第10話 大天使・ウリエル
蒼天會の教祖・雁恍寺 豪舌は目の前に現れた天使によって、信者共々天獣に変えられてしまった。
自我を失った彼等は眼前の傑達Sin僟隊へ突撃を行なう。
「ぐ、ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
「おい、マジかよ、人が天獣になったぞ!」
「そんなこと言ってる場合かよ!来るぞ!」
「ど、ど、ど、どうしますぅ~!!!」
混乱する橋姫、白狐、夢魔に傑が言う。
「落ち着け!」
迫りくる天獣に傑の機体・サタスは重い一撃を打ち込む。
カウンターをくらった天獣は体を大きく仰け反りそのまま後方へと引っ繰り返るが次から次へとその更に後方から天獣が襲ってくる。
なんとか一人で対応する傑であったが数に限度がある。
殴っても殴っても立ち上がる31体の相手に心身ともに疲弊していた。
「何を躊躇っている」
それは、今までで初めて聞く声だった。
いや、厳密には聞いたことはあるが、今まで聞いたことのない冷たさをを持った声。
一瞬、自分の心の臓に氷水が流し込まれたようなそんな冷たさ。
「彼等はもう手遅れだ」
その冷酷な声は淡々と傑に向かって発す。
「彼等は手遅れ。何もすることはできない。君達も、私も」
その声の主はDrアンフェールだった。
今まで話していたようなどこか温かみのある言葉ではなく、鋭く尖った冷たい手のナイフの様な、そんな声。
「こういえばわかるか・・・」
そして彼は言う。とどめの一言を。
「彼等を殺せ」
Sin僟隊のメンバーは皆その言葉に凍り付く。
「そ、そんなことできるわけないでしょ!彼等は人間だったのよ!」
「そうだ!これじゃ俺ら殺人犯と一緒じゃねぇか!」
橋姫と白狐はアンフェールに異議を唱える。
「だが、彼等はもう人間じゃない。君達の敵。
ここで、傑は再認識した。今我々と話しているのは自分達と同じ人種ではないと。
悪魔と呼ばれる存在であることを。
それと同時に、目の前にいるのは自分達を理不尽に地獄へと突き落とした存在の一人であり、自分達が戦っているのはその仲間になった元人間だということを・・・。
「わかった、アンタの言うとおりだ。今俺達が戦っているのは地球の皆を守るためだ」
その言葉に橋姫と白狐は口を揃えて異議を唱える。
「正気かよ(なの)!?相手は今は化け物かもしれないがそれまでは人間だったんだぞ!!それを俺達(私達)の手で殺すことなんて出来ねーよ!」
「それでもやるしかないんだ!でないと、俺達だけじゃなくてこの世界が終わる!それでもいいのか!」
「そ、それは・・・」
二人は一瞬沈黙し、白狐が口を開く。
「なら、お前一人で倒しゃーいいじゃねーか!俺は御免だね!人殺しの手伝いは!」
そう言うと白狐は少し離れた場所へ移動し、ウリエルの方へsin僟の指をさす。
「俺がお前を倒してやる」
そう言われたウリエルの表情はどこか嗤っている様だった。
蒼天會の祖・雁恍寺 豪舌を筆頭にした蒼天會の天獸軍団は孤立した傑のsin僟を中心に囲み臨戦態勢をとっていた。
「この数の敵ぐらい俺一人で何とかしてやる!来い!」
数十体の白き獸は中央に立つsin僟へと一斉に突進する。
「
拳骨の部分から3本の鋭い刃が出現しサタスは両腕をクロスし前傾姿勢をとる。
「どっからでもかかってこい!俺が
化け物達の雄叫びが響き渡り周りのビル群が激しく揺れる。
襲ってくる純白の獸をサタスの鋭く黒々とした爪が切り裂き真っ赤な雨が頭上に降り注ぐ。
「オラオラオラオラオラ!!そんなもんじゃねぇだろ!もっと来いよ!」
「ねぇ、ちょっと性格変わってない?」
「そ、そんなことより、早く傑さんを助けに行きましょうよ!」
戦闘で性格が豹変した傑に戸惑いながらも橋姫と夢魔は傑の援護に向かった。
「お前を倒せば、これ以上、人があんな化け物にならなくて済むのか」
白狐は目の前に浮かぶ天使に向かって質問をする。
「そうだねぇ、僕を殺したらその分はならなくて済むんだろうね」
ニコっとしたその笑顔にはどこかどす黒く闇深いオーラを纏っていた。
白狐の
拳法のような構えを取り、「かかってこい」と言わんばかりにウリエルへと向けた掌をクイっと何度か曲げる。
初めて、敵と1対1で相対することに対し、白狐の心臓は鼓動が早まっていた。
(これが俺の初戦の相手かよ・・・。見るからに只者じゃないのが伝わるぜ・・・。だけど、傑は
白狐の心は決まった。
空からは一滴の雨が落ちてくる。
それは、
その雨が、ゆっくりと地面に落ちピチョンと弾け飛ぶ。
次の瞬間。
ウリエルは左手に灯している炎から杖を生み出し、白狐へと向ける。
「さぁ、愚かな人間よ。神の行いに背いたことを悔いるがいい。
杖の先から渦状の炎が出現し、Sin僟を取り囲んだ。
コックピット内にまで高温の熱が襲い掛かる。
「ぐ、ぐああぁぁぁぁぁ!!!」
白狐の叫び声が操縦席に響き渡る。
(な、なんだよ、これ、俺、手も足も出ねぇじゃねぇか・・・。俺と
、どこが違うんだよ。あんなに大口叩いて結局死ぬなんて・・・いや、死ぬわけにはいかない・・・。俺がやりたいこと全部やりきるまで、絶対に死ねない!!)
その時、グリモンの目が光輝いた。
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