近所の人の会議~6通目の手紙
神様へ
僕は世渡り上手なんだ!
芽依のお母さんたちが、僕はこっちのクラスだし、あっちのクラスの愛たちとも仲良くできて、世渡り上手だって言ってたんだ。
この間の悠希のお母さんと愛のお母さんのケンカの話だった。
「悠希のお母さんは、愛のお母さんが自分の子供を誘拐したと思っているのですか?」
「はい。うちの子が、成績改ざんしてる所を見たって言ってたんですよ?」
「成績の改ざんって言うのは、この間、小学校で子供たちの成績ファイルが書き変わっていたっていう事件ですよね」
「そんな事までして、優秀なクラスにいきたかったのかしら」
「やってないですよ!」
「うちの子が、あなたが職員室に一人でいるのを見たって言ってたんですよ!」
「それをもくげきされた愛のお母さんは、それが公にならないために悠希を誘拐したって事ですか?」
「そうです」
「本当にやってないんです! どんな風に言っていたのか教えてもらえませんか?」
「うちの子がウソをついているとでも言うの!」
「いえ、そういうわけではないんです。でも、やってない事をやったって言われても……」
「事件があったとメールが来た日、悠希にその話をしたんです。そしたら、悠希が、書き変えられたのって水曜日かって聞いてきました。なんでか聞いたら、職員室に一人のお母さんがいたって。だから誰がいたの? って聞いたら愛のお母さんだって。悠希は言いにくそうに言ってきたんですよ? なのに、誘拐するなんて」
「水曜日って言った日は本当にあってたんですか?」
「はい。メールでそう来てました」
「かん違いしていたという可能性はないのか」
「あの、それよりいなくなった時の状況を整理していきませんか? 悠希くん以外にも唯花ちゃんもいなくなっています。なので、この話は信ぴょう性に欠けると思います」
「確かに、本屋さんがそう言うならそうだな」
「唯花ちゃんはお兄さんと一緒にいる所を見かけたねぇ、その後近くに陸くんのお父さんを見かけたねぇ」
「井上さん、何か見たりしましたか?」
「すぐに仕事場の工場の中に入ったので、唯花ちゃんもあそこの子も見てないです」
「じゃあ、何もわからないのか……」
「ここら辺って、商店街とか工場とかに防犯カメラとかありますよね?」
「ああ、そうだね」
「確認させてください」
「いや、そこまでする必要はないんじゃないかな? 警察でもあるまいし」
「工場は無理なんですか?」
「そうですね。そこまでは……プライバシーもありますし……」
「でも、こっちは悠希がいなくなってるんですよ?」
「まだ事件って決まった訳じゃないですし……」
「こんな時に、本当に遊ばせて大丈夫かしら?」
「そうよ。やっぱり遊ばすのは良くないんじゃない? お姉さん」
「それは……」
「ほんとよ! あなた、病気で子供ができないから子供と触れ合いたいって言ってたわよね?」
「子供が欲しくて、誘拐してるんじゃないの?」
「外で遊ばすのは、必要な事だと思います。遊ばないと、子供もストレスを感るでしょうし」
本屋さんの声の後、誰も話さなくなった。本屋さんがどうしてみんなから信用されているのかはわからないけど。
「私は、誘拐なんてしません。お子さんと仲良くさせて頂いてますし、誰かが誘拐したみたいなのはやめませんか?」
「……」
「人がやってないっていうなら、なんでいなくなってんの?」
「事故とか、迷子とか? 危なそうなところってたくさんあるじゃないですか! 森とか、建物の裏とか、ここら辺からは少し離れますが、空き家とか」
「今の情報だけで犯人をさがしてもむだです。引き続きそうさくと警備をしましょう」
「颯太と湊斗じゃん! ここにいたんだ。何してんの?」
本屋に、彰たちが入ってきた。
「何それ? 親の声じゃね?」
僕たちが、親の会議を盗聴していた事がみんなにバレてしまった。
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