英傑帰還
第33話
「
ひとつ手前の大広間からの
巨猿を倒し、牛魔の大群をかわして、吊り橋の間へ到着した。
「俺が先に様子をみてくる」
「いや、一緒に行こう」
ニウを問答無用で背負って、3人で吊り橋を渡る。
無事、渡れたところで橋の近くで一旦待機する。
ニウに
すぐに風を巻き起こす
前回、意識を失ったのは空気の澱みが原因ではないかと睨んでいる。
炭鉱などで、たまに噴出する燃える気体。
その澱みがあると意識を失うと聞いたことがある。
小鳥を連れていれば判別がつくというが、生憎ここにはいない。
強風を起こして、吊り橋側へ溜まった燃える気体をはき出す狙い。
「おい、なにかいるぞ!?」
最初に気が付いたのは、ジェイド。
吊り橋側になにかいる?
橋の横から透明だが時折、白く反射する物が見えた。
拳大の大きな蜂の魔物は、強風のせいでうまく飛べていない。
おまけに本来なら姿が見えないのだろうが、強風の影響で見え隠れしている。
部屋の奥の方へジェイドとニウに避難してもらって、隠密蜂を迎え撃つ。
風で思い通りに飛べていないようだが、それでも軽快な動きで翻弄される。
蠅のように飛ぶ軌道が不規則で俊敏な動きをしている。
時間を引き延ばしたようにゆっくり見える「慧眼」。
相手が動く前に察知する「未来視」。
そして、意識を介さず即応する「無我」。
この地下迷宮で覚えた3つの極意をもってしても隠密蜂を捉えきれない。
今、自分に不足しているのは純粋な「速さ」……。
剣速を上げようと剣の柄を思いきり握りしめ、腕に思いきり力を込める。
だが、速くなるどころか
1匹しか当たらず、残りはすべて外れて、背中を針で刺されてしまった。
それから数百回という回数を経て、ようやくコツを掴んだ。
剣の握り方を直し、予備動作を極力無くす。
腕を柔らかく使って、しなるように剣を振る。
そして、剣の重さと回転を上手く利用して、瞬間的な速さを高める。
ステータスも上がったことで、より剣の速度が上がった。
ようやく
「ここだ!」
ジェイドが、現在地と地図上の目的地を見比べて確認している。
円形の部屋。
空中歩廊が十字に交差していて、6
梯子が下の広場へかかっていて、目的のものが見えた。
「あれが、転移魔法陣だな」
下の広場の中央に見える直径5
あれが、この地下迷宮の1階に転移できる魔法陣だと思われる。
「まず、俺が調べてくる」
ジェイドがそう言うと、スルスルと梯子を降りていった。
──あの大きな扉はなんだろう?
6枚の巨大な金属でできた扉。
周囲をぐるりと囲んでおり、なんとなく嫌な感じがする。
ジェイドは周りを気にも留めず、中央の魔法陣へ近づいた。
ゴゴゴッと厚みのある音が鳴り響く。
見ると巨大な金属の扉の1枚が音を立てながら、せり上がった。
ジェイドは異変に気が付くと、素早い身のこなしで梯子を上がってきた。
甲冑を着た魔物。
剣を持っており、開いた扉から鈍重な動きで広場に出てきた。
「上がっては来れねーようだな」
こちらの存在には気づいている。
空中歩廊の自分達が立っている真下に群がり見上げている。
「矢は……ダメだな」
ジェイドが試しに真銀の弓で矢を放った。
だが、甲冑を着た魔物に当たると、甲高い音を立てて床に落ちた。
10体か……。
迷宮に潜る前ならいざ知らず、今の自分の力だったら。
梯子は4か所あり、走って群がっていないところから降りた。
ステータスは自分より低くて、動きもぎこちない。
こんなの何体出てきても問題ない。
近づいてきた
なにこれ? 動いている……。
胴を両断したのに上半身と下半身が別々に動いていて気持ち悪い。
中は空洞、てっきり人型の魔物が入っていると思っていた。
「サオン、どこかに刻印があるはずだってよ!」
ニウの囁きをジェイドが大きな声で代弁してくれた。
えーと、刻印、刻印……。
そこに
弱点がわかれば、簡単な相手。
あまり時間もかかることなく10体すべてを
もしかして6番目の扉まで順に開くんじゃ……
2番目の金属の扉が競り上がると、15体の
先ほどの
半分ほどの
槍が加わったことで、単調に感じていた攻撃がすこし複雑になる。
それでもまったく敵ではない。
2番目もあっさりと
3番目の扉から斧持ちが増えて、さらに動きもよくなった。
数も20体に増えていて、倒しきるのに割と時間を食った。
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