2023年9月28日 0時06分

 怪談集めまSHOW管理人のショウタです。

 

 この間の宣言通り、S岳に関わる行方不明の話がないか色んな人に聞いておりました。

 やっと報告できるようなお話しが聞けたので投下します。


 この話は仕事関係で知り合ったMさんが教えてくれた話です。

 

 Mさんは80代の方なのですが、何とS岳の中腹にあった集落で実際に暮らしていたそうです。

 その集落は林業や炭焼きを主体とした集落でしたが、急速な過疎化で人が減り、約50年ほど前に集落は消滅。麓に移り住んだそうです。


 そんなMさんが教えてくれた話ってのが集落に伝わる「白い男」の話なんですよ。


 S岳周辺の地域、俺の住んでいる辺りもそうだけど、2月3日の夜は外出しない。家中の雨戸を閉め切って、外も見ない、っていう謎の習慣があるんですよ。

 Mさんの話はそれにまつわるもので、かれこれ300年くらいは昔の話と言っていました。


 その年も慣わし通りにお籠りをやっていたけど、集落のとある家の戸をトントンと誰かがたたく。

 大事なお籠りの最中。開けるわけにはいかんと家人は放っておいたが、あまりにしつこくたたいて来る。


 もしかしたらお籠りなんぞ知らん旅人が一夜の宿を求めてるのかも。

 そう考えた一家の主が戸口を開けると、そこに立っていたのはボロボロの着物を纏った男だった。

 

 元は白かったと思われる破れた頭巾からは伸び放題に伸びたざんばら髪がのぞいていて、顔は異様に青白い。その上、両目は深く落ち窪んで、ただぎらぎらと光っている。


 幽鬼のごとき姿に思わずたじろいだ主に男はとびかかり、喉笛を食いちぎった。突然のことに驚いて逃げ惑う他の家人にも男は襲いかかり、一家全員が男の餌食になったという。


 尋常ならざる悲鳴を聞いた集落の人々が駆け付けた時、家の中はまさしく血の海。

 無惨に食い荒らされた家人達がそこかしこで倒れている中で男はその家の生まれたばかりの赤子を一心不乱に食っていたらしい。


 踏み込んで来た集落の人々に追い立てられた男は、「儂は違う! 儂は違う!」と大声で訳の分からないことを言いながら山中に逃げ込んで行き、二度と現れなかった。


「だからのお籠りの日は開けたらあかん。こちらが善意で開けても悪いもんが入って来よる。そんな話じゃ」


 そう締め括って、Mさんはほほっと穏やかに笑っていたよ。



 そういえばこのMさん。亡くなった御主人が郷土史家だったらしく、S岳の集落の歴史にとっても詳しいんです。

 もっともMさんは認知症にかかっており、日によっては記憶が混乱するため辻褄が合わなかったりもします。

 ただ記憶がクリアな時に御主人が出版したS岳の郷土史の本を教えてくれたので、今度地元の図書館に行ってみようかなと思っとります。

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