第12話 覚醒した強欲②
目が覚めるとそこは自身が今まで居た場所とは景色がガラリと変わっていた。
薄気味悪く肉壁?のようなモノが際限なく広がっている。
「な、なんだ……、ここは……。」
突然のことに白狐の脳内は混乱していた。
それもそのはず、先ほどまで自身の部屋でいたにもかかわらず、気が付くと見知らぬ気味の悪い場所へと飛ばされていたのだから・・・。
(ここは一体どこなんだ……?俺の目がどうかしてしまったのか?)
瞬きや目を擦ってみるが景色は変わらない。
夢を見ているのかと頬を抓っても痛みを感じ、俄かには信じ難いが今見ているこの景色、この状況は現実であることを認めざるを得なかった。
(こんな漫画やアニメみたいなことが本当に起こるのかよ。)
混乱している白狐の視線に人影が映る。
「あれは誰だ?俺の他に人がいるのか?」
白狐はその見えた人影の後を追う。
するとそこには、大きなモニターに映し出されているロボットを観ている自分と同じ人間の姿。
そう、今共に戦っているsin僟のパイロット達だった。
「そうだ、俺はあそこで彼女たちに出会ったんだ。そしてお前にも……神嶌……!」
天使との戦闘中だった白狐の身体は既に限界を迎えていた。
「友達と思っていたのは俺の勘違いで、親は偽りの生活を送っている……全て俺が望んでいた生活とは違う。俺が望んでいたのは普通に笑って過ごすことができる心の底から楽しむことができる人生だったんだ。こんな理不尽で最悪な人生じゃない!」
白狐は力づくでボロボロの身体を奮い立たせようとする。
骨は軋み傷口からは血が噴き出し、これ以上戦闘は不可能かと思われていた。
「神嶌……なんでお前は俺以外の人からそんなに信頼されてるんだよ……。何がお前をそうさせてんだよ。俺に何が足んないんだよ。教えてくれよ……。」
「こ、これは!」
Dr.アンフェールがモニターに映し出される数字に驚愕した。
「彼のD指数は今まで25%前後だった。だが今はどうだ!65%だと⁉あんな戦える状態ではないのにだぞ!人間とは恐ろしい存在だ……。だが、確実に面白い存在であることがわかった……。」
「俺はお前に勝つぞ。神嶌。勝って、皆の信頼を俺が勝ち取ってやる。その為に俺は今ここで負けるわけにはいかないんだよ!」
その言葉に傑は聴いてか聴かずか笑みを溢し、橋姫は「信頼を勝ち取るって……。」と少し呆れてはいたが心を燃やす。
『人間風情が。その前にこの僕がお前を燃やし尽くしてやるよ!』
槍を構えたウリエルはその切っ先に高熱の球体を生み出した。
段々と膨れ上がるその球体はやがて縮小していき消失すると、音もなく一瞬にして元の球体の10倍以上の大きさへと膨れ上がる。
熱はその球体に比例して周囲の建物や地面を溶かしていき辺りは灼熱地獄と化す。
『これで終わりって訳じゃないぞ?お前にはこの灼熱よりもっと苦しい
ウリエルは槍を天高く掲げると円を描き槍先にある灼熱の球体を白狐に向け飛ばす。
『灼熱の
高エネルギーを蓄えた球体は回転を加えながら真っすぐに飛ぶ。
周りの瓦礫は回転のエネルギーに巻き込まれてかはたまた、その熱に侵されてか塵と化し消えていった。
『さぁ、お前にこの技が止められるか!!』
———「ほう、あの熱であればさすがの私が開発したsin僟でも身が保たんだろうな……。さて、どうする、我喜屋 白狐……。」
「俺が堕ちたところはどこだと思っている。地獄だぞ?」
白狐が発した言葉にウリエルの顔色が変わる。
「お前が出したその程度の熱、俺にとっちゃサウナとなんも変わりゃしねぇよ!!その技、俺がそっくりそのまま盗んで《パクって》やるよ。」
グリモンの右手が大きな吸引機へと変貌しその灼熱の炎を吸い込もうとする。
あまりの大きさに手こずる白狐のグリモンであったが左手も同様に吸引機に変え両手で吸い込みを始める。
コックピット内は熱が伝わりアラートが頻回に鳴っている。
流石の地獄で開発されたロボットであっても限界値は存在しているらしく、避難警告までもが表示された。
(ここで逃げたら男じゃない!それに、アイツに、神嶌に負けてたまるかよ!!)
———「おぉ!白狐のD指数が70%に達しようとしている!アイツの傑に対する思いは並ではないと言うことか!これはいい情報を得た!この数値ならば
「うぉぉぉぉぉ!!」
「傑!!白狐がヤバそうよ!!!」
橋姫は天獸の群れと戦っている神嶌 傑に一人で天使と戦っている白狐の事を伝える。
「アイツなら大丈夫。逆にアイツを心配したら俺が怒られちまう。」
そう言って傑は天獸との戦闘に再度集中し始めた。
「白狐……。絶対生きて帰ってきてね……。」
「俺は絶対に負けない!アイツに神嶌に勝つまでは絶対に!!頼む、グリモン!俺に力を貸してくれ!」
Dr.アンフェールの前に映し出されたモニターにはD指数70%の数字が映し出されていた。
燃える灼熱の球体は徐々にグリモンの両手に吸い込まれていき、やがて辺り一面を熔かす程の熱は綺麗さっぱり無くなった。
『な、なに……。僕の灼熱の
「それじゃ、そのままそっくり……いや、倍にして返してやるよ!!」
グリモンの両手から放出された灼熱の炎はsin僟の中にあったエネルギーも加えていた為、大容量の火炎放射器となって炎の天使、ウリエルを襲う。
いくら炎を使う天使と言っても悪魔のエネルギーも含まれるその炎は毒性もあるため耐えることは不可能だった。
自身が発した灼熱の炎それをその身に受けたウリエルは瀕死の状態となっており半身灼け爛れていた。
『くっ、に、人間風情が……。この僕を本気で怒らせたみたいだね……。き、今日はこの辺にしといてやるから、今度会ったら容赦はしない……。』
天界の門が開くと、ウリエルはその門へと消えていった。
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