第22話 特機戦力だけに頼ったらダメ


 さて勇者パーティーたちには強くなってもらうが、当然ながらそれだけでは足りない。

 

 なにせ魔王軍が攻めて来るだからだ。なんで勇者パーティーだけじゃダメだって? 


 考えて欲しい。たいていの場合で主人公たちはいつも攻め側ではなかったかと。


 主人公たちが魔王城に侵入し魔王を倒して、世界は平和になるというのは王道モノだ。


 だがこれは主人公たちは暗殺者みたいなものだ。ようは敵の本拠地に侵入して避けられる戦いは避けて、見張りの敵の一部を倒して魔王という大将首を殺している。


 だが今回はそれは無理だ。まだ魔王軍はこの世界に現れておらず、出現すれば即座にアーレーン王都に攻めて来るのだから。


 つまり主人公お得意の暗殺は通用しない。となれば魔王軍との王都防衛の戦争になるわけだ。


 魔王軍の大量の兵士相手から王都を防衛しなければならない。ならば主人公パーティーだけでは絶対的に手数が足りない。つまり一般兵士が必要だ。


 軍隊を相手に防衛するならやはり数が必要なのだ。


 そういうわけで俺はアーレーン王城の玉座の間で、王との謁見を行っていた。


「なに? 隣国が強力な魔物を作り出して我が国を攻める準備をしていると?」

「ははっ!」


 俺はアーレーン国の軍備予算拡張のために大嘘を言い放っている。


 隣国がアーレーン国に攻めるような情報もなければ、強力な魔物を作り出すなんて話もない。つまりでっちあげだ。


 だが仕方ない。異次元からいきなり魔王軍が攻めてくるなんて、この世界においても子供の戯言にしか聞こえないからな。


 信じられない真実よりも信憑性のある嘘だ。ようは強力な敵が攻めて来るからと警戒させておけばいいのだから。


「これは確かな情報です。私が隣国の王都へ侵入したところ、戦争の準備をしておりました。しかも恐ろしい魔物が存在していました……実は私は風景を絵にする魔法道具を持っていまして」


 俺は王に向けてインスタントカメラのシャッターを押す。インスタントカメラは撮った瞬間に写真が出てくるので、玉座に座った王の写真が出てきた。


 俺は王に対してその写真を見せると。


「な、なんと!? これは余ではないか!?」

「はい。この魔法の道具は風景を切り取って絵にする道具なのです」

「……こ、こんなに太っていたか? もう少し痩せてるはずじゃが。その道具は本当に風景を切り取っているのか? 怪しい……」


 自分の不摂生をカメラのせいにしないで欲しい。ただ直接言うと流石に不敬罪なのでここは。


「光の加減で少し肉が増えたように見えているのでしょう。ですがこの道具が大雑把に現実の風景を絵にするのは分かってくださいましたか?」

「うむ。余はここまで太ってないがな」


 うるさいあんたわりとデブだよ、と言いたくなるのをこらえながら、俺は新たに二枚の写真を取り出して王に見せる。


「これが隣国で発見された恐ろしい魔物です」


 王はその写真を見ると驚愕して目を見開いた。


「な、なんと!? 二体とも人よりも遥かに大きいではないか!?」


 もちろんだが隣国は魔物なんて用意してはいない。なのでこの写真の魔物たちはこの世界にいない生き物で、


「片や丸太のような足に巨大な牙、そして鞭のような鼻! 片やドラゴンすら勝てぬほどに長い首の化け物じゃ!」


 ようはゾウとキリンである。どちらも知らない人からしたら化け物だよね。


 彼らなら普通にこの世界でも魔物としてやっていけるだろう。特にゾウは半端なドラゴンともタメはれるんじゃなかろうか。少なくともオーガよりよっぽど強いと思う。


 まさに日本の誇るモンスターだ。こいつらに勝とうと思ったら恐竜でも連れてこいと言う話だろう。


 あ、ちなみにどちらも動物園で撮った写真ね。比較対象としてミアレスちゃんに一緒に写ってもらってる。


「隣国はこれらの魔物を量産しています! こちらがその証拠の写真です!」


 次はネットで出てきたゾウの群れの写真と、キリンの群れの写真をそれぞれ見せびらかす。


「な、なんと恐ろしい!? し、しかしこんな風景が隣国にあったかのう……」

「あの魔物が生きる土地は枯れてこうなるのです!!!」


 風景がサバンナっぽいのバレたが勢いで押し切ってやる! 仕方ないだろゾウの群れの写真なんてだいたい風景決まってるし!


 中世ヨーロッパっぽい風景と、ゾウの群れの写真は見つからなかったんだよ! そりゃないわな!


 頼む王様! このまま納得してくれ! 


「な、なんと……! 隣国はそれほどまでに凶悪な魔物を用意したというのか……!」


 よっしゃあああああ!!!


「はい! 急いで軍備を増強して備えなければ!」

「まずは隣国へ使者を送り話し合いを……!」

「お待ちください! 隣国への使者はダメです!! この情報が漏洩したと知ればすぐさま攻めて来るかもしれません!?」


 そんなことされたら嘘がバレてしまう! ええいなんでこんな綱渡りみたいなことしないとダメなんだよ。これも全部魔王軍が悪い!


「た、確かにそうじゃな。余たちが切り札を知っていることを教える必要もないか」

「その通りです! 流石は英知にして深謀なる王です! どうか軍を増強して力を蓄えましょう! その間に私があの魔物を倒す方法を考えますので!」

「うむ! ならばラグナロク騎士爵よ! 見事にやってみせよ!」

「王よ! 実は私はあの時の薬を作った賢者に、兵士の力を増す魔法の粉プロテインを授かりました! よければ兵士に配りたいのですが!」

「うむ! そなたの言葉は全て真実であろう! よいぞよいぞ!」


 全て大嘘なのだが黙っておこう。


 ということで無事にアーレーン国の軍備を拡張することに成功した。


 正直魔王軍相手には焼け石に水ではあるが、やらないよりは絶対マシだろう。

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