第2話 憤怒
―――数分後。
傑の操る
白き閃光と赤黒い稲妻は激しく火花を撒き散らしてぶつかり合う。
傑は本来であればここまで天使と同等の力で戦えることはできないことが薄々分かってはいた。
先の天獸との戦闘で言っていたDrアンフェールの言葉。
―――脳に戦闘データを送っている。
その戦闘データのおかげで自身の駆るSin僟がアップデートされてようやくミカエルと名乗る天使に追いつけている状態なのだと。
改めて傑は天使という存在は異次元レベルだということを理解させられていた。
自分が今戦っているのはこの世界の常識とはかけ離れた
数分間続いていた戦闘は突如として終わりを告げようとしていた。
いや、それは戦闘をしていた二者には分っていたことかもしれない。
「くっ!まだだ!まだ終わってねぇぞ!」
Sin僟の挙動が少しブレる。
初めての戦闘。
更に強敵と続けて戦うことになった傑の身体は本人の心とは別に限界を迎えようとしていた。
全身には大量の汗が滴り、呼吸は既に肩でしなければいけない程に疲弊している。
目の前が霞み、左膝が床に着くがなんとか立ち上がろうとする。
だが、本人の意思とは関係なく傑の意識は遠のいていった。
意識が遠のき暗闇の世界で傑は目を覚ます。
やがて、暗闇の中から少女の声が聞こえ、景色も黒く塗りつぶされた世界から燃え盛る街の風景へと変わっていき、四方八方から聞こえる人々の悲しみを纏った叫びが傑の耳元へと届く。
「助けてくれ!!」「死にたくない!!」「お母さん……!!」
そして、息絶えながら自分の子供の名前を呼ぶ親の声。
その全てが傑の耳に、心に届く。
「俺は何をしているんだ……!こんなところで終わっていいはずがないだろっ!目を覚ませ!」
目を開け、傑が再び立ち上がるとSin僟もそれに応える様に再び目が光り立ち上がる。
しかし、立ち上がったSin僟は少し様子が違っていた。
赤黒い稲妻がSin僟の周りをバチバチと音を鳴らし、碧色だった瞳は紅く染まっている。
先ほどまでと同じ機体とは思えないほどにその姿は迫力を増していた。
パイロットである傑もまた、白目になり全身から血管が浮き出る程に筋力が増強し、唸り声をあげている。
『まだ立ち上がるのか人間……。いくらか雰囲気が変わったようだが、この我に対しまだ勝ち目があるというのか。その愚かな野望もこの我が壊そう』
天使ミカエルは白く美しい騎槍を構えSin僟の胸部に照準を合す。
『これで貴様は死ぬ。我の手でな。喜べ。天使直々に葬り去ってやるのだからな……。』
ミカエルは腰を低く落とし一瞬にして距離を詰める。
『
閃光の様に速い一撃はSin僟の胸部を貫いたかに思えた。
が、放った強靭な一撃の先は何もいなかった。
余りの予想外の出来事にミカエルの思考は一瞬、停止した。
自身の持つ騎槍の右側に視線を向けるとそこにはSin僟が騎槍を抱え込む姿が映る。
次の瞬間、Sin僟は騎槍を抱え込んだまま奥に引っ張り、ミカエルの重心をずらす。
そして、自身の奥に引っ張った勢いのまま右手をミカエルの顔面へと打ち込み地面へと叩き伏せた。
地面には衝撃波が走り、更地と化す。
だが、ミカエルの顔面には傷一つついてはいなかった。
立て続けに傑が操るSin僟は天使の頭部を掴むと握り潰そうとしギチギチと音を立て段々と力を入れていく。
先の攻撃で既に意識がないのか、ミカエルは呻き声も上げず身体はだらんと脱力している。
傑は左腕を後ろに引き腹部を殴る動作をした。
何度も何度も腹部を殴り、その姿は人類を守るヒーローなんかではなく、正に悪魔そのものだった。
そして、何発か殴ったその時、ミカエルは背中に生えている六枚の羽を大きく広げ羽ばたきだした。
頭部を掴んでいた右手は次第に離れていきミカエルの身体は自由となった。
『やはり、貴様のその力では我は倒せないようだ……。貴様にはここで
そう言うと、両手を天高く掲げ両手掌に直径10m程の真っ白い球体が現れた。
太陽以上の眩しさを持つその球体をSin僟目掛け放つ。
ゆっくりと進む
当然、その球体を避ける傑であったが地面へと着弾した瞬間並々ならぬ爆風と衝撃が傑とSin僟を襲った。
―――地獄
「ちょっと!いったい何なの!?さっきの光は!」
Dr.アンフェールの研究室に4人の男女が突如押し寄せてきた。
どうやらDr.と傑の後をついてきて二人のやり取りをずっと見ていたらしい。
「急にあの黒いロボットが強くなったと思ったら急に画面が白くなって、いったい何がどうなってんのよ!」
赤髪ロングの女性が今までの疑問をすべてぶつける。
常識的に考えられない現象が立て続けに起こったので無理もないだろうとアンフェールは思い、4人に傑に話した内容、そして今現在何が起こっているのかを全て話した。
話すことで、今後の展開に動きがあることを信じて。
全ての話を聴き半ば信じられないと思いながらも、この不可思議な現象、そして目に映っているものを信じるしか彼女たちの選択肢は他に無かった。
あの画面の向こうで自分たちを死に追いやった白い生命体を倒さなければ、自分たちは本当に終わってしまう。その為にはあの黒いロボット―――即ち、神嶌 傑と言う男が負けるわけにはいかないと、彼女たちは心の中で思っていた。
「ねぇ!あんた科学者なんだよね!他にロボットは無いの?」
赤髪の女性・
「あるにはある、あと6機ほどな。」
すると、橋姫は、連れてって。と言い、Dr.に残りのSin僟が置かれている場所へと案内をさせた。
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