第3話(3/4)「聖女様って男性でもなれるのかしら?」
「聖属性と性別に因果関係はありませんので。聖属性の魔力を多く有しているのでしたら男性であっても問題無くお役目自体はこなせます」
「問題は」とロウセンは続ける。
「慣例の方ですね」
「慣例? 何かあったかしら?」
「テルマお嬢様。当代の聖女様がどなたかは御存知でいらっしゃいますか?」
「勿論。現王陛下の弟君の奥方様――王弟妃殿下よね」
「では先代の聖女様は?」
「分かるわよ。先代の聖女様は現王陛下のお母様……あ」
パッと大きく見張った目でテルマはロウセンを見る。ロウセンは頷いた。
「聖女様は代々、王族に嫁ぐ事が慣例となっております」
そうだ。忘れていた。何で忘れていたのだろう。大きな事なのに。
だからこそ孤児であった「クロウ」をアムレート公爵家の養子にする必要があったのだ。「クラウディウス」と貴族風の名前にまで変えさせて。全ては「聖女」であるクラウディウスが輿入れをする予定であった王家との釣り合いを取る為であった。
男性であっても聖女の役目は果たせる。しかし「聖女」が男性では王族に嫁ぐ事が出来ない。それは些末で大きな問題だった。
クラウディウスの確かな実力を見て彼女を聖女と認めるのか、それとも王族に取り入れられないという政治的な理由から聖女とは認めないか。
どちらに転ぶのかテルマには全く分からなかった。予想もつかない。
「公爵家が養子にまで迎えた聖女候補が実は男性でしたなんて……笑い話では済まされないわよね?」
「王家を騙したとなれば重罪――死罪は無いにしても降爵か褫爵か。今のまま公爵の地位には居られないでしょう。大事にはしたくないと王家が『実は知っていた』とか『騙されたとは思っていない』等と庇ってくださったとしても他の貴族の方々は確実に騒ぐでしょうから。貴族社会に混乱を招いたとしてそれ相応の責任問題にはなりましょうか」
ロウセンは「とてもではありませんが――笑えません」と軽く目を伏せた。
「どうしたら良いのかしら」とテルマは表情を曇らせる。
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