第21話 スキルとは別の戦闘手段



 「ハアハア」


 ボスの間の奥の階段から降り、三層に到達すると配信者の一人──卑拳のゲースが呼吸を荒くし始めた。

 何もしてないのになぜ。


「トーシロが。警戒しすぎて体に回す魔力のコントロールをミスったな」


「体に回す魔力? なんだそれ?」


『攻略者が習得する基本攻略術の一つである身体への魔力エンチャントのことと思われます』


「スキル以外にも攻略に使えるものがあるのか」


 スキルが全てだと思っていたが、それ以外にも戦闘手段があるとは。

 強化系のスキルを持たない人から言えば福音のようなものだろう。

 身体能力が上がるというのは回避も火力も上がる。

 スキルに合わせれば鬼に金棒である。


『メリットが大きい代わりに魔力を常時消費するというデメリットがあります。さらに熟練度が低ければON OFFもままならないのため、下手をすれば魔力を消費し尽くしてHPを消費することになるため非推奨技能です』


「取り消せよ、今の言葉!」


 バビロンから解説を受けるとゲースが吠えた。

 おそらく状況から見てHPを消費して苦しんでいるようだが、それでもキレ芸が売りの彼の配信スタイルで押し通すつもりらしい。


「本当のことだろうが。文句言ってる暇があるなら熟練度上げて自力でなんとかしろ。言っておくが俺はお前には手を貸すつもりはないからな」


「俺を見捨てるつもりかよ、芹沢! お前が俺を見捨てたこの一件ネットで拡散するぞ!! お前の人生を破壊してやる!!!」


「好きにしろよ。ダンジョンに潜ってて地上にはほとんどいない俺にはノーダメージだからな」


「……みんな、生きててくれてありがとう」


 ・戦わずしてダンジョンに敗北した上にレスバでも負けてて草

 ・あかん、クズがいい人ぶり始めるのはガチで死ぬヤツ

 ・ゲースぅぅぅ!!

 ・敗北者ァ!


 結構危険な状態ぽいな。

 死人が出られても嫌だから急いだ方がいいか。


「今のところモンスターは目に見える限りゼロだし、早めにこの層は切り上げよう」


 オークの時と同様、ドローンピットを先行させるとボスの間の扉が全開にされており、バビロンより一回り大きい人狼の姿が見えた。

 こちらを誘うように手招きをしている。


「ボス一体だけの層か。なんかボスさっきまでのボス達と比べて強うそうだな」


『隠し扉発見。転移陣を発見しました』


 人狼を凝視すると背後の壁が透過されて表示され、青いグラフィックで転移陣が表示された。


「こいつを倒せば外に脱出して、ゲースをなんとかできそうだな」



 ───


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