第14話 エースの居ない戦い①

 激闘から数日、白狐は大幅なD指数の上昇による反動で暫くDr.アンフェールの研究室で眠っており、傑もサタスの修復や彼自身の傷を癒すために戦闘には参加せず、地獄で他の仲間達の戦闘をモニターで観察、指示やアドバイスをする等、サポーターとして参加していた。

 夢魔や橋姫、童子は少しずつ戦闘の経験値を積んでいき、単体でも天獸と戦闘することが可能となっていき、まだ戦闘経験が少ない三吉と亜久良は傑のアドバイスを聞くことで天獸との戦闘がスムーズに行えるよう上達していく。

 その姿を見ていたアンフェールはニヤリと微笑むと「やはり間違っていなかったか・・・」とボソッと呟いた。


 天使ウリエルが去ってからの数日間、地上に現れるのは通常種の天獸のみ、人間が天獸になる様な気配はなく、傑、白狐が戦闘に参加できない今、戦闘経験の少ない者達の戦闘能力向上のために5人出撃を繰り返していた。

「さっすがこのsin僟隊で随一の戦闘センスと戦闘経験を持っている傑さんですこと。教えるのも上手いし、言ったとおりにやるとほんとそのまま敵を倒せるわね」

 橋姫はおちゃらけ風に傑を褒める。

 激闘を二度、三度と乗り越えた仲だからか傑の次にパイロットとなった3人は以前よりも打ち解けているかのように思えたが・・・。

「お腹空いた~、帰ったら美味しいご飯が待ってるかにゃ~?・・・どうしたの?夢魔ちん?」

 コックピットでぐで~となっている童子がモニターに映っている夢魔に話す。

 浮かない顔をしていた夢魔だったが、童子の声を聴くと我に返ったように「え?う、ううん、な、なんでもないよ・・・?」と慌てて返答した。

 5人は地獄へと戻っていき、天獸が出現するまでの間、しばしの休憩を過ごす。


「ふん、僕は君の指示を聞かなくてもあんな連中はすぐ倒すことができる」

「もうずっとここでグダグダしてたいな~、まぁ、あの化け物倒すのはゲームっぽくて楽しいけど・・・」

 夢魔、童子、橋姫、白狐より後にsin僟隊へと合流した亜久良と三吉はなかなかに難しい性格をしており、まだ話には馴染めずにいた。

「だいたい、どうして私のsin僟は後方支援型なんだい、傲慢ってついているからには一人で戦えるほど強い機体じゃないのかな、そもそもどうして私が乗る機体は傲慢なの?私のどこが傲慢に見える?」

 亜久良のsin僟に対する不満が止まらず滝の様に次から次へと口から出される。

 その光景を見た全員が(いや、どう見たってそこだろ)と心の中で突っ込んだ。

 三吉は戦闘が終わるとすぐ寝っ転がってゲームをしだす。

「三吉もとりあえず今日の戦闘を振り返って次の戦闘時にはどういう風に立ち回ればいいか考えといてくれよ。いくら戦闘経験のある俺だからって他のsin僟の性能を全部把握しているわけじゃないからな」

 と傑は伝えるが、空返事だけして三吉はゲームに没頭する。


 一体いつ天使達が地上に降りてくるかもわからないこの状況で、sin僟隊のメンバーをいち早く戦闘慣れさせるべきか傑とDr.アンフェールはずっと考えていた。

 今この中で一番強いのはD指数65%を引き出した白狐である。

 白狐にその数値まで引き出したコツを聞くことができれば天使達に勝てる見込みはあるのだろうが、その当の本人は反動で眠っている。

 戦闘経験がある傑でも最高は前回、人間が天獸へと変貌したときに戦闘で出した34%である。

 白狐は一体何を強く思ったことでそこまでの数値を出すことができたのか二人は分かっていなかった。


 2人が悩んでいるとブザーが鳴り響き、天獸が現れ街を破壊している映像がモニターに流れる。

 束の間の休息も取れず傑と白狐を除くsin僟隊はそれぞれのsin僟に搭乗し天獸を殲滅しに地上へと出る。

 だがしかし、モニターに映っているのは通常種の天獸だけではなく、前回の戦闘に現れた炎を纏った天獸など上位種が複数確認される。

「こいつらは以前戦った奴らと同じタイプの奴等か・・・。なら結局は私達が戦っても造作もないってことだな!とにかく私は君達の機体をパワーアップをするとしよう!不服だがな!」

 亜久良の乗るsin僟・ルシイドは背中に生えている羽から赤い粒子が現れそれぞれの機体の中へと入っていく。

「毎回思うんだけどその粒子って何が入ってるの?普通ロボットって強くなるとかなくない?ゲームの世界じゃあるまいし」

 橋姫が疑問を問いかけるが亜久良は「私が知るわけないだろう!」と一蹴、三吉は「でも俺らが今やっているのも対してゲームと変わらなくね?それがリアルであるってだけで」と冷たい返答をする。

 それに対し、橋姫は「ちょっと!傑!何とか言ってよ!」と傑に助けを求めるが「お前達!戦いに集中しろ!そいつの強さは並じゃないぞ!」と真面目に返答した。

やがて、ルシイドが流した粒子によりsin僟達の攻撃力が上がる。

各々は自身の感情を昂らせながら、コックピットのレバーに力を入れしっかりと握りしめた。

そして、彼女らは傑の言葉に気持ちを切り替え、眼前の天獸との戦闘に臨む。











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