第23話 最後の晩餐にはしたくない


 色々と用意している間に魔王軍襲来の前夜になった。


 すでに準備は万端だ。アーレーン王には明日に隣国の秘密兵器が攻めてくると警告しているし。


 勇者パーティーたちもそれなりには強くなった。本編終了後ほどのレベルには達しなかったが、地球のアイテム込みなら魔王相手でも渡り合えるだろう。


 なので俺ができることはほぼしたのだが……。


「問題はゲームでまだ俺が死んでることなんだよな……」


 俺は王都の屋敷の部屋でうなっていた。ちなみに日本製のライトで部屋を照らしてるので夜でも明るい。


 さっき地球に戻ってゲームをプレイしたが俺はまだ死んでいたのだ。ここまでやったのにまだ。


「ここまでやってダメならなにしても死にそうだよね」

「スレイン様……」


 クラエリアとミアレスちゃんも俺を心配してくれているが、正直打つ手がもうない。


 俺はやれることを全てやったのになんでまだ死ぬんだよ。どれだけ弱いんだよ俺。


 だが俺にはまだ希望がある。


「……全てがゲーム通りに動くわけじゃないからな。なんとか当日に頑張れば生き残れるはずだ」


 ゲームのストーリーは俺の行動によって常に変わっている。ならば魔王軍が攻めて来た後の王都でもそれは同じだろう。


 つまり魔王軍相手にうまく立ち回れば俺は助かる可能性がある。


 そもそもゲームのストーリーが絶対ならば、俺がどれだけメチャクチャしても最初から変わらなかったはずだからな!


 ……まあ半分くらいは自分の不安への言い訳なんだけどな。


「スレインー、もう美味しいモノ食べて寝ちゃおうよ。ここまで来たら当たって砕けよう」

「砕けないために頑張ってきたんだが」

「大丈夫です! スレイン様が死ぬはずありませんよ!」

「ありがとうミアレスちゃん」


 ともかくだ。もうやれることはない。


 ならばあとは英気を養うべきだ。明日頑張るために美味しいモノでも食べよう。


「というわけで日本で買ったピザとか食べようと思う」

「ピザー! あの平たくて美味しいやつ!」

「チーズがトロトロで美味しいですよね……ふんわりしたパンがたまりません」

「なにいってるのミアレスっち。パリパリで硬い生地がいいんじゃない」


 おっといきなりピザのパン生地で戦争が始まりそうだ。


「どうせ明日には戦争するんだから今日はやめとこうぜ。どちらもあるから。他にも肉とか魚とか色々あるぞ」

「わーい!」


 ということでテーブルにピザとか刺身とか肉とか色々出して、ビール片手に飲み会が始まった。


「だいたいさー。魔王軍が急に現れるのがおかしいんだよなぁ。あいつらがいなければ世界が平和だってのに、物語の都合で出しやがって!」

 

 思わずビール缶をテーブルに叩きつける。


 魔王軍なんていなければ平和なのに! なんでそんな異物を出してくるんだよ!


「平和すぎる話は面白くないからでしょ」

「実際に住んでる者からすればクソみたいな話だちくしょう! 魔王なんていらないんだよ!」


 そりゃ読み物的には魔王がいた方が盛り上がるだろうさ!


 でも実際にその世界で生きる村人Aの気持ちになってみろ! スローライフとかの方が百倍いいだろうが!


 もっとその世界に生きてる人間に寄りそうべきだろ! 


「はー……くそぅ。絶対死んでやらねぇからな……」

「スレイン飲みすぎじゃない? 明日に響くよ?」

「スレイン様そろそろ寝ましょうよ」


 言われてみれば缶ビール三本くらいは開けてるか。500mlの。


 これ以上飲んで二日酔いで魔王と戦うのは流石に嫌だな。


「仕方ない、そろそろやめておこう。寝るかぁ……」


 そんなわけで日本に戻って歯を磨いて、またゲーム世界へと戻って来る。


 日本で寝ればいいだろって? そうしたらゲーム世界の時間が進まないんだよ。


 明日になっても二日酔いが治ってなかったら日本で休むだろうけど。


「じゃあおやすみ……」


 と言いつつベッドに入ると、


「じゃあボクも寝るー」

「わ、私もお邪魔します……」


 とクラエリアとミアレスが俺のベッドに入ってきた。


 なんで? 二人のベッドもちゃんとあるのに?


「二人とも自分のベッドがあるだろ。酔ってるのか?」

「酔ってるのはスレインでしょ」

「す、少しでもスレイン様が元気になればと……邪魔でしたらすぐ出ていきますから……!」


 ケラケラと笑うクラエリアと顔を真っ赤にしているミアレスちゃん。いやよく見ればクラエリアの顔もほんのりと赤い気がする。


「いや邪魔ってことはまったくないし嬉しいけど……」

「じゃ、じゃあ今日は一緒に寝よ?」

「わ、私も……」


 ………………ま、まさかこれはっ。いけるのでは?


 命をかけた戦いの前夜、ベッドで美少女二人と。それに二人とも俺を嫌っていないどころか少しは好意を持ってくれている(と思う)。


 これはいけるのでは?


 ヤバイ魔王軍と戦うよりよっぽど緊張する。だがここで臆したら負けだ。


 死ぬかもしれない戦いの前だから怖いものはないっ! 行く……!


 俺が意を決した瞬間、いきなり外から轟音が響いた。


「た、大変だ!!! 化け物だ!!!! 化け物がいるぞっ!!!!」


 ……魔王軍、お前らは俺をどれだけ怒らせれば気が済むんだ! 根絶やしにしてやる!

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