第7話『トリガーハッピー症』

 マガジンを銃本体へと差し込み、セレーションを掴んでカチャンと言うまでスライドを引っ張る。セーフティを指で確認し、引き金に指をかける。フロントサイトがリアサイトの間に水平に重なるよう標的に構える。

 狙うは頭。

 基本、心臓か脳を狙うべきだ。

 しかし、今の標的は二足歩行の狼だ。それも相手は三体。一発一発の弾丸に重みがある。体の構造が人間と違うことだってあり得るため、心臓を狙うのは無しだ。しかし、脳なら基本眼球付近に位置するため、大抵の生物を相手にするなら頭を狙うのが良いだろう。

 自分の焦点は標準器のまま、横目で相手の足を見る。

 基本、攻撃など勢いに乗せた行動は足から動き、踏み込みの動作がある。機敏に動こうとすればするほど踏み込みの際の自由は奪われる。

 タイミングを合わせて引き金を引く。

 後付けの部品、『デグルベアの魔石』から魔力が供給され、銃に内蔵された魔法陣『硬質化』と『爆破魔法』が作動する。


 パァァアアン!!


 爆発魔法の反動で銃弾が飛び、同時にスライドが後退する。銃弾は狙い通りに脳を貫き、スライドの後退で自動的にリロードがなされる。これをショートリコイルと言うのは専門的な話かもしれない。

 次弾装填の完了を確認するや否や、次に狙いを定め、撃ち抜く。連続発砲は反動を抑えるのが難しくなるが、そんな弱音は吐いていられない。

 正しい姿勢、そして落ち着いた動作が必要だ。

 リコイルの完了したベレッタの銃口を、最後の狼に向ける。その最期さえ呆気なかった。


「良い……。引き金を引く時の重み……発砲時の反動と破裂音……。良い……」


 心臓から送られる血液がいつもより多い。波打つ心拍を全身で感じている。


〔マスター、興奮しているところすみません。トリガーハッピーには気をつけてください。それと、発砲音を聞いて他の魔獣が集まってくる可能性があります。警戒をしてください〕

「お、おう。俺はトリガーハッピーにはなっていないぞ……」


 俺の脳裏にとある配信の時に流れてきたコメントが浮かんだ。


——この人実際に銃持ったらどうなっちゃうのかな?w


 至って冷静だったぞ俺はっ!!

 何だか殺人鬼扱いされた気分だ。そんなつもりはなかったんだが……。


「アフエラ、魔石の回収と必要そうな素材の回収頼めるか?」

〔了解いたしました。……『デグルウルフの魔石』三つと、『デグルウルフの肉』と『デグルウルフの骨』を回収致しました〕

「早速で悪いんだけど、お肉を食べられる状態にして欲しい」

〔また生肉を食べるのですか? マスターは悪食だったのですね〕

「いや、できれば焼いたりしたいが、魔法の使えない俺はこの場でポンと火は出せない。だから仕方なくだ」

〔そうですか。……出来上がりました〕


 デグルウルフの肉は物凄く硬かった。

 前回はそこまで気にならなかったが、少し余裕ができた今、生肉を味わうと胃袋が拒んで吐き出そうとする。

 なんか気持ち悪い……。

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