第12話『アイリス』
「えぇっと、改めまして、お会いできて光栄です、セトラさん。私は『アイリス・フェトミア』です。昔みたいにシロップって呼んでいただいても構いません」
「い、一応アイリスって呼んでおくな? 俺は『水瀬虎寅』だ。あだ名としてこの世界でも通じそうだし、セトラでもいいぞ」
お互いに自己紹介をして、笑みを交わす。
セトラという名前は苗字の尻と名前の頭を取っただけだったのだ。
「えへへ……セトラさんの本名……♡」
「怖い……。あ、あと、この浮いてるタブレットはアフエラって言うんだ」
〔よろしくお願いいたします〕
「ずっと気になってましたけど、このi◯adはどうやって浮いてるんですか?」
「これ一応オーパーツってやつらしい。だから地球の某タブレットとは訳が違うぞ」
うん。iP◯dやらiPh◯neやらの名前はダメな気がする。
他の人には内密にして欲しいと言い、俺たちは一度ギルドへ戻ることにした。
ギルドへ着くとアイリスは酒場の席につき、俺を手招きした。
それに従って席に座ると、周囲の視線が急に集まった。
ひえっ……怖すぎる。
「セトラさん。こちら、貢物です」
「ミツギモノ?」
急にアイリスがお辞儀と共に一本のナイフを取り出してきた。
「オリハルコンでできたナイフです。受け取ってください!」
「なんでだ? オリハルコンってレアな金属だろ? そんな高価なものをどうして……」
「投げ銭コメントだと思って受け取ってください!」
そう言えばこの人、配信始まってすぐに五千円ほのどチャットを送ってくる人だった。毎回始まってすぐに五千円を出すものだから、色々怖かった。
「えぇっと……わかった。今回は受け取るが、流石に次からはやめてくれ。なんだか周りの視線が恐ろしい」
なんでこんなに注目が……アイリスが美人だからか? 嫉妬の目線は人を殺せるなんて聞いたことあるが、マジかもしれない。
「そんな……私はセトラさんの配信を見ながら貢ぐことに命を燃やしてきたのに……。こ、これからも受け取って欲しいですぅ……」
ナニソレ怖い。これが貢ぎマゾってやつか……。
愛は嬉しいが歪むと恐ろしいな。
そんなやりとりをしていると、二つほど離れた机からイケメンが歩いてきた。
「アイリスさん? 珍しいですね、ギルドの人ではなく、他の人とお話をしているのは初めて見ましたよ」
「……誰? 私とセトラさんの間に入ってくるなら容赦しませんよ?」
「誰とはあんまりでは無いですか? 覚えてませんか? あなたに愛を伝えた者ですが……」
「思い出しました。それでは、さようなら。……セトラさん、今までの謝罪も含めて貢がせ続けていきますからね♡」
無表情でイケメンから目を逸らして俺に向き直ると、にへっと笑ってそんなこと言い始めた。コイツの感情どうなってるんだ……。
「お前……僕のアイリスさんに何をしたんですか……っ!!」
そう言うとイケメンは俺の胸ぐらを掴んで引っ張った。
何この世界!? 胃もたれするような愛情表現しか出来ないのか!?
「決闘だ。お前を殺す」
もうやだ宿帰る……。
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