた。
俗に言う『キメラ』だ。
様々な魔獣の特徴を併せ持った魔獣。まるで幼稚園生が描いた絵みたいな魔獣だ。おっと、一応言っておくが、幼稚園生を馬鹿にしている訳ではないぞ。
「ふむ、
「ワノさんもそう思います?」
四足あり、羽があり、牙があり、強靭な肉体がある。
強いて無いものと言えば造形センスくらいだが、闘いの前では無くても支障は無い。
「アフエラ、解析してくれ」
〔了解しました。……データが取れました。『キメラ』です〕
「見た通りだな……」
〔全く新しい魔獣ですので、慎重に戦ってください。飛べるかもわかりませんし、もしかしたら爆発するかもしれません〕
そりゃないだろ。と思ったが、可能性はゼロではない。
既にビジュアルが爆発しているし、急に爆ぜるかもしれない。
『縺弱e縺√=縺ゅ≠縺ゅ≠!』
変な音で叫びながら、手足の大きな爪で地面を抉りながら駆け出してくる。狙いはワノさんのようだ。
綺麗に整備された石畳がひっくり返り、破片があちらこちらに飛散する。
「守りも
大きな牙を見せるキメラの噛みつきを避け、低姿勢から斬り上げる。しかし、その斬撃は肉を斬り裂くことはなかった。
斬り方が悪かったと思ったワノさんは、ステップを踏み直して、自重と勢いを乗せて斬撃を繰り出す。
キメラが爪を立てて反撃をするが、反応するワノさんは刀で受け止める。
「ふむ、硬いな。この前の水龍の比ではない」
「感想述べてないで離れてくださいよ!? 協力しましょう。隙を作っていただいたら目を潰します!」
「頼もしいのう。とてもコヤツに同情したくなる狙いじゃが」
刃で滑らせるようにして爪を受け流し、顎を斬り上げるようにして仰け反らせ、バックステップで後退する。
ワノさんが作ってくれた隙を生かして眼球に向けて発砲する。
狙いは違わなかった。
鍛えられた射撃能力は完璧とも言える精度を誇り、眼球に直接弾丸をぶち込むことができた。
しかし、ワノさんの斬撃同様弾かれてしまった。
〔異常なまでの物理耐性があるようです。魔法の類が有効かと思われます〕
「マジかよ……俺は魔法が使えないんだよな?」
俺の問いかけに〔今の所は〕と短く返答する。
ワノさんにチラリと視線を送ると、なるほどと言った様子で小さく頷いた。
「ふむ、魔法ではあらぬが、これでどうじゃ?」
刀を左手で逆手持ちにし、十分な距離を持って、右手で狐を作った。
ふざけている……訳ではなさそうだ。
「惑わし焼き尽くす妖美の炎よ、今我に……ぬわ!? こういう時は待つのがお約束であろう!?」
詠唱中の無防備となっていたワノさんに爪を振るう。その攻撃を間一髪で避けたワノさんは慌てて体勢を立て直す。
のびのびと詠唱を聴くほどキメラは優しくないようだ。
「魔獣相手ですよ!? 俺が一旦足止めします……! 俺が相手だ、こっち向け!」
ベレッタをホルダーに戻し、肩掛けにしていた416を構える。気を引くためだけに十分な量を乱射する。
奇声を上げながらこちらに走り寄ってくる。
「そうだその調子だ。ワノさんを待たずともこのまま死んでくれてもいいんだぞ!」
逃げ回りながら射撃。アフエラにマガジンの作成をお願いしながら継続的に射撃する。
相変わらず傷の一つもつかない。
〔情報を訂正します。物理耐性の高さはありますが、それ以上に『自然回復力』が異常であることがわかりました。攻撃は全て通じますが、回復速度が追い付いているようです〕
「はぁ!? つまり魔法を喰らっても回復するから実質無敵ってことか!?」
肯定を意味するように〔ピロン♪〕と鳴らす。
変わらず詠唱を続けるワノさんを一瞬見やると、〔しかし〕とアフエラが希望を持たすような言葉で切り出す。
〔再生に魔力の流れを感じるため、魔力が枯渇すれば単純な物理耐性だけが残ります。単純な話、持久戦となります〕
「そ、そうか。じゃあワノさんが攻撃をしたら俺も行くぞ」
詠唱を終えたようなワノさんがこちらにアイコンタクトを送った。
「惑わし焼き尽くす妖美の炎よ、今我に従い舞い狂え!」
狐を模した手を開き、そこから紫色の炎が飛び出してキメラを包む。
——今だ。
そう思って416を唸らす。
フルオートでぶっ放す。魔力を枯渇させるために全弾を。
その銃声の中、甲高い金属音が背後で聞こえた。
振り返るとワノさんが倒れていた。
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