第5話 D指数

 天使・ミカエルとの戦闘が終了して数時間後。

傑を始め五人のSin僟パイロットは自身の愛機と共に地獄へと帰還していた。

傑は初戦闘で終始戦闘していたこともあり帰還直後に意識を失い、そのままDrアンフェールの研究室へと運ばれた。

他のSin僟パイロット達は慣れない戦闘だったため、疲れた体を癒し、自身達が戦っていた映像を見返していた。


「これ、本当にあたしたちがやったんだよね……。」


「あぁ、嘘みたいだが、本当なんだろうな……。」


「こんなの見てたら、疲れてまたお腹が空いてくるのらぁ~。」


「あんたはさっきも食ってたでしょうが!」


「あの男の人、大丈夫なんでしょうか……?」


それぞれ、いろんな思いを張り巡らせる。


「ん?あんた、あの男のことが心配なのかい?」


 ニヤついた表情で、橋姫は夢魔に疑問を投げかける。


「あ、当たり前じゃないですか!そういうあなたは心配じゃないんですか!?彼は最初からずっと戦ってたんですよ!?」


夢魔は心配をしていないような発言をする橋姫に逆に疑問を抱く。


「いやいや、そういうことじゃないさ、あたしだって、彼のことは心配してるよ。だけど、あの博士?みたいな人が言ってたじゃないか、意識を失っているだけで心配ないって。」


「で、でも……。」


 心配をする夢魔の発言を遮るようにDrアンフェールが話を掛けてくる。


「その通り、彼は今緊張の糸が切れて眠っているだけだ。」


「でも、あんな血塗れだったんですよ!?心配しない方がおかしくないですか!?」


「大丈夫さ、彼は今メディカルボトルに入っている。あれは全身の筋肉の疲労を回復させ、体にできた傷も完全回復することができる優れもの。それに、D指数もほんの少しだが上昇させる効果もある。」


アンフェールは己の科学力を誇示するかのように鼻高く話した。


「D指数?」


皆が初めて聞く言葉に首を傾げる。


「そう、D指数。とりあえず皆にはこれを見てほしい。」


そう言うと、モニターの画面が切り替わり、傑の全身像とSin僟・サタスの画像が現れた。


「このD指数と言うのはDesirデザイア指数と言い、君たちの奥底にあるそれぞれの感情を数値化したものだ。例として挙げるなら、彼、カミシマ タケルのD指数の数値は彼の乗るSin僟・サタスの力の源である憤怒の大きさによって変化する。

彼が怒れば怒る程このD指数は上昇していき、彼のSin僟は力を増していく。だから、彼は先の戦闘中、多大なる戦闘力を発揮したのだ。まぁ、まだの天使には及ばなかったがね。」


「じゃあ、つまり、自分達の感情を爆発させればさせるほど強くなるということですか?」


夢魔は挙手をし、質問する。


「そういうことだ。だが、君達には君達のD指数が存在する。まずは、ハシヒメ、君は嫉妬だ。嫉妬するという感情が大きければ大きいほど君のSin僟・レヴィーは能力を発揮する。そして、ドウコ、君は暴食。つまり、食べたいと言う欲求が君が強くなるための感情と言うことだ。次にビャッコ、君のD指数の元は強欲。欲しいという気持ちが強くなればなるほど、君は強靭な力を手に入れることができる。そして最後に、ムマ、君は色欲だ。好きと言う思いが君を強くする原動力となる。」


Drアンフェールは一通り説明をし終えると高らかに笑った。

だが、高らかに笑う博士とは反対に、童子を除く


(彼のD指数はあの戦闘で20%だった。これで、あの天使を倒せないということはそれ以上の力を引き出せないと奴らは倒せないということなのか……。メディカルカプセルのD指数上昇値は大体、1%から1.2%、こんなペースなら天使を倒す前に人類が滅亡してしまう。この私がもっと完璧なカプセルを作るしか……。だが、それにも時間が必要だ。いったいどうすれば……。)


この7つのメディカルカプセルを開発するのに長い年月を掛けていた為、さらにここから改良を加えるとどのぐらいの長さになるか想像もできなかった。


頭を悩ませながら巨大なPCのような機械に近づき、改良する箇所、必要なパーツなどをそこに記入し、トータルの年月を算出する。


そこに映し出された数字は途方に暮れる程の年月を表していた。


(私のこの天才的な頭脳でもこの数字を覆す結果を出せる自信は無い……。彼等、人類の科学では証明できない可能性とやらに頼るしか……。何が天才科学者だっ!)


アンフェールは拳を握り、掌からは血が垂れ流れていた。


「そう言えばさ、あのタケル……だっけ?急に動きが変わったよね。なんかあのロボットが生き物みたいにさ」


「確かに!俺が昔見たロボットアニメの暴走状態みたいだったわ!」


「ウォホン、それもD指数が関係している。彼の怒りの感情が増幅し、彼のSin僟に組み込まれている装置に伝わる。そこでD指数を算出しその数値によって強化されていたのだ。ま、その分、反動もでかいがな。彼の傷の一部はその反動の分もある。」


「そんな!そんな危険なものにあの人を乗せたんですか!?」


「ちょっと、夢魔ちゃん。」


「それは、彼が望んだことだ。あの機体に乗り、天使と戦い滅ぼすことで生き返るってことを伝えると、自ら乗ると言ってくれたよ。」


「でも!こんな危険なものって伝えたわけじゃないですよね!」


夢魔がアンフェールの自身の胸を掴み涙を流していると、


「いいんだ、俺が望んだことだ」


そう言い、傑が5人の前に姿を現した。



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