第20話『森林の大蛇』
爆破魔法が作動すると、石製の弾丸が目に見えない速度で飛んでゆく。
石製とは言え、硬質化という補助魔法が弾丸にかかっているため、鉄と同等くらいまでの強度はある。
狙った通り左側の頭部に当たる。
カチィン! と言う音が鳴り、着弾を知らせるとともに「鱗には銃弾が効かない」と言う事実を奏でる。
ただ、衝撃はあるようで、ほんの少しのけ反った。
「セトラさん! ブレス来ます!」
そうアイリスが叫ぶと、のけ反った顔を戻してこちらに口を開き、紫色の霧を出してきた。
バックステップで距離を取り、牽制のために三発ほど顔に撃ち込む。どれも甲高い音とともに弾かれてしまう。
「【ウィンドサークル】!」
アイリスが唱えた魔法は風属性の、指定した一点を中心に風を立たせる魔法だ。その恩恵をしっかり受けるべくアイリスに近づく。
毒々しい霧はこちらへ近寄ることを許さずに空中へ薄く消えていった。
「アイリス、耳塞いで」
416から手を離して腰からベレッタを引き抜く。照準器を覗き、目を狙って発砲。
狙い違わず直撃するが、眼球にはヒビが入っただけだった。
「嘘だろ!? 眼球まで硬いのか?」
〔蛇の眼球には『アイキャップ』と呼ばれる膜があります。デグルサーペントのアイキャップは硬くなっているようです〕
毒霧を吐いてきた頭は相当痛がっており、しばらくは悶えているはずだ。ならもう一つの頭も毒霧に気をつけて……。
そう思っていると、口を半開きにした右の頭が頭突きをするかの如く接近してきた。
「なんだコイツ!?」
「セトラさん! くっ……きゃっ!?」
デグルサーペントの牙を剣で受け止めるべく、割り込んできたアイリスは短い悲鳴をあげて倒れた。
「アイリス!? どうした!?」
サーペントを見ると、半開きになった口から覗く牙の間で電流が走っていた。
これが『スタンファング』と言う特殊能力か。
だが、チャンスでもある。
ベレッタをしまい、416を構えてフルオートにする。
半開きの口に連続で撃ち込んだ。
いくら硬い鱗があるとは言え、体内までは硬くないようだ。ドバドバと血を吐いてだらんと首を垂れ、ぴくりと動かなくなった。
片目にヒビが入った左の頭も、足掻くように毒を吐きまくっている。しかし、毒がこちらに届くことは無く、全て霧と成っては薄れてゆく。
「終わりだな」
毒を吐く際に開いた口を銃弾で埋める。
死んだであろうことを確認することは無くアイリスに駆け寄る。
「大丈夫か!? アイリス! ……アイリス?」
「ひゃ、ひゃひ……。ら、らいじょうぶでしゅ……」
なんだか気持ちよさそうだ。体が痺れて動かないことは確かなのだろうが、苦しんでいるような表情では無い。
落ち着いてきたアイリスはゆっくりと立ち上がり、若干引いている俺の表情を見て言い訳をした。
「けけけ決して被虐趣味とかではありませんよ?私のレベルが高くて防御力が痛みを緩和するのですがその刺激が電気マッサージみたいになって気持ちよくなってしまっていて……」
「わ、わかった。わかったから句読点をつけろ」
休むことなく言葉を紡いでいくあたりに必死さを感じた。
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