第21話(光)『休日の受付嬢さん』

 私の名前は『イーブ・スタラーチェ』。冒険者ギルドで受付嬢をしている者だ。

 私には最近、気になっている人がいる。とは言っても恋愛的な意味ではなく、単純に、興味を惹かれる人……もっと簡単に言えば変な人がいる。

 いつも決まって私の列に並んでくれる冒険者さんのことだ。

 どう変な人かと言うと、いつもボロボロの布をきちんとしたレザー素材の服の上に纏ったイケメンだ。

 これと言った武器は持っているようには見えず、彼が所持している武器はアイリスさんが贈ったナイフだけだと認識している。

 その変な人の名前は『ミナセ・トラノブ』と言う、この辺では聞かない名前だった。


 アイリスさんも気になる人の一人だ。

 前まではなんと言うか……人生を諦めたかのような、何か絶望を抱いているような、そんな目をしていた。

 今はミナセさんと一緒に行動し、とても楽しそうだった。

 付き合っているのかな!!


 週に一度の休日の今日。

 私服になり、街に出て買い物でも楽しもうかと思っていたら、例の二人組を見つけた。

 どんな狩りをしているのか気になったため、二人には悪いが後をつけさせてもらった。

 以前、ミナセさんが決闘をしていた時の闘い方を見ると、冒険者らしからぬ『教科書に沿ったような綺麗な動き』でナイフを扱っていたため、ミナセさんを先頭にアイリスさんが魔法での後方支援をするのかと思っていた。

 アイリスさんが魔法での後方支援をすると言うのは予想通りだったが、ミナセさんは全く前に出ることは無かった。

 腰にくっつけていたアクセサリーみたいな白い何かと、それと同色の大きな何かを使って戦っていた。

 爆発音が連続で鳴り響き、デグルウルフやらデグルベアやらを瞬殺していた。


「なんなの……この人……っ!!」


 冒険者ランクの昇格試験を受けることを躊躇っていたから、何かやましいことでもあるのかと思っていたが、異常なまでの戦闘能力を隠している。何も悪いことは無いはずだが、彼からしたら隠したいことなのかもしれない。

 これは……彼が報われるべき方向に私から動くべき……?


 二人の前に現れる魔獣たちはすぐに葬り去られ、アイリスさんが大量の魔石を抱えてミナセさんに渡している。

 そう言えばなんであんなに魔石を欲しがっているのだろう?

 今回収している魔石はデグルウルフやらデグルベアやらの、ちょっとした魔道具の動力として活用されるくらいの小物。特殊な魔法を扱わない魔獣の魔石はそこまで需要もないはず……。本当にただの魔石コレクターと言うことなのだろうか?


 その後しばらくついていくと、二人がこそこそと茂みに隠れて何かを見つめていた。

 別角度から見ていた私は、二人が見ていたものを見て絶句した。

 デグルサーペント。デグル森林の食物連鎖の頂点。討伐推奨ランクはB。しかもパーティを推奨されたものだ。


 そうこう考えているうちにミナセさんとアイリスさんは同時に飛び出して牽制攻撃を仕掛けた。

 一度アイリスさんが電流を浴びて痺れてしまったものの、ミナセさんが爆発音を連続して鳴らし、サーペントの口から血を吹かせた。


 やはり、彼が報われるべき方向に私から動こう!

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