第6話『冒険者登録』

 宿泊施設から出て、あることに気づく。

 歯ブラシ代、宿泊代で持ち金がすでに無い。さらに言えば食料も無い。

 一刻も早く生活基盤を整えねばならない。

 とは言え、俺は無力じゃ無い。アフエラ特製の拳銃『ベレッタ92FS-MC』がある。

 異世界で定番の魔獣や魔物と言ったモンスターを倒してお金を稼ぐことは容易なはずだ。

 そうとなればアフエラに銃弾を作ってもらうべきだな。


「アフエラ。これからモンスターを狩ろうと思うんだけど、銃弾に必要な石ってどれくらいあればいいんだ?」

〔マスターは本当に計画性が無いのですね。銃弾を作るより先に冒険者ギルドに寄ることをお勧め致します。魔物の素材は冒険者ギルドの方々が買い取ってくれることが定石だと認識しております〕

「ぐっ……確かにそうだな」


 バカにされた感が半端ない。落ち着け俺、ゲーム中に一度たりとも台パンなんてしたことないじゃ無いか。タブレット端末にパンチしたい衝動は抑えるんだ……。

 深呼吸をして冒険者ギルドなる場所に足を運ぶ。そう言えば昨日もここ来たっけな。

 カウンターにいる女の人に話しかける。


「冒険者になりたいんですが……登録ってできますか?」

「は、はい……冒険者登録ですね? それではこちらに記入を」


 目を逸らしながら話されてる。ふっ……直視できないほどイケメンだったか。※違います


〔ピロン♪〕


 抱え持っていたアフエラが通知音のように短く音を鳴らした。

 何かと思って見てみると、画面に文字を表示していた。

 マスターの服装、若干引かれてますよ。と。

 こ、この人もボロのロマンが分からないだと……!?



「えっと記入記入っと……あれ?」


 何で俺、知らない文字を読めて書けてるんだ……?いや、都合が良いには良いんだが……。


「確認いたします。ミナセ・トラノブさんでよろしいですね?」

「はい」


 出身国とかの記入は求められず、名前と性別、そしてギルドの依頼はどのようなものを請けたいかなど、仕事以外の事は求められなかった。


「仕事は主にモンスターの討伐とモンスターから得た素材の売却……本当に大丈夫ですか?」

「えっと……はい? 大丈夫ですけど……」

「危険の伴う仕事ばかりのようですが、もしもの時、ギルドは一切の責任は負いません」


 確かにそうだった。地球の感覚で言えば猛獣退治なのか。いや、それよりも危険な仕事なのだろうが、そのうち慣れるだろう。


〔ピロン♪〕

 服のセンスも計画性も無いマスターが心配です。


 ビー・クール。そう、落ち着け俺。いくら何でもアフエラの作った銃でアフエラを撃ってやるなんて考えは良く無いぞ。


「大丈夫です。ちなみに冒険者登録すると良いことってあるんですか?」

「えっと……あなたの場合ですと、魔物の素材を需要に合わせて少し良い値段で買い取らせていただいたり……あとは掲示板にある依頼をこなしていただくと、依頼主からの報酬が出ます」


 こうして、Fランク冒険者の水瀬虎寅ことセトラは冒険者という職に就いた。

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