第3話 食事
「とりあえずみんなの名前を教えてくれるか?」
「は、はい!私はアーシャです。猫の獣人で18歳です」
とさっきからまとわりついている金と茶の二色の髪の毛で猫目の可愛らしいこの子から名前を教わると、
「私はイライザ。リザードの獣人で23歳」
リザードの獣人?トカゲってことかな?赤い髪をしている切長の目の美人さんだ。
「…リシェル、エルフで18歳」
御者をしているのだろう女の子は金髪で小柄な儚げな女の子だ。
「私はルメラと言います。121歳になるエルフです」
121?エルフはそんなに長生きするんだな?でも見た目は二十歳かそこらに見えるし銀色の髪が靡いてとても綺麗な女の子だ。
「私はリズ。ハーフドワーフで21歳です」
茶髪な元気っ子って感じのショートカットの女の子だ。
「俺はタダタカ、35歳だ」
「ダタカ?タダダ」
「タカでいいよ」
「は、はい」
タダタカは言いづらいからな。友達からはタカと呼ばれていた。
「それより俺が主人になっていいのか?前の主人の方がいいとか?」
「「「「「それはないです」」」」」
「うぉっ!…前の主人は嫌われてたのか?」
「ま、まぁ」
「私は嫌いだった」
「…うん」
「それはなんとも」
「…だね」
と5人とも嫌いだったようだ。
「はぁ、それよりその馬車に水はある?」
「は、はい!ちょっと待ってください!」
とアーシャが木のコップに水を入れてくるので、それをもらうと一気に飲み干す。
「っは!はぁ、はぁ、」
ようやく人心地ついたと思ったらみんなが飲みたそうにしている。
「飲みたかったら飲んでいいよ?遠慮するなよ」
「「「「「はい!」」」」」
とみんな荷車に乗っている積荷の樽から奪い合うように水を飲んでいる。
「コップはないのか?あるなら使えよ?」
「「「「「はい!」」」」」
コップにいれてみんな飲んでいる。相当我慢していたようだ。
「そんなに我慢してたのか」
「は、はい!前のご主人は飲ませてくれなくて」
「ング、っはー」
「お水が美味しい!」
「ご主人様!ありがとうございます!」
「ングングングング」
そりゃ嫌われるだろ?自分だけ飲んでたんだったら。
「積荷には他に何があるんだい?」
「こちらが積荷の詳細でございます」
とルメラが紙を渡してくる。
それを受け取るとパンや果物、あとは塩と砂糖なんかの調味料だな。貴金属もある。
『グゥー』
と誰かの腹の虫が鳴くのが聞こえる。
「パンを出してくれ、あと果物もだ」
「は、はい」
ルメラとリズが箱を持ってくるので開けてもらい、
「食べていいぞ?まぁ、俺も食べるけどな」
「「「「「え?」」」」」
「食べないのか?モグモグングっ!美味いな」
「た、食べても?」
「いいだろ?食べなさい」
「「「「「はい」」」」」
両手にパンと果物を持って一心不乱に食べている。
食事を終える。みんな満腹になるまで食べたみたいだな。
「あ、ありがとうございます!私達みたいな奴隷に!」
「…ありがとう、初めてお腹いっぱい食べた」
「美味かったな!」
「あの?いいんですか?」
「ん?別にあるのに無理して食べないってのはどうかと思うけど?俺も腹減ってたしね」
「「「「「はい!」」」」」
「あ、それより王都は近いのか?」
「はい!今からだと野営をしないといけませんが明日には着くと」
「そうか、じゃあ、野営できる場所まで行こうか?」
「「「「「はい」」」」」
荷車に4人乗って御者をしているリシェルの横に俺が乗る。
「リシェルは御者が上手いね」
「…そ、それほどでもない」
耳が真っ赤になって可愛いな。
「お!壁が見えるがあれが王都?」
「…そう、今から急いでも着くのは夜中になる」
「そうかぁ、そこに見えてるのになぁ」
「…はい」
とりあえず食料はあるから大丈夫だな。干し肉なんかも入ってるみたいだし。
俺はポーチから奴隷契約書を出して読むとやはり抜け道はないようだな。一回奴隷落ちすると抜け出ることが出来ないようだ。
奴隷契約書をポーチに入れて次は何が入ってるのかを確かめる。
干し肉やパンなども入っているのでこの中で時間の経過はないのだろう。服の替えや金貨なども入っている。
「…ご主人様、ここで野営が出来る」
「ん?うん!じゃあ、野営の準備をしようか!」
「…はい」
馬車が止まると後ろの四人が降りて来てテキパキと動きテントなんかを張って行く。
「俺は何を」
「あ、ご主人様は待っていてください」
「お、おぅ」
焚き火がつけられると椅子を出されて座れと言うことかな?
「よし、干し肉があったようだからパンと干し肉を持って来てくれ」
「は、はい!」
リズが箱を持ってくるので、
「じゃあ全員で食べよう」
「「「「「は、はい」」」」」
「うまぁ」
「干し肉なんていつぶりだ?」
「イライザ!口調!」
「はい!」
「うまぅま」
とみんな涙目で食べている。俺も食べるけど少ししょっぱいのでパンに挟んで食べる。
「あ、あの、真似してもいいですか?」
「おう!勝手にしていいよ?」
「ありがとうございます!」
手で半分に割って少し炙ってパンに挟んで食べる。
「美味しい!」
「美味いぃー!」
「あ、美味しい」
とみんなに好評だ。
「ご主人様、もう一個食べていいか?」
イライザが恐る恐る聞くので、
「食べていいよ?それよりご主人様ってのやめてくれないかな?」
「じゃあタカ様で」
「タカ様、私ももう一個いいですか?」
「はぁ、タカでいいんだけどな。まぁいいか、お腹いっぱい食べなよ」
「「「「「はい」」」」」
みんな箱から取り出してパンに挟んで食べている。
イライザは干し肉が好きみたいでそれだけでも食べてるな。
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