第13話 薬


「こっちも話していいかオッサン?」

「なんだ?」

「俺を帰してくれないか?」

「なぜ?」

「こっちには女がいるんだぜ?どうなっても知らな!おまっ!」

 剣が勇者の喉元に光る。

「恥を知れ!お前は勇者であろう!そのようなことをせずとも魔王を倒せば帰れる!」

「け、剣を下ろせよ…わ、わかったよ」

「すまないな!これグハッ!!」

 背を向けた瞬間男の子は刺された。

「なにを血迷ってんだよこのちびすけ!お前に従うのもつかれんだよ!」

「グッガハッ!」

「ヒール!お前は最低だな?」

 俺は男の子を治療すると剣を向ける。

「おいおい!俺は勇者だぞ?しかも日本人を斬るつもりかよ?」

「はぁ、お前はちゃんとしてから帰れよ?最初からその道はあっただろ?俺にはなかったから自分で探したんだ。お前なんかを易々と帰すわけないだろ?」


「おい、オッサン?俺が遊んでるとでも思ったのか?流石にキレるぞ?」

「サンダーショック」

「グアァァアァ!!」

「キレてみろよ!こっちはとっくにキレてんだ!」

「ぐっ!グアァァアァ!」

 俺はサンダーショックを使う。

「ま、待ってください!勇者ですので殺すのは」

「はぁ、殺されかけといてよく言うよ」

 俺は縄を出して勇者を縛る。

「グッ!てめぇ!解け!」

「チッ!口も閉じさせれば良かったな!」

「あ、ありがとうございます」

「俺がアーシェと会うまではこの縄を解くなよ?」

「はい!わかりました」

「クソッ!」

 勇者はこいつしかいなかったのかよ?

「それでは王の前に行きましょう」

「分かったよ」


 中央に行くと膝を立てて座り頭を下げる。

 男の子のを習う形だ。

「おもてをあげよ」

「は!」

 ゆっくりと王の顔を見る。

「其方が隣にいるものに要らぬと捨てられたのか、申し訳なかったのぅ」

「いえ、それ以上の者に出会えましたので」

「そうか、魔王討伐に力を貸してくれないか?」

「私は要らないと言われましたし勇者とも仲は良くないので断ります」

「ふぅ、そうか!ならばあとは妃と話せ」

「貴方があのシャンプーとコンディショナーを?」

「そうですね、私達の世界では一般的な物ですから」

「そう!私はもっと綺麗になりたいのだけれど他にはないのかしら?」

「…また手に入れ次第ギルドに卸しておきます」

「分かったわ!よろしく頼むわね」

「では私はこれで」

「私も失礼します」

 と外に出ると、アーシェを迎えに行く。

「何処にいる?」

「もう門のところにいるはずだ、行く前に指示しておいた」


 走って門のところに行くとアーシェと抱き合う。

「もう大丈夫です」

「あぁ、悪かった」

 馬車に乗ると、

「すまなかった。そしてありがとう」

「お前名前は?」

「サイラスだ」

「覚えておく!次はないからな?」

「あぁ、分かっている」



 そして宿に戻るともうあたりは暗くなっている。馬車を預けにリズとリシェルが行った。

 俺たちは宿屋の女将に謝られたが王が相手ならしょうがないと言って部屋に戻る。


 リズとリシェルを待って、全員揃ったので日本に行く。

 ようやく人心地ついた。

 夜なのでウーバーを頼み飯を食べると、みんな笑顔になってくれたので良かった。

 流石にアーシェに何かあれば王城ごとぶっ壊す所だぞ!

 とりあえず何事もなかったようで良かった。


 今日はこのままこちらで過ごすのでテレビを見て過ごす。

 スマホで検索するとヤンキーが失踪したと新聞には載ったみたいだ。一応仲間がいたんだな。


 明日はロイヤルホテルに3時だから午前中にゲームでも買ってきてやるか。

 5人は今もテレビに夢中になっている。

 まぁ、可愛いことでいいことだな。


 風呂を沸かして入らせる。アーシェとイライザはシャワーで済ませたようだが他3人は風呂を気に入ったみたいだな。


 俺が風呂から上がり自分の部屋に行くとリズが待っていた。夜伽らしいが小柄なリズを抱くのは背徳感がすごいな。


 ことが終わるとリズは夢見心地でいろんなことを喋る。親のことや兄弟のこと、前の主人のことなど色々と話してくれた。



 次の日は午前中にゲームを買ってきたので説明しながらみんなで遊んだ。

 みんなすぐ覚えて楽しく遊んでくれるから時間潰しにはなるだろう。

「じゃあ行ってくる」

「はい!」

「「「「「いってらっしゃいませ」」」」」

「行ってきます」


 車を走らせて有料駐車場に停めると歩いてロイヤルホテルに行く。

「こっちだ!」

「おぉ、待たせたな」

「なんか変わったか?」

「さぁな?」

 こいつはスポーツ記者で結構有名だ。高校からのツレだな。

「さて、本当だろうな?」

「じゃなきゃここに来ないだろ?」

「まぁ。その通りだが、どんな薬だ?」

「欠損を治す」

「後払いだ…出所は?」

「秘密だ」

「まぁ、その方がお互いいいだろうな」

 と言って笑うと、

「んじゃ行くぞ」

「おう!」

 ロイヤルホテルの最上階に行くと一人の男がいた。

 野球界で名を馳せた人だが、今は腕を抉るように手術跡が残っている。

「よう!連れてきたぞ」

「あぁ、これが治れば俺は復帰出来る」

 相当鍛えているのだろうことはよくわかるが腕は細くなっている。

「で?薬は?」

「これだ」

 と瓶に入った薬を取り出す。

「わかった!飲むから貸せ!」

「いいのか?毒かも知れないんだぞ?」

「…お前はそんな奴を紹介したのか?」

「いや、高校からのツレだ。信用している」

「なら俺も信用する!」

 瓶の蓋を開けると飲み干す。

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