第7話
「まっ、本当の事を言うと、7王国時代から後のシフ・ソウランの足取りは分からないんだけどさ」
ただ、大きな国が栄え滅ぶときには、大概と言っていいほど、首を布やチョーカーで隠した男性が現れる。
そしてソレはシフ・ソウランであったのではないかと、言われている。
なぜ、そう言われているかと言うと……
「邪神の力で蘇ったシフ・ソウランの首にはね、首と胴体をつなげたような痕が残っていたそうなんだよ」
とはいえ、首を隠す風情は男性の中で流行っていてね、シフ・ソウランに憧れてそうしていた人も多い。
だから、本当にシフ・ソウランであったかどうかは分からない。
7王国時代以降のシフ・ソウランの足取りが分からないのもそれが理由なんだと。
なるほど、木を隠すなら森の中、という訳か。
「でもそれは、男性が少ない理由にはつながらないのでは?」
「問題はこの後なんだよね」
銃や大砲は確かに誰にでも簡単に扱える。
男性でも十分な戦力として扱える。
魔法にも十分に対抗できる戦力である。
でもね、別に魔法が使える女性が扱ったらダメという訳でもない。
「女性達も男性に習って銃器を扱うようになった。さらに銃器に魔法を組み込むような開発まで行われた」
銃弾に魔法を付与し、着弾時に爆発したり、感電させたり。
大砲に魔法を付与し、射程距離を数十倍に引き上げたり。
魔法は直接的にぶつけるのではない、間接的に使ったほうが価値があると女性陣は気づいた。
そのうち火薬も必要なしに、魔法で砲弾を打ち出す方法も開発される。
「そうなると一気に形勢は逆転する」
その男尊女卑を推進した女王も最後はギロチン。
さらに、今回の件で男性が大事だと気づいた女性陣は男性を徹底的に管理する事に決めた。
そこから暫くの時代、男性は物の様に取引される事になったそうだ。
「人身売買ですか~」
「大昔の話だからね~、人権なんてあって無い様な物」
完全に物として扱われるようになった男性。
物であるのならば、悪い物は間引きされ、残るのは見た目の麗しい者ばかりとなる。
見た目の良い男性を繁殖させ、悪い者は廃棄される。
花屋さんとも言われた、男性を売買する場所も作られる。
そんな暗黒の時代が続く。
「となるとだね~、良い者同士、そう血が近い者同士で交配されたりもする」
そう言って、自分の真っ白な髪をかき上げる。
「遺伝子にだって異常が発生する訳ですよ~」
千年後の未来では、自分の様なアルビノなど、珍しくもなんともない、と言う。
それどころか、見た目も同じような人ばかり。
美男美女が勢ぞろい、と言えば聞こえは良いが、特徴がなければ、選ばれることもない。
「それで男性が激減して、たとえどんな男性であっても、物凄く丁重に扱われてさ、一生を左団扇で暮らせるそうだよ」
ああ、神様。
どうせならオレもそっちの世界に転生させてほしかったであります。
これが生まれてくる時代を間違えたというやつか。
「たださ、遺伝子に異常をきたしても女性なら自分の魔法でなんとかするけど、男性だとそうもいかない」
生まれてくる数自体が少なくなった上に、生まれてすぐに亡くなる確率は90%と言われる。
ああ、神様。
やっぱりいいです。
今の世界より生存競争が激しいじゃねえか!
生き残るのは10人に1人だよ?
さすがに、そんなに間引いたりしないわ。
その上、生き残っても長生き出来そうにない。
「しかしそんな世界がよく持つな。やはり人工授精か何かなのか?」
「そうだね、好きな精子を選べて、生まれてから成長するまでの見た目もコンピューターでシミュレート出来る」
「生まれる前から子供の見た目が選べるのか、進んでいるな」
「さすがに性別を選ぶまではいけてないけどね」
ふと見ると、首を後ろ向きにしてオレの方を見上げている天使の子と目が合う。
「先生ってサ、…………人工授精とか知っているし、コンピューターと言っても話が通じるよね」
もしかして、と続けたその時だった。
突如、スパーンと風呂の扉が開く、そこでは仁王立ちの女性がこっちを睨んでいた。
「スリフィ、あんたまた、先生にセクハラしてっ! いい加減にしなさい!!」
そこに立っていたのは、目の前に居る天使の様な少女、スリフィのお母上様でございました。
慌ててスリフィが立ち上がる。
そして素っ裸のまま、風呂の窓から逃げ出そうとする。
こらこら、女の子なんだから、素っ裸のまま外を出歩いたら…………いや、こっちの世界なら男の子の様な物だから、別に良、くはないか。
まあ、男の子がフルチンで走り回るのは昭和の時代ではよくあったそうだが。
しかし、すぐに捕まったようで外から声が聞こえてくる。
「なんで母さんが居るのさ、今日は遅いんじゃなかったの!?」
「お前と先生を二人きりにしてるのが心配だから早めに帰って来たのよ、そしたら案の定。このエロガキがっ」
「母さんだって先生の裸をしっかり見てたじゃないか、先生はボクのだぞっ!」
「あらやだ何を言っているのかしらこの子は、オホホ」
その後、ペシンペシンと何かを叩くような音が聞こえる。
そのたびにスリフィの悲鳴があがる。
合掌。
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