第19話『珍しい魔獣』
狼にクマ、時々ウサギっぽい奴。スライムもいたが、アイツらは魔物であって魔獣では無いようだ。
人間に対しての敵対生物として一括りにすると、魔獣や魔物を含む生物たちは親と言う概念は無く、空気中に存在する『魔素(魔力という名でエネルギー化する前の物質)』が体の全てを構築し、意思を持つようだ。
魔獣には体内に魔石があるが、魔物には無く、核や心臓が動力源のようだ。
そんなちょっとした知識を得た俺は、魔獣を好んで倒している。
理由は簡単。魔石が欲しいからだ。
魔石は俺の武器である銃の動力源となっており、火薬代わりだったりで重宝する。
ここでちょっとした疑問なのだが、この銃の素材は魔獣から得た骨であり、動力は魔石。この銃はほとんど魔獣だと言えるのだろうか?
「セトラさん! こっちに珍しい魔獣がいますよ!」
「珍しい? どれどれ……えっ」
今日も今日とてアイリスと狩りをしている。
一人で狩りをするより断然楽しいが、終わった後にアイリスから色々貢がれるのは少し困っている。
そんなアイリスが何かを見つけたらしく、側によって見てみると、大きな蛇がいた。
首が二つあり、その体全体を支える腹の部分は平べったくなっており、鱗の一枚一枚が硬質に見える。
「アフエラ、解析頼む」
少し前に使った『鑑定』と言う機能とは別に『解析』と言う機能がある。鑑定では確定した性能が見え、解析では予想できる脅威や能力の測定ができるそうだ。
〔了解しました。……データが取れました。魔獣『デグルサーペント』です〕
そう告げたアフエラの画面にはさらに詳細に表示されたデータが乗っかっていた。
特殊能力:『ポイズンブレス』『スタンファング』
うへぇ……でかい毒蛇とか殺意が高すぎる。早期決着が鍵だな。
「よし、アイリス。お前は出るなよ。毒に噛まれたりしたら大変だから、俺が撃つ」
「ふふ、大丈夫です! 私も魔法が使えますから!」
剣術だけじゃ無くて魔法も出来るとか……圧倒的主人公感。
「じゃ、じゃあ一緒に行くぞ。味方撃ちとかにならないように、ラインは合わせるぞ」
これはゲームでは無く現実。射線上に人がいれば誤射の可能性がある。横並びになるのが正解だ。
416に照準器が無く、精密な射撃が難しいため、ある程度のダメージ稼ぎの後、精密な射撃はベレッタに任せることにする。
「レディ」
俺の合図とともにアイリスも構える。
俺も416を構えてセーフティを解除し、銃弾マークのピクトグラムに矢印を向ける。これでセミオートの射撃が出来るようになるのだ。
ゴーとも言わずに同タイミングで駆け出す。
サーペントも駆け出したこちら側に気づいたらしく、シャーーッ! と牙を見せつける。
威嚇行動は戦闘拒否の現れでもあると俺は見ている。つまり、先制攻撃を譲っているようなものだ。
臆さず、怯まず、遠慮なく。
俺は引き金を引いた。
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