第11話 


「……そうですか、それは是非、協力させてください」

「よろしいのですか? ありがとうございます」


火口までは、このロロカロ村から約半日ほどで登頂できるそうだ。


「では、お昼を食べてから出発なさいますかな?」

「ええ、是非」


一度、村長の屋敷で昼食をとる。

そして、午後すぐに案内役の人とふたりで山を登ることになった。


武器は短剣1本だけ所持する。

それというのも、このゲイドル火山には魔物は現れないと言われたため。

彼らからしたら神聖な山。

あまり武器は持ち込んでほしくないというのが本音なんだろう。

さすがに幅広剣ブロードソードを持っていくのは憚れた。


短剣くらいならいくらでも言い訳が立つ。

万が一……村人が急に牙を剥いたとしても問題ない。

その自信の元は案内人の男の強さにある。

火山の制御者も戦闘職ではないだろうから、短剣1本で十分事足りる。


なぜそこまで言い切れるのかというと、相手のことが視えている・・・・・から。


───────────────

コヨエパ

才能:凡

レベル:3

武力:9

統率:─

知力:5

政務:─

魔力:─

神聖力:─

───────────────


これが同行者の「ステータス」。

数値化ニューメリカルという能力を授かったお陰。

これで相手の強さの指標となる数値を見ることができる。

ちなみに今日現在の自分のステータスはというと。


───────────────

サオン

才能:凡

レベル:18

武力:28

統率:18

知力:21

政務:─

魔力:─

神聖力:─

能力:再演ループ

   数値化ニューメリカル

───────────────


このように自分の視界に半透明な板が浮かんでいる。

自分のステータスは普段、頭の真上にある。

手で触れることができるので、見たい時に下げている。

もうひとつの再演ループが例の死に戻りの能力。


ちなみに才能の横に「凡」と書かれているが、他にもある。

ステータス表の説明欄に不<凡<佳<良<優<傑<稀と書かれている。


これは右に行くほど才能があるということらしい。

例えば、ジェイドは「佳」という才能だと表記されている。

レベルは12だが、自分と比べるとステータスの伸びが高い。


夕方には、山頂へ着いた。

火口は岩肌が広がっていて、窪んだ形をしている。

噂に聞いていた赤い炎の池は見当たらない。

やはり火山自体が眠らされているということか?


円形の窪みを覆うように無数の極細の吊り橋がみえる。

中央に向かって架かっている吊り橋の中央にちいさな小屋がある。


「あそこには鎮焔の巫女様がいらっしゃいます」


鎮焔の巫女……その人物が、今回の標的。


「その巫女殿に会えますか?」

「それはできません、この吊り橋は誰も渡ってはいけないのです」


誰も? 

じゃあ、その巫女という人物はどうやって生活しているんだろう。


「少し失礼します」


案内人コヨエパはそう言うと、索道に持ってきた荷物を吊り下げた。

その索道を引っ張っていくと、小屋の方まで荷物が運ばれていった。


カランカラン、と手元にある鐘を鳴らすと小屋の中から人が出てきた。


これは……。


女性、かなり若い。

下手したら、10代半ばぐらいかもしれない。

別にそれは今はどうでもいい。

問題なのは、もの凄く痩せ細っているという点だ。


「今、渡した荷物って、1週間分の食事ですか?」

「いえ、1か月分ですが」


腕組みしてその上に乗せられるくらいの食糧。

1カ月や2カ月くらいなら何とかなるかもしれない。

だが……。


「彼女はここから出たことは?」

「7年前に来てから1度も出ておりませんが、それがなにか?」


細い腕で、食料を回収している。

でも、こちらをチラリとも見ようとしない。


「こんなヒドイことをして許されると思っ……て、あれ?」


めまいがする。

何とか耐えているが、そう時間もかからず気を失ってしまいそう。


「ようやく効いてきましたか」


なにか盛られた?

そういえば、ここへ登ってくる途中、差し出された水を飲んだ。


「あなたは大事な人柱となるのです」


年に1回、火山を鎮めるために生贄を捧げているそうだ。

ちょうど、都合よくやってきたよそ者。

生贄として白羽の矢が立ってしまったらしい。


くそっ、始めからその心算つもりでここへ連れてきたのか?


「ご心配に及びません、お連れの方々も直に運ばれてきますから」


3人とも、眠り薬を盛られたはずだという。

今ごろ、縛られた状態で担がれて、この火口へ向かっていると話す。


火口の底部分の岩肌はとても薄いそうだ。

ちょっとした刺激でもすぐに割れてしまうとのこと。

生贄を放り込んだら、火口が開き、生贄を飲み込むという。


「もう少しお待ちください、一緒に神へ捧げますから」


それが最後に聞こえた言葉だった。




274回目。


「おい、どうした? ぼーっとして」


ここは……山に登る日の朝。

ジェイド、ポメラ、セレの3人が揃って食卓を囲んでいる。


長老の屋敷の離れで食事をしていた。


「あ……うん、大丈夫」

「変なヤツだな、おまえは」


大丈夫、ここからの再開ならまだ助かる可能性がある。

もし、再開が山の中腹とかからだったら、ヤバかった。


自分はなんとかなるかもしれないが、3人は確実に死んでいた。


これからどうするかを決める前にひとつ気が付いたことがある。

死に戻りは1日単位、それも朝に戻っているのではないだろうか?


レッドテラ軍との戦いでも、王都テジンケリでもそうだった。

もし、本当にそうなら運が悪い場合は覆せない状況も起こり得る?

何度再開できても、無理な展開が起きる可能性がある。


例えば仲間が殺された後の状態で再開したとしたら……。





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