第16話 『安全性』
「あ。勿論、安全性については十分に配慮しておるぞい」
即座にドク博士は、先程の自分の発言を訂正するかのように、顔の前で右手を『ぶんぶん』ともの凄い勢いで振り、タイムマシンの安全性を示します。
「イヤ、全く信じラレナい、と言うカ、無理がアリますヨ」
同様に助手くんも、オウム返しの様に右手を『ぶんぶん』と振ります。その右手は流れる動作でタイムマシンに向けられると、この質問をぶつけました。
「大体、タイムマシンそのものガ粉々にナッテしまったラ、ソレこそタイムスリップが出来ナイジャ無いですカ」
「タイムワープはちゃんと出来るぞい。爆発の威力を利用してな」
助手くんは再度、顔の前で右手を「違う、そうじゃない」という素振りで『ぶんぶん』と振ります。が、その腕の振りも虚しく、ドク博士の説明は続きます。
「こう、な? タイムマシンがバーン、と爆発するじゃろ?」
足の指先から頭のてっぺんまで、身体全体を使ってとても『のびのび』と説明をしようとするドク博士ですが、端から見ると運動不足感が丸分かりでした。
「するとじゃな、搭乗者が爆風で吹き飛ばされるわけじゃ」
「イヤいやイヤ」
助手くんの右手は三度、顔の前で『ぶんぶん』と振られますが、ドク博士は楽しそうに説明を続けます。
「その爆風の勢いで、タイムスリップ出来る、という訳じゃな」
「異世界転生丸ダシの説明ジャないデスカ。誰ガどう聞いテモ」
助手くんの突っ込みも最もでした。
一呼吸の間を置いて、助手くんは自分の顔がアップになる程にドク博士に近づき、核心を突くような一言を放ちます。
「マサか博士……記憶を保持シタまま、未来や過去に転生して、『コレが、本当のタイムスリップ♪』とか、言いませんヨネ?」
ドク博士は、にぱりと笑みを浮かべると、両腕を同一の方向に曲げ、両手首も同一の方向へ向けると、何故か、フラミンゴのような片脚立ちをし、両の人差し指でそれはそれは楽しそうに助手くんを『びしっ』と、指し示します。
記号で表すなら、左目は『>』、右目は『<』、口は『▽』と、いった感じでしょうか。
「お♪ 旨いこと言うのう、助手くんは♪」
「言ってナイです」
しゅ~、と部屋中に音がする中、助手くんは間髪入れず、顔の前で右手を何度目かの『ぶんぶん』をします。
「ソレに博士。例えタイムスリップ出来たとシテも、ワープ先からはドウやって戻ってクルのデスか? タイムマシンは粉々になってイルンですヨネ?」
ドク博士は、早くも片脚立ちを止め、立っていた側の足首を床で『ぐりぐり』しながら答えます。
「うむ。その辺も、ぬかりは無いぞい。あっちで本体が修復されるよう、プログラムされておるからな」
「ハ?」
その言葉に、助手くんは目が点になりました。元々、黄色い点のような『◎』ですが。
「なんというかの〜? 吹き飛んだタイムマシンが、こう、『くきゅ〜』となって、元通りになるんじゃよ」
胸元で『わきわき』しながら球体のように広げていたその両手を、ドク博士は収縮するように狭めていきます。
「ドウいう原理ナンデスか?」
「どういう原理かの〜?」
助手くんの突っ込みに、ドク博士は顎に手をそえながら思案してしまいます。
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