第14話 再生


「グッ!グアァァアァ」

「おい!大丈夫か!お前何飲ませたんだ!」

「みてみろよ?」

「ん?えっ?う、うそだろ?」

 抉れたところの組織が出来てきている。逆再生の映像のようだな。

「グアァァアァ…はぁ、はぁ、はぁ、」

「だ、大丈夫か?感覚はあるか?」

「あ、あぁ!神よ!俺は蘇ったぞ!」

 ガッツポーズを天に向ける男はその手が治ったことに感謝していた。


「やったな!信じて良かったぜ!」

「あぁ、良かったな」

「ありがとう!俺は神を信じるぞ」

「信じてなかったのかよ!」

 笑い合う3人で少し酒を飲む。

「これからどうするんだ?」

「リハビリだ!」

 と腕を曲げ伸ばして手を握る。

「また壊すなよ?」

「分かってる!二度目はない!」

「あはは、これもやるよ」

「なんだこれは?」

「回復薬だそうだ。痛めたら飲むといい」

「そうか!ありがとう!そうだ、金だったな」

 とボストンバッグに五つ持ってくる。

「5億ある。受け取ってくれ」

「あぁ、ありがとう」

「お前はもう持ってないのか?」

「あの薬か?持ってないぞ?」

「そうか、あんなすごい物まだあったらびっくりだ」

「偶然手に入れた物でな」

「ありがとう、俺は救われた」

「独占取材は俺だからな!」

「分かってるよ!奇跡の復活劇を期待しといてくれよ!」

「俺も応援してるよ」

「あぁ!」

 と力を込めた握手をすると別れて代行タクシーを呼んで家に帰る。


 こっちでは一回きりのことだが、あのポーションはもう一度手に入れておこう!


 家に入ると楽しそうに笑ってる声がする。


「ただいま」

 ドタドタと音がして、

「「「「「お帰りなさいませ」」」」」

 とようやく帰ってきたな。

 金も手に入ったし、あとはこっちでのんびりと暮らすか。


 と二週間がたったある日、

『ピンポーン』

 チャイムの音が鳴り、俺は何か頼んだものが届いたのかと思ったら、

「はいはい!」

「…貴方はなぜここにいるの?健明タケアキはどこよ!」

「だ。だれだよ?タケアキって!」

 と若い女が入ってくる。

「貴方と一緒にいなくなった男がいたでしょ?」

「は?あのヤンキーか?」

「私の彼氏よ!」

「知らん!俺はあいつとはなんの縁もない!」

「嘘よ!私みてたんだから!貴方を殴ろうとしたタケアキと貴方が一緒にいなくなるところを!」


 なんで目撃者が居るんだよ!

「はぁ、まぁ、ちょっと上がれ!」

「…お邪魔します」

 リビングに通してお茶を入れてだす。みんなは客間にいる。

「で?なんで見てたのに俺のことが…ここが分かったんだ?」

「サイトでその日からの行方不明の人を探し回ったわよ!ようやく家を見つけたら普通に暮らしてるんだもの!どうやって帰ってきたのよ!」

「はぁ、俺は自分の力で帰って来た。それだけだ」

「じゃあタケアキは?」

「さあ?魔王を倒せば帰って来れるらしいぞ?」

「ふっ!ざけないで!!」

「本当のことだがな!」

「か…返してよぉ、タケアキぃ」

 はぁ、今度は泣くのかよ。

「はぁ、まぁ、努力はしてみるよ、あんた名前は?」

「エリサ、近藤エリサ」

「わかったよ、だけどあんま期待するなよ?」

「うん…」

「じゃあとりあえず帰れ!」

「うん…」

 となんとか帰す。


 はぁ、家バレしてるのはヤバいな。なんでヤンキーをこっちに帰さないといけないんだか。


「みんな、あっちの世界に行くけど行くか?」

「「「「「はい!」」」」」

「ん?帰りたかったのか?」

「え?いや、タカ様が行くなら行くのが普通ですけど」

「そう言うことね」

「はい!」


 扉を開けると宿屋の2階の通路に出た。

 下に降りて行くと、女将がビックリしていた。

「アンタら死んだんじゃなかったのかい?急にいなくなったから馬車は売っちまったよ!」

「あぁ、まぁ、いいよ、それよりまた部屋を借りたいんだが」

「わかったよ、6人部屋と1人部屋ね」

「とりあえず一泊で」

 と金を払い、外に出て行く。

 商業ギルドに行くと、

「た、タカ様がいらっしゃってます!」

「た、タカ様!こ、こちらにどうぞ!」

「悪いな、来れなくて」

「いえいえ、それで?」

「あぁ、これとこれとあとこれ」

 業務用のシャンプーとコンディショナーも買っておいたのだ。

「良かった!王妃からまだかと催促がありまして」

「今回は業務用もあるから大丈夫だろ?」

「はい!ありがとうございます」

「あとはこれだな」

 リップを取り出す。

「これは?」

「こうして回すと出てくるんだが、アーシェ」

「はい!」

 リップをつけてやるとうる艶の唇に変わる。

「おぉ!これはすごいですね」

「ほい、アーシェにやる」

「やった!ありがとうございます」

「これが、ヨイショっと」

「うぉー!こんなに沢山!」

 段ボールに詰めて来たからな。

「後は姿見だな」

「おぉっ!これはなんとも!全身が見える鏡なんて王城にしかありませんよ!」

「これもこれだけある」

「はい!こんなに、ありがとうございます!」


「えーっと、これとこれが」

 頭の中でそろばんを弾くギルド長。

「全てで金貨300枚でどうですか?」

「いいよ、待たせたしな」

「ありがとうございます!」

 金貨を用意してる間に聞くことがある。


「今って勇者は何処まで行っているんだ?」

「勇者ですか?それが、動かなくなってしまったと聞いています」

「は?」

「なんでも言うことを聞かなくなったらしくて」

「…ガキかよ」

 

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