2023年11月9日 17時52分

 どーも。怪談集めまSHOWの管理人ショウタです。

 

 皆さん。聞いて下さい。

 Mさん。S岳に住んでたことのある例のMさんですよ。

 あのMさんがやってくれました。

 もう1つの行方不明事件を教えてくれたんです。

 

 もうMさん大好き、超好き!

 ケアする度に「ありがとねぇ~」って手を合わせてくれるかわいさも含めて全部好き!


 ……ごめんなさい、ちょっと興奮してしまいました。


 Mさんが50年前まで、S岳のある集落で生活していたのは前回もお話ししたかと思います。そして亡くなった御主人が郷土史家だったのも。


 ご主人の一族というのは集落で代々、庄屋を務めているお家だったそうです。御主人が郷土史に関心を寄せていたのも、失われた自らの故郷の歴史を少しでも形にして残しておきたい。そういう気持ちがあったようです。


 今回、Mさんが教えてくれた話もそんなご主人が語ってくれたものだそうです。

 Mさんが教えてくれた話と、ご主人が書いた郷土史の本とを付き合わせて、分かったことを投下していきます。


 Mさんが教えてくれた話は元禄9年の10月初頭。今の暦だと11月くらい、かな?ちょうど今くらいの時期にあったことのようです。

 

 Mさん達の集落をW村、W村の隣村をE村としておきます。

 元禄9年当時、E村は流行病に襲われて全住民のほとんどが死んでしまったそうです。残ったのは10数名のみ。とてもではないが、今まで通りにE村を存続させていくことはできない。

 そう考えたE村はW村に使者を送って、E村の生き残りをなんとか受け入れてはくれないか、と打診したそうです。

 

 斜面にへばりつくようにして存続していたE村とは違い、峠に近くて、S岳を越えて行く人々の中継地点にもなっていたW村は比較的、余裕のある村だったようです。

 

 ご主人の御先祖、その時の当主はE村の申し出を快く受け入れたそうです。当主のお嫁さんがE村出身だったことも大きかったと思います。

 話はとんとん拍子に決まり、E村の人々の移住日は10月初頭と決定しました。

 

 村を出て行くに当たって、E村の人々はそれぞれに身を清めてから、揃いの白い頭巾を被り、なおかつ白い旗を掲げて村を出立したそうです。

 

 白い頭巾に白い旗というのは、疫病という穢れをW村に持ち込まないためのものではないか、とご主人の記述にはありました。

 疫病の猛威で死の穢れに塗れた村を捨て、穢れを捨てて、新天地に入る。そのための「白」だったようです。


 さてE村の生き残りが移住して来る予定の日。

 W村の人々はまだか、まだかと首を長くしてE村の人々を待っていたようです。

 E村とW村はそこそこ近かったらしく、朝一番に出発すれば夕方には着く。そんな感じだったそうです。


 待ち受けるW村の人々の気持ちを余所に、その日E村の人達は来ませんでした。

 1日経って、2日経って、3日経って。E村の人々が来ないままに10日が過ぎた頃、庄屋さんは若衆数人を選んで、E村の様子を見に行かせたそうです。


 来るとは言ったもののやはり先祖伝来の土地が恋しくて翻意にしたのか。はたまた何がしかの厄介事に巻き込まれているのか。出発はしているが運悪く山賊と行き合ってしまったか。


 若衆達はE村の人々の痕跡が残ってないか、道中確認しながら向かったそうです。途中で行き合った猟師は10月初頭、白い旗をなびかせて山道を行く一団を見た、と教えてくれたそうです。猟師の話が本当ならばE村の人々が村を出たのは間違いなさそうです。


 半日以上をかけてようやく辿り着いたE村はしん、と静まり返っていました。およそ人のいる気配がしない。家々を回って見ても人っ子ひとりいない。家畜も連れて出立したのか、牛なども1匹も残っていない。


 集落の様子を見るにE村の人々が村を出たのは間違いない。しかし彼等がW村に到着することはついぞなかったそうです。E村の人達は完全に消えてしまったのです。


 1人どころか10数人が一度に消える。

 S岳に踏み出したはずの彼等は一体、どこに行ってしまったのでしょうね。



 

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