第4話 暴食・色欲・強欲・嫉妬

 地面に落とされ、土煙が舞い上がる。

 激しい衝撃の連続にSin僟とは裏腹に傑の身体は限界を迎えていた。

「ハァ、ハァ、ハァ・・・。なんだよこの強さ。このロボットに乗ったところで勝てやしない・・・。どんだけの規格外の強さなんだよこいつは・・・」

 余りの強さに絶望していたその時。

 視線の先に4つのゲートが現れた。

 中から、サタスと似た4機のロボットが現れ傑に話を掛ける。

「ちょっとそこのパイロット!大丈夫!?」

 その声は女性だった。

「あたしの名前は大嶽丸 橋姫。今からあんたの援護をするから!他の三人と一緒に!いくよ!皆!」

 すると、4機のSin僟は天使・ミカエルに向かって行った。


 ―――――「君たちの乗る機体について軽く説明しよう」

 橋姫を含む4人のパイロットはモニターに映るDrアンフェールをみつめる。

「まずは、橋姫君。君の機体は、嫉妬のSin僟・レヴィー。その機体の特徴は相手の能力をコピーできる能力だ。但し1種類しかコピー出来ないから次のコピーをすれば上書きされて消されるので注意だ。」


 ――――「お前のその能力を貰うぞ!」

 そう言うと、橋姫が駆るレヴィーの右腕にはミカエルが使用する槍と同様の物が出現した。

「これで貴様を討つ!」

 レヴィーは地面を蹴り上げると天使ミカエルに向かって白き槍を突き刺そうとする。

「愚かな人間よ。その穢れた手で我の神具を扱うな。我の手で浄化させてやろう」

 ミカエルの背後に無数の剣がまた現れ、レヴィー達、新しく現れたSin僟に向かって掃射された。


 ―――「次に童子君。君のSin僟は暴食のベルグラ。飛び道具限定だが相手の攻撃を吸収することができる。しっかりと、仲間をその能力で守ってくれ」


 ―――ベルグラのパイロット・安綱 童子は博士の言葉を思い出し、背中に生えている蝿のフリューゲ・フリューゲルで空高く舞い上がる。

「さぁてぇ、お腹一杯、食べちゃうぞうぉ~。蝿王の暴食ベルゼ・バキューム~」

 ベルグラの腹部にあるケルベロスの顔が大きく口を開け亜空間が出現した。

「さぁさぁさぁ、いっぱいお食べぇ~」

 ミカエルが撒いた大量の白い剣は一斉にベルグラが開けた亜空間へと吸い込まれていく。


 強欲のSin僟・グリモンのパイロット、我喜屋 白狐は天使の隙を伺っていた。

 彼のSin僟の特徴は相手の能力をコピーすることができる。

 レヴィーと同一の能力だと思われたその能力だが、相違点があり、それは、コピーできる能力は1度に2個、また、相手の武器・体のパーツを奪い自分の物にすることができるというものだった。

「ちっ、じっとしてほしいんだけど・・・?。あんたの身体の一部俺に譲ってくれない?・・・仕方がない。武器は諦めるか」

 思い通りにならない天使に痺れを切らした白狐はグリモンの臀部に接続されている狐様の尻尾から白い空間を創り出し白い剣が大量に射出される。

「このロボット、見ただけで能力をコピーするとか最強かよ!」

「我の能力チカラを模倣するモノがまた現れたか。流石、悪魔が造ったガラクタだな。実に汚く小賢しい力を使う」

「オラオラオラ!くらえくらえ!」

 際限なくグリモンは白き剣を放ち続ける。


 一方、天宇 夢魔は現実とかけ離れた状況に呆然としていた。

 何も理解が出来ないまま近くにいた人達にノリでついていき、その画面に映る白い化け物と戦う男に惚れ、彼に近づきたいがために、またノリでSin僟に乗り込んでしまった。

 そして、彼女のSin僟は能力的にこの現場には今必要とされていない。

 ここまでの一連の行動を振り返り彼女は後悔した。

 この状況を、後先を考えずに己の欲望に従う自分を恥じた。

 だが、そんな彼女に優しく声を掛ける。

「もしかして、助けに来てくれたのか?ありがとう」

 彼女の心は暗いどん底の沼から一気に空高く飛び上がるように軽くなった。

「あ、い、いえ、自分は何もできてないですし・・・」

 昂る気持ちを抑え、彼女は自身の現状を正直に話す。

「いや、一緒にこの場に来てくれただけで、頑張ろうって言う気になる。ありがとう」

 彼女が恋した男は傷ついた体を起こし、自身の乗るSin僟・サタスの操縦桿を握り、前へと押し倒す。


「皆!助けに来てくれてありがとう!後は俺がどうにかする!」

 そう言った傑の前に5体の天獣が現れる。

「くっ!まだ居やがったか!」

 足を止めたサタスに天獣は襲い掛かろうとしたその時、突如5体の天獣は動きを止め、互いが互いを攻撃し始めた。

「どうしたんだ…急に・・・」

「やった・・・!やっと、私が役に立てる時が来た!」

 彼女――天宇 夢魔が搭乗する機体―――色欲のSin僟・アストは催眠効果を持っており、複数の対象を同士討ちさせるなどの効果を有していた。

「これは、君のSin僟の力なのか?」

 問いかける傑に夢魔は明るく返事をする。

「はいっ!私の力です!」

「ありがとう!これでやっとあの化け物を倒すことができるかもしれない!」


 サタスは勢いをそのままに地面を蹴り高く跳ぶ。

 右手に備われているウルフクローにエネルギーを集め天使・ミカエルへと斬りかかる。

「くたばれ!クソ天使ぃぃぃぃぃ!!!!!」

 複数の敵を相手にするミカエルにとってサタスの攻撃は避けるしか方法は無かった。

 間一髪、攻撃を避けた。

 ―――と思われたが、左羽に3本の線が刻み込まれた。

「くはっ、仕方ない。ここは一旦引き下がるとしよう。今度は無いと思え」

 そう言って、天使は姿を消した。

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