第8話『換金』
肉体的な疲労はなかった。しかし、生肉を食うと言う精神的な疲労があったため、今日は帰ることにした。
「うぅ……気持ぢわるい……」
〔生肉はお勧めしませんよ〕
「最初に食えるって言ったのお前だろ……?」
〔私にそのようなログは残っておりません〕
「このやろ……」
腹痛に悩み猫背になる今日この頃、タブレット端末であるアフエラに噛みついてやりたくなったが、グッと抑えて帰路に着く。
帰る場所は王都『ミドリナ』だ。俺は今、そのミドリナに隣接した森の『デグル森林』というところで狩りをしていた。
「肉……骨……魔石……これ売って一日は凌げるのか? 前回肉だけ売ったら一泊ちょい分の料金だったが……」
〔今回は魔獣の種類も数も異なります。売却額は異なるでしょう。それと、魔石の売却はお勧め致しません〕
「何でだ?」
〔銃に魔力貯蔵庫(マナプール)として魔石を使用しております。使っていればそのうち魔力貯蔵庫も底をつき、砕けてしまうでしょう。そのため、魔石も貯めておく方が良いです〕
無限じゃないのか……。つまり電池みたいなエネルギー源ってところか。一応生物の心臓みたいなものだから電池扱いするのは道徳的にどうかと思ったが、個人的にこれ以上の使い道が思いつかないので感謝しながら使うことにした。
ミドリナに着き、冒険者ギルドへと寄り、素材を売却した。ちなみに、人の目があるときは、アフエラを手で持っている。流石に浮いてる物体は不自然だ。
「えぇっと……ミナセ様? こちらはお一人で……?」
「そうですね。デグルウルフの骨と肉ですが……買い取ってもらえますかね?」
「買い取りは可能ですが……こちらはDランクの冒険者様でないと討伐が難しいんです。まだ冒険者登録をしてから日も浅い方が狩って来れるような魔物ではないと言いますか……」
これヤバいか? 武器見せてなんて言われたらどう説明すれば良いのか……。
「昇格試験に挑戦してみませんか? ギルドマスターには私からDランクを推薦しておきますので」
よかった。変に踏み込まれたら隠すの大変だからな。
「じゃ、じゃあお願いします。ちなみに昇格試験って何するんですか?」
「Dランクですと、デグルベアの討伐になります。魔石を入手することが条件ですね。不正防止のためにスタッフも同伴させて頂きますが……」
「えっ……あーうん。そうだよなぁ……」
デグルベアか。木の棒で倒した経験はあるが、あれはマグレだと思った方がいいだろう。あのときはゲーム感覚で恐怖心はどこにも無く、ほぼほぼ特攻のそれだった。
今の状態では銃無しだと命の危険がある。前回のように上手くはいかないだろう。
しかし、銃のことを他人に知られてもいいものか……。
「ちょっと考えてきます。それでは……」
一旦、宿泊施設でアフエラと相談しよう。俺一人の判断じゃあ怖い。
「あの……お金受け取り忘れてますよ?」
「あぁやべ、うっかりしてた」
受け取ったお金は九〇〇〇Gだった。
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