第10話『死を求めて』
私の名前はアイリス・フェトミア。元日本人の転生者だ。
なぜ私が、違う世界でまた『生きてしまっている』のだろうか……。
私は、大好きな人を殺してしまった。
直接では無い。しかし、私のせいだ。
私が……あの人に……セトラさんに「VRでゲームをしてみて欲しい」なんて言うから……私が「最初は中古でもいいんじゃ無い?」なんて言うから……。
VRを使ってでは初配信となったあの日、セトラさんは死んでしまった。調べたところ、死因はVRゴーグルのバッテリーからの漏電によって脳を焼き切られてしまったらしい。
現実を受け止められなかった。私が何もかも悪くさえ感じた。大好きで、私の生きる意味だったセトラさんの配信は、私のせいで亡くなってしまった。
罪滅ぼしのため、私は自分の腹を斬った。
セトラさんが感じたであろう痛みよりも何倍もの痛みを感じて死にたかった。
幸か不幸か、私は異世界で生まれ変わり、只今十五という歳を迎えた。
二歳の時に前世を思い出し、そこから約三年。私は絶望に浸っていた。
大好きな人を殺した私が、なぜのうのうと生きているのか。
しかし、同時にチャンスだとも思った。
『もっと残酷な死に方ができる』
五歳の頃、私の生きる目標は死ぬこととなった。
この人生では大切なものをいっぱい作って、沢山の名誉を得て、失いたく無いものも沢山作って、それで、最期は悲惨な他殺を願った。
冒険者ランクは最高のAを取得し、この町で一番高い剣を買いこの町で一番高い盾も買った。難しい魔法を学び尽くし、冒険者の中では『孤高の魔導剣士』と言う呼ばれ方すらされた。
羨望を受け、時には異性からの告白も受けたりした。
しかし、いくら大切なものをいっぱい作るとは言え、人間関係は絶対に持ちたく無かった。私の事情で他人を悲しませたく無かったからだ。
出来る限りの『大切』を抱えて、私はデグルの森へとやってきた。
あぁ……死にたく無いなぁ……。
死にたく無い。でも、死ぬことが私にとっての正解だ。
目の前に現れたのはデグルベア。
Dランクの冒険者に討伐が推奨された、私にとっては雑魚同然。そんなやつに殺されるのは、屈辱でもあった。
最初に突進をくらい、私は無抵抗のまま跳ね飛ばされて地面に横たわる。デグルベアは追撃、そしてトドメとなる鋭い牙を私に向け……。
パァァアアン!!
銃……声……?
スマホ越しに散々聴いてきた音が、鼓膜を震わす。
デグルベアは頭から血を吹きたらしながらよろけ、何者かがその頭を蹴り飛ばして退ける。
パァァアアン!!
再度銃声。デグルベアに蹴りを入れた人は、何か懐かしいボロボロの布切れを纏う青髪の男性だった。その男性はデグルベアの脳に命中するように白い拳銃を発砲していた。
「大丈夫か!? 怪我は無いみたいだな?」
デグルベアが死んだことを確認すると、その男性は私に駆け寄ってきた。
涙が出た。言わずにはいられなかった。
「ごめんなざい……っ!!!! セトラさん……っ!!!!」
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