第6話
「たとえどれほど秀でた賢帝であろうとも、シフ・ソウランの魅力には抗えなかったんだよ」
しかも、そこで殺されたのは他国の者だけではない、自国の武将や貴族など、少しでもシフ・ソウランに色目を使った者を皆殺しにし、彼を独占しようとしたのだ。
気に恐ろしきはシフ・ソウランの、その魅力。
いや、もはや、ただの魅力と表現するには生易しい、それはもう、魔性の魅力である。
大陸一の賢人と言われた存在が、そのような愚かな行動に出るほど虜にしてしまう。
「そして王侯貴族が一気に亡くなちゃったからね~、国が成り立たない」
7つの王国は全て崩壊し、地方貴族が独立宣言などを出し、無数の小国家が誕生するようになる。
そこからは群雄割拠の時代となる。
「賢帝とシフ・ソウランはどうなったんだ?」
「実は暗殺に失敗した武将が居てね、賢帝はその場で首を刎ねられた」
「よくよく、首の飛ぶ時代だなあ」
「そうだね、先生に関わった人たちは、大概、斬首の憂き目にあっている」
だから、それはオレじゃねえって。たぶん。
「そしてシフ・ソウランは戦乱のどさくさに紛れて姿を消した、その後は……」
さてと、と言って、オレの膝の上から飛びのく。
そしてなぜか服を脱ぎ始めた。
すっぽんぽんの天使が言う。
「ほら次は先生の番だよ」
「…………しゃ~ない、それだと寒いだろ、風呂にでも行くか」
「えっ、一緒に入ってくれるの!? やったぁあ!」
そう言ってしがみついて来た天使の様な少女を担いで風呂に向かう。
風呂場に行くと、すでに準備が出来ていた。
コイツ、確信犯だな。
「先生なら、ちょろいから、なんとかなると思ったんだよ」
そう言って鼻歌を歌いながら風呂場に入って行く。
コイツ、ちょろいとか言いやがったな。
オレは風呂場に入ると早速、石鹸で泡を立てる。
それを自分の体と目の前の天使に塗りたくる。
「ほんとにココの石鹸は泡立ちが良いよな、これも未来知識で作り出したのか?」
「そうだけど、そうなんだけど…………ひどいよ先生~」
泡で何も見えないじゃない、と言ってくる。
こんな石鹸、作るんじゃなかった、と嘆いている。
だが、唯では転ばない。
背中を流してあげると言って、背中にへばりついて来る。
そして手を前に伸ばして、抱きしめるような形で胸などをまさぐって来る。
まあ、それぐらいは構わないだろう、未来を知る代償としては軽い物だ。
さすがに下の方に手を伸ばして来た時は止めたが。
「ウヘ、ウヘヘヘ……さすが先生、ここまでやっても拒絶されないなんて、最高だよ!」
ホントにダメなエロガキだな。
まあオレだって、美人のお姉さんと一緒にお風呂に入れると思えば、はしゃぐ気持ちは良く分かる。
なので邪険にするのも忍びない。
洗い終わってお湯で泡を流す。
風呂桶に入ると、さっそく向かい合って入ってこようとしたので、担いで後ろ向きにする。
ブ~ブ~と不満を流していたが、そういうのはもうちょっと大人になってからだな。
せめて、母親の様なボッキュンバンになったら、こっちからお願いしても良いぐらいだ。
「ほんとに~? じゃあさ、ボクが大人になったらさ、…………ボクのお婿さんになってよ」
「そうだな、それも良いかもな」
未来知識があるのなら、食べる物に困る事はないだろう。
コイツのお母さんも良いスタイルをしている。
将来性は十分にある。
と言うより、辺境といえども村長の娘だ。
玉の輿でもある。
命を狙われる心配もない。
よくよく考えたらかなりの好物件である。
まあ、それが本当に可能であるかどうかは別の話だが。
「やったぁああ! ホントに転生して来て良かったよぉぉ、男性とお風呂に入るなんて夢のまた、夢だったんだから」
涙を流しながら喜んでおられる。
千年後の未来って、どんなのって聞くと、
「未来ではね、本当に男性は貴重だったんだよ。人口比も100対1ぐらいの開きがあってね、男性を見たこともない女性も多数いたんだよ」
「どうしてそんなに開きがあるんだ? 今でも、さすがにそこまでの差はないだろ」
「まあ、いろいろとあったんだよね」
群雄割拠の時代、いろいろな国が栄えては消えて行った。
その中で、男性上位の国を立ち上げた人がいる。
トップは女性だったのだけど、男尊女卑を国政にしていて、男性陣はこぞってその国を目指したと言う。
「その当時、魔法を使わない道具――――――銃器や大砲、簡単な物でいえばクロスボウ、そんな兵器が盛んに開発されていたんだよ」
本来なら、男性ばかりの国など他の国からカモにされてもおかしくない。
だが、その国は銃器などを用いて立ち向かった。
世界中から男性が集まったおかげで兵士も多い。
呪文を唱える時間も必要ない、唯、引き金を引くだけで誰でも扱える。
戦闘訓練もほとんど必要とせず、一時は、世界の中心として栄えた。
そして男性をとられた各国は破滅の一途をたどる。
子が生まれないのだ、当然、人口も減って行く。
「そして男尊女卑を唱えた女王の傍には、首を布で隠した男性が、いつも寄り添っていたんだってさ」
「もしかして、その男性は……」
「そう、シフ・ソウランであったのではないかと言われている」
どこまで暗躍したら気が済むの? その世界線のシフさんは。
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