第3話 半分欠けた月
「泣いていいんだよ。」
その言葉を聞いた瞬間、それまで必死に保ってきたポーカーフェイスが、崩れたのが
自分でもわかった。
実は、話が出てから、ひなと大吾に相談しようと思ったことは何度もあった。
人を信じられなくなってしまっていた俺にとって、2人が唯一話をできる相手だったから。
だけど、漏れてしまう可能性があったから、どうしても俺ら以外には難しくて。
両親にも伝えないまま、報道が出てしまったのだ。
そこからはもう、止めることができなかった。
泣きながら、思いをひなにぶつけるだけだった。
脳裏には、みんなの笑顔が浮かんでいた。
紫耀。海人。ジン。岸さん。玄樹。
4年前の5月。真っ白な衣装を着て、ファンの前に立った時の、今より少し幼い、みんなの笑顔が。
まさか、5年も経たずに壊れてしまうとは、俺たち自身が全く予想していなかった。
「King&Princeを守りたかった。紫耀を、海人を、ジンを、岸さんを、守りたかった。
でも、守り切れんかった。俺の大切な物、全然。
頑張ったけど、ギリギリまで頑張ったけど、結局全部あかんかった。
ティアラのみんなも、付いてくれたスタッフも、メンバーも。全部壊してまった。
俺、何も知らんかった。何もできんかった。
何も気づけんかった。紫耀なんか、大阪の時から一緒に居ったんに。」
「廉…」
「俺、怖くて仕方ない。海人と俺、最年少の2人で、本当にやれるん?
でも、俺、海人だけは守りたい。何が何でも。
あいつには、笑ってて欲しいから。」
ひなに抱きしめられながら、泣きながら、思いをぶつけるだけだった。
ひなは、泣きながら、俺を抱きしめて、背をさすってくれていた。
小さな体で、必死に。
窓には、半分欠けた月が、悲し気に俺らを照らしていた。
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