第8話 Sin僟隊
「―――と言うことで今回から新しくSin僟のパイロットとなる―――」
アンフェールの言葉を遮り自信満々に亜久良が名乗る。
「千方 亜久良。17歳。明桜高校出身だ」
彼の言った高校名にどよめく。
「明桜ってあの偏差値90の超超超名門校じゃないの!」
「あぁ、そうだ」
どうりで、凄い態度がデカいわけだとその場にいる数人は思った。
「ゴホン、でこっちが八瀬 三吉。彼には怠惰のSin僟・アスロトに乗ってもらう」
白髪おかっぱの少年はこくりと頷くだけで特に発言もしない。
そしてアンフェールは続ける。
「亜久良は傲慢のSin僟・ルシイドのパイロットに任命だ」
こうして、やっと7機のSin僟のパイロットが揃った。
「そして君達には、Sin僟隊として活動をしてもらう」
「Sin僟隊?」
唐突に言われたチーム名に傑は混乱する。
「そうだ、君達はこれから、Sin僟隊と言う名前で戦ってもらう」
先ほどと同じ言葉をそのまま繰り返すアンフェールに傑は「いや、だから何だよ、そのSin僟隊って!」とそのネーミングに不服を申した。
昔のロボットアニメであった○○チームや○○機隊の彷彿とさせるそのネーミングにパイロットの大半は否定的な意見だった。
だが、アンフェールの熱い説明、突如戦闘になった時に個人名を言う暇は無いなど、傑達も納得してしまう理由があったことから、チーム名はSin僟隊に気持ちが乗らない部分もあるが決定した。
「Sin僟隊って言うぐらいなんだから、チームなんでしょ?リーダーが必要じゃない?」
橋姫の言葉に皆が「確かに」と納得する。
そして、意味深な様にアンフェールは口を開く。
「やはり、チームにはリーダーが必要だよね」
その言葉に男性陣二人に電流が走る。
「リー!」「ダー!!」
―――結局、Sin僟隊のリーダーは話し合いで傑に決まった。
理由としては、一番最初に天使やその天使に付き従う天獣と戦闘をし、戦闘経験があり、人類を守ろうとしてくれた第一人者であるということだった。
「それで、どうするんだね、隊長。我々は何をすればいい」
来て早々にやる気満々で、亜久良が聞く。だが、そこにはどこかリーダーになれなかった不満らしきものも混ざっていた。
少し困惑する傑にアンフェールが口を開く。
「天獣や天使が現世に来ない限り我々は何もできることは無い。悪魔は天国には行けず、逆に天使は地獄には来れない。だが、まぁ、堕天した天使は別だがな」
その言葉に亜久良は舌打ちをし自身が搭乗する予定であるSin僟・ルシイドが置かれている場所へと向かった。
「結局、その天使ってのが来ない限りはここは退屈なんだね・・・まぁ、別にいいんだけど・・・とりあえず眠いから寝ようかな・・・」
三吉は床に寝転がり、目を閉じる。
来てからこの異様な場所に物怖じしないその性格に、内心感動する。
「クッソ、なんなんだよ、アイツは・・・」
暫く時間が経ち、全員の気が緩んでいる時だった。
「皆!天獣が現れた!だが、今までのと少し形が違うぞ!」
アンフェールがモニターを見ていった。
そこに映っているのは天獣の様だが、形がところどころ違っていた。
一体は、翼の部分が赤く炎の様になっており、もう一体は氷の様な翼をしている。
口から発している光線も、炎と冷気と今までの天獣とは違っていた。
「まさか、上位種か。だが、他の天獣はいつも通りみたいだな」
傑は全員に声を掛け急いで出撃準備をする。
「皆!今までの天獣とは違う!用心してくれ!ま、私のSin僟と君達なら大丈夫と信じているがな」
そう言うと、アンフェールはゲートを開き7機のSin僟はそのゲートに飲み込まれた。
「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ」
「ぐごぉぐごぉぐごぉ」
ゲートが開かれた場所は天獣達の目の前だった。
「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ」
赤い炎の翼を持つ天獣はゲート目掛けて灼熱の炎を出す。
その先には傑が乗るサタスに直撃する。
「くっ、あっちぃ!!!なんだよ!こいつら!前の奴等より全然違う!」
傑は避けることもできず、灼熱の炎に燃やされ続けている。
が、暴食のSin僟・ベルグラによる吸引で、その炎は消され、なんとか事なきを得た。
「ありがとう童子!」
「なぁ、そのSin僟が攻撃できるようになったら一番最強じゃねぇのか?」
白狐がそう思ってもおかしくない程、ベルグラの性能は高いものだった。ただ、まだ、遠距離攻撃だけしか吸収できない点と、攻撃に関する能力や武器がないことから、万能ではなかった。
「取り敢えず、童子は奴らが放つ攻撃を吸収。白狐と橋姫は奴らをコピーして応戦、夢魔は、催眠効果で奴らを同士討ちさせてくれ!」
傑は今まで共に戦ってきた仲間の特徴を把握し指示を出す。
「で、そっちの二人の能力は一体何なんだ!」
初戦闘の三吉と亜久良に搭乗するSin僟の能力を聞く。
「僕のはなんか、相手の攻撃を跳ね返すってさ」
三吉が搭乗する怠惰のSin僟・アスロトは自身に向かって放たれた攻撃をそのまま相手に反射すると言うモノだった。
「私のは貴方達の乗るそのロボットを強化する能力らしい」
「要はバフ特化ってことだね」
三吉はゲーム用語を出して要約したつもりが逆に混乱させてしまう。
「ま、要は俺達の機体を強くしてくれるってことだろ!頼んだ!」
その言葉に応え、亜久良はルシイドを操縦し背中の翼を展開する。
その翼からは紅い波紋が現れ仲間のSin僟へと向かって行き傑達のSin僟は強化される。
そして、傑は炎の天獣と氷の天獣を肩部の棍棒で薙ぎ倒し、全滅させた。
―――かに思えた。
地面からもう一体天獣が現れ、岩のような肌から鋭利な形状をした岩を無数に飛ばしてきた。
もう少しで、傑の乗るサタスに直撃するというところで三吉のアスロトが現れ胸部から出したゲートに岩のナイフは吸い込まれていく。
そして、今度は広げた綺麗な不死鳥の様な羽根からゲートから現れ先程吸い込んだ筈の無数に岩が現れ、天獣へと向かって行く。
その隙を狙い、サタスは二本の棍棒を振りかざし脳天へと重い一撃がぶつかる。
こうして、新種の天獣を撃破することができたSin僟隊は自身達が得た力をその身に噛み締めるのだった。
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