第24話 絶対許さねぇ


 俺たちが急いで家から飛び出すと、すでに王都内のいたるところで兵士と魔物の戦いが始まっていた。


「おらぁ!」

「ぐげぇ!?」


 兵士たちは俺の配ったプロテインの力もあってか、今のところは魔王軍の魔物相手にも優勢だ。


 だが周囲に見えるのは雑魚魔物ばかり。魔王軍幹部は見当たらない。


「おのれ魔王軍め! なんて卑劣にして最低の奴らなんだ! よりにもよってこんな時を狙うなんて! 人の迷惑を考えろ! 俺が成敗してやる!」


 俺は怒りに任せて雷魔法を放って周囲にいた魔物を一掃する。


 舐めるなよ! 俺だってゲームの物語中盤までは通用する力はあるんだぞ! チート装備込みで!


「おお! ラグナロク騎士爵だ!」

「隣国の卑劣な不意打ちに怒っているぞ!」

「夜闇に紛れた卑怯なふるまいに対して、正義の怒りに震えてらっしゃるのだ! 俺たちも続くぞ! 卑劣な奴らに負けるな!」


 兵士たちは俺の怒りに呼応して士気を高めていく。


「スレイン様、正義のために怒ってるんですか?」

「そんな殊勝なものじゃないと思うなー」


 ミアレスとクラエリアが突っ込んでくるのが余計に悲しい。おのれ魔王軍……お前たちさえいなければ……! 俺は今頃っ……!


「よし雑魚は一般兵に任せても大丈夫そうだ! 俺たちは魔王軍幹部を探すぞ! この怒り、奴らの息の根を止めねば許せん!」

「おお! スレイン騎士爵が燃えている! 王都を守ろうという気迫に満ち溢れておられるのだ!」

「兵士の俺たちが負けるわけにはいかないなっ!」


 兵士たちがなぜか士気を上げる中、俺たちは王城へと走っていく。


「スレイン! どこに行くつもり?」

「魔王軍の気持ちになれ! 奴らの狙いはどうせアーレーン王だろ! なら玉座の間だ!」

「流石スレイン様です! 魔王の考えはお見通しなんですね!」

「精神的に似てるだけだったりして」

「そんなわけあるか! まあ王城には勇者パーティーも泊まらせてるから、俺はいらないかもしれないけどな!」


 そうしてしばらく走っていると、俺たちの前を塞ぐようにオーガの群れが現れた。


「おがぁ!」

「邪魔だっ! 二人とも乗り込め!」


 俺はマジックバッグから自動車を取り出して、運転席に乗り込んでオーガたちをまとめて轢き殺す。


 そしてまた自動車をマジックバッグにしまって走り出した。


「ねえこのまま自動車に乗って移動したほうがよくない?」

「ダメだ! 流石に自動車での移動は危ない! 街の人を轢いたらシャレにならない!」

「じ、自動車って移動手段ではありませんでしたっけ……なんか魔法攻撃みたいになってませんか……?」

 

 ミアレスちゃんの発言はスルーして走り続ける。何度か魔物が立ちふさがってきたので同じように自動車アタックで倒した。


 そうして王城の門前にたどり着くと巨大な虫の魔物が待ち構えていた。


 両手が鋭利な鎌になっている巨大なカマキリ……死蟲イビルバグ! 


「人間よ、悪いがここは死地だ。死神すら恐れる我が鎌によって逝くがいい!」


 イビルバグは本来なら四天王最強の魔物だ。特に厄介なのは二つの鎌から繰り出される防御力無視の連続攻撃。


 その一撃いや多撃は勇者ですら体力の八割を削られてしまう。当然ながら後衛職が受けたら耐えられない。

 

 しかも必殺技のデススラッシュがある。当たればどんな相手でも即死されるという恐ろしい技だ。四天王元最強は伊達ではない。


「だがなあ! お前の対策はもうしてあるんだよ!」


 俺はマジックバッグから殺虫剤スプレーを取り出して、周囲に撒き始めた。


 するとイビルバグは僅かに下がって警戒し始める。


「ぐっ! なんだその不快な煙はっ!」

「お前ら虫野郎を永遠に黙らせる煙だよ!」

「ほう! この私を煙で殺すと! だがその煙はあまり遠くには届かないようだが? 近づけば我が双鎌の餌食にしてくれるわ!」


 確かに殺虫剤の射程範囲は短い。だがそんなことはとっくの昔に想定済みだ!


「コールウインド!」


 俺は風魔法で竜巻を呼び起こしながら殺虫剤を周囲にまき散らす。そして殺虫の煙を巻き込んだ竜巻が、イビルバグへと襲い掛かり……!


「ぐえええええぇぇぇぇぇえええ!?!?!? ぎえええええええぇえぇぇぇぇぇ!?」


 殺虫剤の竜巻に巻き込まれたイビルバグは、断末魔の悲鳴をあげ続ける。


「虫野郎め! 地獄の苦しみを味わい続けろ! よしあいつは放置して行くぞ!」

「なんかボクたちの方が悪者っぽくない?」

「そんな気がしてきました……」


 そうして俺たちは王城に入って廊下を突き進むと、俺たちを魔物たちが何度も邪魔してきたが、


「キキキー! このコウモリンがお前たちの相手だっ!」

「くらえ黒板ひっかき超音波ぁ!」

「ぐえええええええ!?」

「よくもやってくれたニャ! このニャーが」

「ほうらマタタビだよー!」

「にゃーん!」


 アイテムを駆使してノーダメでなぎ倒していく。


「ば、ばかな!? なんだあの人間は!? 初めて見たはずの俺たちの弱点を的確についてくる!? だがこのナメクジンの前では」

「天からお塩!」

「ほげえええええ!?」


 ゲーム知識舐めるなよ! 魔王軍の全ての魔物を知ってるんだ!


 しっかりと各魔物の弱点をつけるアイテムを揃えてるんだよ!


 そうして俺たちは無双しながら玉座の間に入る扉の前に到着した。すると中から爆発音が聞こえてくる。


 どうやら勇者パーティーたちと魔王軍が戦っているようだ。だが勇者パーティーは鍛えた上に魔王幹部対策のアイテムも渡している。


 つまり優勢なのは間違いないだろう。そこで俺たちが後ろから不意打ちすれば勝ち確定だ!


「行くぞ二人とも! コッソリ入って魔王の背後をついて、弱点のアイテム使ってぶっ殺す!」

「酷い戦い方だなぁ……」

「スレイン様は貴族ですよね……もう少し周囲の目を気にした戦い方をした方が……」

「勝てば官軍なんだよ! 行くぞぉ!」


 俺は慎重にコッソリと音が鳴らないように扉を開いた。すると玉座の間では。


「ほう、また人間か。だがもう遅いがな」


 魔王が玉座に座っていて、大勢の人間が床に倒れていた。


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