第32話 人間のいない世界


 10年後…


「アキ…もうタカは」

「あぁ、久しぶりに思い出していただけだよ」

「タカは魔王になったのかしら」

「さあな、帰ってきてないのをみるとそうなのかもな」

 タカの家の前を見ていると、


「なーにしてんだ?アキ」

「…た、タカ、お前こそ」

「あぁ、俺か?買い出しだ」

「買い出しってお前、俺がどんだけ歳とったと思ってんだよ!」

「ふはは、そういえば歳とったな!」

「今日は逃さないからな!」

「俺は帰らないと」

「どうせ時魔法でどうにでもできるだろ?」

「はぁ、わかったよ」

「んじゃサイラスも呼びに行こう」

「わかったわかった!」

「10年後な!俺だけ歳食ってるのは嫌だからな!」

「あいつも魔人だから歳食ってねーんじゃないか?」

「うるせえ!10年後だ!」

「はいはい!」

 前と変わらないタカとアキにほっとするエリサ。


「飲め飲め!なんだ!お前!あの別れ方は!」

「そうだぞ!俺なんてこんな老けたアキ見たくなかったぞ!」

「お前サイラス!ぶっ飛ばすぞ!」

「フハハ!こっちは変わらんなぁ!」


「んなことねぇぞ?2人目もできたし、ダンジョンもそれなりにやってるからな!」

「そうか?エリサがよく許したな」

「まぁ、いろいろ金があるんだよ!」

「なら俺がやるよ」

「要らねえよ!自分で稼ぐ!」

「あはは、そうだな!」

 と酒を浴びるように飲みそのままタカの家に上がり、宅飲みになると、


「ふぅ、結局どうなったんだ?」

「そうだな、それを聞かないとな」

 2人は酔いが覚めているようだ。


「まぁ、人間のいない世界にしたよ」

「…」

「…そうか」

「まぁ、色々あった、勇者召喚もされたよ」

「それでもここにいるってことは、勝ったのか?」

「まぁな、まぁ生きてるうちに回復して元の世界に戻してやったがな」

「ふ、」

「優しい魔王だな」


「まあな、これではじめて人間のいない世界もそれなりに発展することがわかった」

「そうか」

「人間のいない世界か、考えたこともなかったな」

 と天井を見上げるアキ。

「あのな、獣人とかエルフ、花人のどれが一番強くなったと思う?」

「えー、獣人か?」

「エルフじゃない?」

「正解は花人だ」

「何もできないんじゃないのか?」


「花人は神に近い存在だからな、逆に地に近い神として崇められてるよ」


「そうか、そんなことになるんだな」

 と起き上がり言うアキ、

「俺らのとこはやっぱり人間が一番だな」

 と言うサイラス。


「俺らは違う場所にいるけど人間しかいない世界、花人がいない世界、人間がいない世界、どれも結局は優劣をつけたがるみたいだな」

 タカはそう言うと、

「それじゃあサイラス送るよ」

「あぁ、アキ!頑張れよ?」

「あぁ、サイラスもな!」


「送ってきた、アキもそろそろ帰ったらどうだ?」

「ふぅ、魔王タカか…俺は勇者になると思ってたんだがな」

「ハハッ、勝つことが正義だ。何をしようとも力がないとな」

「そうだな。それじゃあ帰るか」


「タカ!元気でな!」

「あぁ、アキもな」


 

         完

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才能の種 あに @sanzo

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