第12話 

昼ごはんの後に一服盛られたのか?


自分が山頂へ向かって登頂した後。

すぐに3人は飲食どちらかに仕込まれたんだと思う。


どうしよう?

村人は全部で50~70人ほどはいる。

年寄りが多いが、戦えそうな人間は少なく見積もっても30人くらい。


一方、こちらは4人しかいない。

ちゃんとした戦闘をこなせるのは自分のみ。

まともに戦っても勝ち目は薄そう。

まずは情報収集をしなきゃ。


朝から昼までの間、村を見て回りたいと申し出たら許可された。

他の3人は、なにも知らせてないので、村の手伝いをしている。

だけど自分は1度殺されている。

村の本質を理解しているので、そのまま時間を潰す訳にはいかない。


昼までウロウロしたが、特に目ぼしい収穫はなかった。

3人に話し、村から逃げようという話をした。


3人の承諾を得て行動に移す。

急に帝都へ帰ることになったと村長に挨拶をする。

すると、いつの間にか武器を手にした村人たちに囲まれた。


274回目。

前回は結局、村人に囲まれて命を落とした。

彼らは自分たちを確実に生贄にするつもりのようだ。

村を出ると言い出した瞬間、襲わてしまう。

何気に武器は家に置いておくよう勧められていたのにも気づいた。

他にも食事の時以外は、一か所に固まらないように工夫されている。


朝食の間に小声で3人に事情を話す。

その後、村長と彼の家族を襲った。

先手必勝。3人は自分が狂ったようにしか見えていないだろう。

だけど、すぐにわかったはずだ。

この村が異常だということを……。


目の血走った村人たちに村長の屋敷を包囲された。


籠城戦。

地形……建物を有効に活用できれば、勝機が見えてくるはず。

屋敷を砦化し、侵入経路を一か所に絞る。

ポメラの魔法やセレの強化魔法の甲斐あって健闘した。

だが、屋敷に火を放たれ、炎に巻かれて命を落としてしまった。


275回目が始まったが、真っ向から戦うのを諦めた。


「何をしているんですか?」


──見つけた。


281回目まで午前中を目いっぱい使って村中を回った。

だけど、盲点だった。


まさか、村長の屋敷にあるなんて……。

ちなみに常に村人の誰かが自分を見張っている。


村長の屋敷の中にいる間は村長の息子が近くにいた。

20代前半くらいで、家の中なので、さすがに武器は持ってない。


仲間も含めて今、この家には自分と村長の息子の二人きり。


大声を出される前に殴って気絶させた。

すばやく目的のものを倉庫から取り出す。

すぐにそれを村長の息子で試してみると当たりだった。


だが、それほど時間もかからず、バレてしまい終わってしまった。


282回目は、すばやく行動に移した。


朝、目覚めると同時にこっそり目的の物を倉庫から持ち出す。

それを井戸に器ごと沈めた。


朝食が終わって、各自、それぞれバラバラに村の手伝いをする。

自分は村長の畑を手伝っている間に昼になった。


「私の家の習慣でして、昼は飲まず食わずという教えなんです」


昼食を進められたが、嘘をついて、断った。

もちろん他の3人も同じ理由で一切、口にしない。


しばらくすると、村長の屋敷の別の部屋からうめき声が聞こえた。


眠り薬。

いちばん最初にこの薬のせいで、まんまとやられてしまった。


今度はこちらの番。

おそらく昼食をとった村人全員が今ごろ睡魔に抗っているはず。

井戸の水を飲むなり、料理に使った水には眠り薬が入っている。

朝、瓶ごと井戸の中に沈めておいたので、効果は絶大だと思う。


「あっ……あっ……」

「それで、この娘をどうするんだ?」


言葉が話せないのか?

それとも久しぶりすぎて言葉が出ないのか……。

怯えた様子で口からか細い声が漏れている。


ジェイドから方針を問われた。

任務の内容は祈祷者の抹殺。

この場でこの女の子を斬ってしまえば任務達成となる。


だけど……。


彼女の姿は、痩せこけた身体が風に揺れる枯れ木のよう。

頬はこけ、目は深く凹んでいる。

その瞳を例えるなら深い悲しみを映し出した人形みたい。

肌は青白く、骨と皮だけで生気を感じさせない。

手は細く長い指を見ていると、まるで鳥の骨のようにみえる。


こんな少女を殺すだなんて自分にはできない。


「この子を連れ帰るのが任務です」


嘘をついた。

連れ帰った後、彼女は殺され、自分は処罰を受けるかもしれない。

だが、この場で何の罪もない不幸な娘を殺すだなんてできそうもない。


「それじゃ早く移動しましょう。ここは危険だわ」


ポメラの言う通り、ここは大変危険だ。

周囲をぐるりと細い吊り橋で支えられている家。


ここから落ちたら30Mメトルはあるので、まず助からない。


来た方向とは反対方向の吊り橋を渡る。

渡り終わったと同時に円形の窪みの対面に村長たちの姿が見えた。


そこから斜面を無理やりまっすぐ降りる。

少女は自分が背負っている。

彼女の瘦せ衰えた足では満足に山を登り降りするのもままならない。


10人くらいしか追いかけてこなかった。

途中で、ポメラの魔法で迎え撃って全員倒せた。


追っ手は最後まで弓を射かけてこなかった。

おそらく少女を自分達が押さえているから、当たるのを恐れたのかも。


なんとか逃げ延びて、森の中へ潜むことができた。


「名前を教えてもらえるかな?」


ホントに話せないのかな?

まだ怯えた目をしている。


相手を刺激しないよう落ち着いた声で訊ねた。


「ニウ……ニウ・コトン」


彼女の初めて口にした言葉は自分の名前だった。








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