第56話 第一部エピローグ

「さてと、こっちは良いとして、もう一人だけ鉄拳制裁が必要な人が居るのよねぇ」


 そう言って、とある人物へ視線を向けるファニス。

 そのとある人――――――ボードペ・ブフスがヒィと言う悲鳴を上げる。

 スリフィにしがみついて、話が違うじゃないのぉ、と言っている。


「まあまあファニス、押さえてよ、ほら、ボクからの手紙は読まなかったの?」

「手紙……? そんなもの、届いてないわよ」

「ええ……どうして?」


「そりゃ、あんた、こんな厳戒態勢を潜り抜けて、敵陣営にお手紙を送れるような人材がここに居るの?」


 なるほど、と言ってスリフィは、自然とそのマダム、ボードペ・ブフスから距離をとる。


「ちょっ、ちょっとスリフィ、このうらぎりもの~」

「いやあ~、今のファニスを止めるのは難しいかなって、ボクまでとばっちりがきそう」

「マブじゃなかったのぉ!? とめてよぉ!!」


 ゆっくりと拳を鳴らしながらマダムの方へ向かうファニス。


「わ、私に酷い事をしたら、そ、その、スリフィやシフの首が絞まるわよ!」

「ふ~ん、そんなもの……」


 ファニスがとある呪文を唱える。

 するとだ、オレやスリフィはもちろんの事、そこに居た全ての人の首輪が外れ地面に落ちる。


「私は仮にも帝国皇帝としての教育を受けた者よ、隷属の首輪の解除方法など、知らないはずがないでしょ」

「ひっ、ひぃぃいいい……」


 その時、チョンチョンと、ファニスの肩を叩く人物が約1名。


「なによスリフィ、たとえあなたの願いでもこればかりは……」

「ねえ、ファニス、もしかして、コレの解除方法も知っていたりした」


 スリフィはニッコリとした表情で、スカートをめくりあげる。

 なるほど、確か素材は同じものと言っていたな、スリフィが履いてる貞操帯。

 素材が同じなら解除方法も同じ、だったらファニスが、その解除方法を知っていたとしてもおかしくはない。


 つと、視線を逸らすファニス。


「おぉゴラァ、知ってて黙ってたんかワレェ!」

「し、知らないわよ、後宮は治外法権なんだから」

「どもっているという事は、なんらかの手段ぐらいは知っていたんだね」


 いやまあ確かに時間をかければ、とつぶやくファニス。


「ファ、ニ、スゥ~~!」

「いやでもね、あなた、それがあるぐらいでちょうど良いと思うのよ」

「それはどういう意味かな?」


 オレもそう思う。


「良し、じゃあファニス、今から、コレを解除する方法を考えるよ!」

「いや、私はコイツに鉄拳制裁を……」

「そんなの、いつだってできるじゃないか! こっちゃ、一分一秒だって惜しいんだよぉおおお!!」


「ああ、うん、まあ、そうね」


 スリフィの迫力にタジタジになるファニス。

 そのうちファニスを引きずって、式場を出て行こうするスリフィ。

 それをファニスが待ったをかける。


「あ、ちょっと待って、ほら、今がチャンスなのよ、そのためにこの衣装を用意していたんだから」


 そう、なぜか、登場時にウェディングドレスを着ていたファニスがそうスリフィに懇願する。

 なるほど、この時まで待っていたのは、自分が代わりにオレと結婚式を挙げるつもりだった訳か。

 だが、スリフィ、そんなファニスの懇願を一蹴する。


「そっちもいつでもできるじゃん!」

「いやいや、これは今しかできないのよ? ここなら第四王女の邪魔も入らないし、リューリンも居ないから……」

「良いから行くよ!」


「そんなぁ……!?」


 まあ、ある意味、ナイスプレーだなスリフィ。

 マダムへの鉄拳制裁を防いだ上に、強制的な結婚式まで防いだ訳だ。

 隣でグランドム侯爵が困惑された顔で仰る。


「本当にあれはファニス皇女なのか……というより、皇女を引きずっている彼女はいったい……?」

「さすがにマブだけあるわね、皇女にあれだけやって首がつながっているなんて信じらんないわぁ」

「ああ、さすがスリフィ様、濡れます……」


 エルフ幼女のエムちゃんは恍惚とした表情でスリフィを見送っている。

 スリフィの株が爆上がりだな。

 本人はエロに必死なだけなのに。


 エロは世界を救うってほんとだな。


「ファニス皇女のお体がすっかり良くなっていてびっくりしたのですが、どうされたのですかシフ様?」

「あと随分とスリフィと仲良くなってるじゃない、距離感がおかしくない?」

「いえまあその……いろいろと…………ほんと、いろいろとあったんですよ」


 フォンさんとラクサスさんがそう聞いてくるが、真実を伝えても良いものだろうか?


 聖女の件にしろ、どうしてあそこまでスリフィと仲良くなったのかも、どっちもタブーの様なきがするぜ。

 オレの口からは言いにくいので、どうか、後でファニスから直接、聞いてやってください。

 ええ、決して責任逃れをするつもりではありませんよ?


「まあ、いろいろとなければ、あそこまで変わらないでしょうけど……」


 それから数日後、飛び上がって喜ぶスリフィの姿があった。

 どうやら無事に、呪いのパンツの解除に成功した模様。

 連日の徹夜に付き合わされたファニスはゲッソリした表情だ。


 そしてそのスリフィ、勢い余って、オレに夜這いを掛けに来た。


「なにやってんの、おまえ……?」

「先生、後生なんですよ! もうボクのメーターはぶっちぎりなんです! どうか、一発ヤらせて下さい!!」


 そう言って、土下座で頼み込んでくる。

 いやしかし、その幼い体ではなあ。


「そう言うと思ってこういうのを用意して来ました!」


 そう言って、大人スリフィに変化する。

 なるほど、変化の魔法か?


「一発! 一発で良いですから、どうか、どうかお願いします!」

「そこまで言うのなら……」


 前世がある分、精神年齢も違法ではないだろう。

 体も、大人であるのなら……

 というか、変化の魔法でヤって大丈夫なのか?


「ぃやったぁああ! さすが先生だ!! チョロイから、押せばなんとかなると思ったんだよ」


 その時だった、突如、バァンと扉が開いたかと思うと、二人の女性がオレの部屋に入って来る。

 そしてテキパキとスリフィにパンツを履かせる。

 その二人――――――ファニスとリューリンちゃんが言う。


「やっぱあんた、それ履いといてちょうど良いわ」

「スリフィ、さすがに今回の件は見過ごせません。罰として、いま変化している体に成長するまでお預けです」

「ええっ……!?」


 スリフィが必死でパンツを降ろそうとしている。


「酷いやファニス! ボクの次はファニスで良いからさ!」

「えっ、そう? それじゃあ……」

「姉さま! そのパンツの呪文は私が預かります!」


「「そんなぁ……」」

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