第24話『トップシークレット』

 俺が正常な思考を働かせていないことくらい、わかっていた。しかし、それを上回るパニックが襲ってきていた。

 狩りの瞬間を見られていたことに加え、それを約一日の間口止めなしに野放しにしていた。


 戦争の火種は消すべきか? っちゃうか? っちゃうのか!?


「み、ミナセさん? それ魔道具ですよね? デグルベアを……殺、した……」


 自分の発する言葉を聞いて青ざめて行くお姉さん。

 まずはどんな状況か、聞かせて聞き出さなければ。


「説明します。あなたに突きつけているコレは……『チャカ』と言います」


 あえて銃とは言わない。チャカは一応銃を指す言葉だが、確かヤ◯ザ用語だ。


「どんなものかと言うと、Fランク冒険者がCランクまで飛び級できるほどの戦力をもたらす凶器です。わかりますね? 広く出回れば戦争の火種です」


 俺は多少知識があったからCランクまで飛び級できるようだが、まあ基準はともあれレクチャーすれば一瞬で一定の戦力まで底上げできてしまうのは確かだ。


「質問です。あなたは、このチャカの存在を誰に話しましたか?」

「だ、誰も……ひっ!?」


 しらばっくれるつもりか、本当に誰にも話していないのか。

 喉に突きつけるベレッタを、スライドが少しずれるくらいに押し当てる。ここまで押し当ててしまうと発砲できないらしいが、この銃がその仕様かは知らない。


「しらを切るつもりですか? 言いましたよね、少なくともギルドマスターには」

「いいい言ってません! 魔道具に詳しく無いので憶測でしか喋れない私が、多方面に迷惑をかけてしまうような発言はしませんんんんん!! ギルドマスターにも聞いてみてください! 私は何も喋っていないのでぇ……」


 マジで言っていないようだ。

 謝罪と口止め料を渡して再びギルドマスターの待つ部屋へ戻った。


「失礼しました。人類に関わる大事な話をしていました」

「はっはっは。やけに長いと思ったが、何を話していたんだい? そんな壮大な話はしていないだろう?」


 冗談と受け流されてしまったようだ。

 ……ふむ。ギルドマスターには説明しておいた方がいいだろうな。その前に色々確認したいことがあるが。


「割と壮大な話はしていました。内容を話す前に確認したいことがあります」


 一つ、ギルドと国の関係。

 国から指定された組織団体ではあるが、ほぼ放置されたような存在で、独立した運営を任せられているらしい。

 二つ、この王都ミドリナ周辺の国家間の関係。詳しくは戦争事情だ。

 至って平和なようで、周辺は自然の壁があり、山や川、魔獣の住まう平原等があって他国との戦争とは縁がないようだ。貿易もないが、自国の資源で間に合う程度には自然資源が豊富で、さらに魔獣も豊富だと言う。


 好条件だった。国との関係が一番重要だったのだが、あまり深い関わりがないなら話してもいいだろう。

 お姉さんに話した内容を話し、ギルドマスターにも口止め料を渡した。

 「その魔道具の仕組みはどうなっているんだ?」と聞かれたが、技術を教えるわけにもいかないため、「死の商人になりたいですか?」とだけ返し、銃に関しての話をレッドラインとしておいた。

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