第28話 いっしょにぼうけんするのだー
――待てよ……いまの俺ってチートじゃないか?
実質AIチャットの神託スキルでこの世界のあらゆる情報がわかる。
実質3Dプリンタの再構築スキルで何でも作れる。
イチゴーたちが倒した魔獣の経験値と素材は全て俺のモノになる。
今後も放置ゲー理論で自動でレベルアップと素材獲得。
もしかしなくても、俺は今後、学年最強レベルであり続けるだろう。
莫大な素材在庫をバックに、あらゆるものを生成しお金を稼ぐだろう。
やれる。
俺がその気になれば、ハロウィーを守れる。
ハロウィーと正式にチームを組む。
ゴーレムたちに前衛を任せながらハロウィーを守らせて、常に最高の装備で武装したハロウィーに支援射撃をさせれば、俺らは有力チームとして名を馳せられる可能性は高い。
ハロウィー自身のレベルが上がれば、昨日の男子たちみたいな連中だって、簡単に手を出せないだろう。
ただ、ハロウィーとチームを組んだら、貴族に復帰できないかもしれない。
そう思うも、力なく地面に座り込み、はかなげな笑みを作り虚勢を張るハロウィーの姿に、俺は自嘲した。
チートのある今、何を我慢するんだろう。
ハロウィーは凄くいい子だ。
こんないい子が仲間なら絶対に楽しいし、いいチームになれる。
ハロウィーを見捨てて貴族に戻るのと、ハロウィーと一緒にチームを組みながら貴族に戻る方法を探す生活。どちらがいいかなんて決まっている。
最初はリーフキャットから、二度目はクラスメイトたちの疑惑から、そして三度目はモリハイエナから、三度も俺を救ってくれておきながらそのことをまったく誇らない彼女とチームを組んで一緒に強くなりたい。
それが俺の素直な気持ちだ。
「俺さ……後衛を探していたんだ」
「え?」
顔を上げた彼女の濡れた瞳と視線を合わせながら、俺も草地に腰を下ろした。
彼女と同じ目線の高さで、穏やかな声でお願いする。
「俺と、チームを組んでくれないか?」
ハロウィーは顔を赤くしながら戸惑い、両手を左右に振った。
「いやそんな! ラビはサンゴーちゃんたちがいて凄くて、わたしなんかと釣り合わないよ!」
「そのわたしなんかに、俺は三度も助けられているんだけどな」
「でもわたしなんてただ狙撃が得意なだけのノロマだよ!」
「俺が仲間に求めるのはスペックじゃない」
謙虚過ぎる彼女に、俺はちょっと語気を強めて言った。
ハロウィーも、手を止めて俺の言葉を待ってくれた。
「俺が求めるのはただ一つ、人間性、フィーリングだ」
身を挺してハロウィーを守った頼れるのんびりナイト、サンゴーを両手で持ち上げると、彼女に突き出した。
「こいつらを可愛いと言ってくれる。だから、俺はハロウィーとチームを組みたいんだ。引き受けてくれないかな?」
両手をぱたぱたさせるサンゴーを押し付けると、彼女はそっとサンゴーを受け取り、抱き留めてくれた。
ハロウィーの腕の中で、サンゴーは短い手を伸ばして、彼女の肩口をつかんだ。
『いっしょにぼうけんするのだー』
ハロウィーにはサンゴーの言葉は見えていない。
だけど何かを感じてくれたらしい。
彼女の濡れた瞳から大粒の涙が溢れ出した。
でもそれは悲しみから来るものではないのは明白だった。
大きなタレ目を幸せそうにゆるませ、桜色の唇で弧を描き、彼女は頷いた。
「うん! いっしょにがんばろうね!」
彼女の目から溢れる涙は宝石のように美しく、そして尊かった。
こうして、俺はハロウィーと一緒に学園に戻り、正式にチームを組んだ。
◆
学生寮に戻った俺は、ふと気づいた。
――宝石と言えば、ダイヤモンドって確かただの炭素の塊なんだよな?
気になった俺は、脳内でイチゴーに聞いてみる。
――なぁイチゴー。そこらへんの炭素からダイヤモンドって作れるのか?
『つくれるー』
メッセージウィンドウの一文に驚きながら試しに直径一センチのダイヤを手の平に作ってみる。
その透明度に度肝を抜かれた俺は、天を仰ぎ見た。
――これ、まじで金だけで爵位買えるんじゃないのか?
ハロウィーにも言ったけど、自律型ゴーレム生成スキルがチート過ぎてちょっと怖くなった。
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人工ダイヤは現実でも作れるそうですね。品質も天然ものと同じとか。
本物か偽物か、どっちがいいのか、そもそも人工って偽物なのか。悩ましい。
ちなみにルビーやサファイアも作れるそうですが、人口品は価値が低いのと製造コストがかかるので割に合わないそうです。
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